当科では、日本における3大死因の一つである心臓疾患の診断および治療を主に行っております。当院が掲げる基本方針の柱の一つである救急医療の現場において、循環器疾患の占める割合は非常に多く、特に急性心筋梗塞、急性心不全、不整脈などの循環器救急疾患においては少しの対応の遅れが命に関わることも少なくありません。2015年5月の新病院移転を契機に循環器内科スタッフが大幅に増員となり、チーム一丸となって24時間体制で迅速かつ適切な医療を提供しております。またスタッフ全員が日進月歩の知識・技術を積極的に取り入れ、常に最新の医療を提供できる体制となっております。
また、循環器疾患では糖尿病や腎臓病、脳血管疾患など複数の疾患が併存することが多いですが、総合病院であることから他専門科とのコミュニケーションも密にとることができます。専門に偏らない全人的医療の提供、あるいは次代の優れた人材の育成にも非常に適した環境であり、研修医・コメディカルの教育・指導にも高い評価をいただいております。医療の高度化、専門分化が進む中で、質の高い医療従事者の養成や、質の高い医療提供の環境整備を図っていくことにより、結果として患者様に良質な医療が提供されるのだと考えます。
突然の胸痛の原因となる急性冠症候群、労作性狭心症に対する経皮的冠動脈インターベンションを積極的に行っています。治療の遅れが命に関わりうる急性冠症候群に関しては、救急隊や救急科医師などと連携しながら、少しでも迅速な治療ができるよう以下のように様々な工夫をしています。
紹介元の医療スタッフのご負担を少しでも減らせるよう、Mobile ERシステム(循環器内科医同乗の救急車でのお迎え)を運用しています。搬送中に急変のリスクのある患者さんについては医療スタッフの同乗を求められることがありますが、当院循環器内科スタッフが責任を持って搬送のお手伝いをいたします。
冠動脈CTはシーメンス社のDual Source CT(2×192スライス)を使用しており、高いレベルの時間分解能とスキャン速度を有します。ご希望に応じて紹介いただいた当日での検査も可能です。原因不明の胸痛に対しては、CTで冠動脈・大動脈・肺動脈・深部静脈を同時に撮影することで、心筋梗塞・大動脈解離・肺塞栓といった重大な疾患を早期に鑑別することも可能です(トリプルルールアウト)。
正常血管
左前下行枝の高度狭窄病変
トリプルルールアウトCT
冠動脈
大動脈
肺動脈
手首や脚の付け根などの血管からカテーテルをすすめて、冠動脈の狭くなった部分を治療する方法です。局所麻酔で行うため患者さんの体にかかる負担は少なく、スピーディーな治療が可能です。急性冠症候群では受診から血流再開まで90分以内に行うことが推奨されており、当院では90%以上の症例で達成しています。
多くの場合はステントと呼ばれる直径3mm程度の金属の筒を使用して、血管を内側から補強します。バルーンと呼ばれる風船で拡げるだけで十分血流がよくなれば、ステントは使わないこともあります。石灰化によって病変が非常に硬くなっている場合は、ロータブレーター、オービタルアテレクトミーシステム、衝撃波血管内砕石術など様々な方法を駆使し、硬い部分でもしっかり拡げて心臓に十分な血流が流れるよう最適な治療を心がけています。
閉塞性動脈硬化症、特に足に潰瘍、壊死が起こる重症下肢虚血の患者様は、多くの疾患を合併しており、診療科の垣根を越えたチーム医療(循環器内科、整形外科、皮膚科、麻酔科、糖尿病内科など)が必要となります。当院では、総合病院としての利点を最大限に生かして、診療にあたれるよう整備し、末梢血管外来を行っております。
カテーテルによる血管内治療を中心に創傷管理、リハビリテーション、栄養指導、全身の動脈硬化の治療を行い、予後改善に努めてまいります。
また、下肢静脈瘤診療も行っており、足のむくみや足の血管がぼこぼこしている、だるいなどの気になる症状がある患者様についても、下肢静脈瘤がないか、また他の原因となる疾患があるか、下肢静脈超音波を使用して、即日調べることができます。下肢の症状は整形外科の疾患であることも多いので、多数の専門外来を備える当院にて、結果に基づき、適切な治療・アドバイスを行えると考えております。
下肢静脈瘤について詳しくはこちら→下肢静脈瘤について
週4回(火曜日・水曜日・木曜日・金曜日)に外来診療を行っております。是非お気軽にご紹介・受診をしてください。
下肢閉塞性動脈硬化症治療前
下肢閉塞性動脈硬化症治療後
下肢静脈瘤
今後、高齢化社会が進んでいくにあたり、心不全発症率は確実に増加してくると言われております。急性心不全においては治療に一刻を争うことも稀ではなく、急性冠症候群と同様に迅速な対応が必要です。また慢性心不全においては、急性増悪をきたさないように自己管理することが非常に重要です。
息切れや浮腫みなどが気になる方は、早めに医療機関を受診してください。レントゲンで心臓の拡大を認めたり、血液検査でBNP値の上昇があった場合には心不全の可能性があります。
当院では2021年4月より「心不全センター」を開設しました。
「心不全センター」の詳細についてはこちら→心不全センターについて
①心臓ドック
動脈硬化危険因子の多い方など心不全のリスクが高い患者様には、ご希望に応じて心臓ドックをおすすめしております。詳細につきましては健康管理センターにお問い合わせください。
②心臓病教育入院
意欲の高い患者さんにおきましては3日間の心臓病教育入院をしていただき、徹底的に指導を行って一次予防に努めております。医師や看護師のみではなく、管理栄養士や薬剤師、理学療法士など多職種のスタッフにより食事療法や内服治療の必要性、適切な運動療法など、納得いくまで詳しく説明いたします。
※画像をクリックすると拡大表示されます(PDFが開きます)
③心臓リハビリテーション
2017年4月より心臓リハビリテーションセンターを開設し、心疾患を発症した方に対して多職種による心臓リハビリテーションを行っています。心不全等の心疾患は再発予防が非常に重要で、再発予防のために医師、理学療法士、看護師、薬剤師、管理栄養士、メディカルソーシャルワーカーによる多職種でサポートを行い、さらに現在7名の心臓リハビリテーション指導士が在籍しており、より専門的な介入も行っています。入院中の患者様だけではなく、通院可能な方は定期的な外来心臓リハビリテーションも行っており、再発予防を継続して行うようにしています。
