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肝疾患センター

肝疾患センターは、肝細胞がん診療、ウイルス性肝炎診療、アルコール性肝疾患、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎など幅広い領域の診療を行っています。当院の肝疾患センターは4人の肝臓専門医が常勤医として治療にあたっております(2025年5月現在)。

また、様々な治験や、臨床研究も行っております。我々のモットーは、「安全で確実な最新の医療」を提供することにより、安心して治療を受けていただく事です。
肝臓病は放置すれば長い年月をかけて、肝硬変や肝