前兆なく突然起こる動悸は不整脈の症状かもしれません。その他胸の圧迫感やめまい、意識が遠のく感じなども不整脈でよくある症状です。不整脈の中には放置すれば突然死に至る危険なものもあります。また、不整脈以外では貧血や甲状腺疾患、自律神経障害なども動悸の原因となります。
当院では毎週月曜日の午前中に「動悸・息切れ外来」を開設しております。軽い症状でも重大な疾患が隠れている可能性がありますので、症状がある方はお気軽に受診をおすすめください。また不整脈専門医による不整脈外来も開設しており、カテーテルアブレーション治療も行っています。
日頃はひとかたならぬご厚情を賜り誠にありがとうございます。心臓疾患は今後もさらに増えてくることが予想されており、治療を急ぐ疾患や急変も多く、速やかに対応できるよう引き続き以下のような取り組みを実施し全力でサポートいたします。
ご紹介いただいた患者様が心臓疾患でなくても、他専門科と協力して適切な医療を提供いたします。重症軽症に関わらず、お気軽にご相談をよろしくお願いいたします。
(単位:人)
心不全 | 237 |
慢性虚血性心疾患(狭心症・陳旧性心筋梗塞) | 132 |
急性冠症候群 | 65 |
不整脈 | 43 |
静脈血栓塞栓症 | 18 |
心外膜炎・心内膜炎・心筋炎 | 7 |
下肢閉塞性動脈硬化症 | 49 |
大動脈瘤・大動脈解離 | 13 |
(単位:件)
経胸壁心臓超音波検査 | 4,756 |
経食道心臓超音波検査 | 30 |
ホルター心電図検査 | 434 |
マスター負荷心電図 | 959 |
トレッドミル負荷心電図検査 | 153 |
心肺運動負荷試験(CPX) | 24 |
SAS検査 | 283 |
ABI検査 | 1,786 |
心筋シンチグラム | 117 |
冠動脈CT | 350 |
心臓MRI | 14 |
冠動脈造影検査(PCIを含まない) | 194 |
左心室造影検査 | 7 |
大動脈造影検査 | 3 |
右心カテーテル検査 | 50 |
心筋生検 | 5 |
冠血流予備量比測定(安静時指標含む) | 73 |
経皮的冠動脈インターベンション | 169(緊急78) |
末梢血管インターベンション | 52 |
ペースメーカー植え込み術 | 30(体外式ぺーシング30) |
心臓電気生理学的検査 | 2 |
カテーテルアブレーション | 35 |
IABP挿入 | 13 |
(ECMO)PCPS挿入 | 3 |
心臓リハビリテーション:入院 | 2,313(416人) |
心臓リハビリテーション:外来 | 392(18人) |
平成12年
鳥取大学医学部卒
循環器疾患
資格 |
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医学博士 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・中国支部評議員 日本循環器学会循環器専門医・中国支部評議員 日本心血管インターベンション治療学会専門医 JMECCインストラクター 岡山大学医学部医学科臨床教授 臨床研修指導医 |
記事・コラムなど |
心筋梗塞に我慢は禁物! 症状が落ち着いても病院へ |
平成17年
兵庫医科大学医学部卒
末梢血管疾患
循環器疾患
資格 |
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医学博士 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医 日本循環器学会循環器専門医 岡山大学医学部医学科臨床教授 日本心臓リハビリテーション学会心臓リハビリテーション指導士 日本クリニカルパス学会評議員パス指導者 日本脈管学会脈管専門医 日本フットケア学会フットケア指導士 下肢静脈瘤血管内治療実施管理委員会認定指導医 日本静脈学会弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター |
記事・コラムなど |
DOCTOR‘S ROOM 「下肢静脈瘤について」 |
平成23年
岡山大学医学部卒
末梢血管疾患
循環器疾患
資格 |
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医学博士 |
平成24年
高知大学医学部卒
循環器疾患
資格 |
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日本内科学会認定内科医・総合内科専門医 日本循環器学会循環器専門医 日本心臓リハビリテーション学会心臓リハビリテーション指導士 日本周術期経食道心エコー認定(JB-POT) 岡山大学医学部医学科臨床准教授 |
平成24年
山口大学医学部卒
循環器疾患
資格 |
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医学博士 日本内科学会認定内科医 |
平成25年
岡山大学医学部卒
資格 |
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医学博士 日本循環器学会循環器専門医 日本内科学会認定内科医 岡山大学医学部医学科臨床准教授 |
平成25年
岡山大学医学部卒
冠動脈疾患
循環器疾患
資格 |
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日本循環器学会循環器専門医 日本心血管インターベンション治療学会認定医 日本内科学会認定内科医 岡山大学医学部医学科臨床准教授 |
昭和44年
東京医科歯科大学医学部卒
循環器疾患
資格 |
日本内科学会認定内科医 日本循環器学会循環器専門医 米国内科学会専門医 米国心臓血管学会専門医 |
平成31年
岡山大学医学部卒
令和2年
川崎医科大学医学部卒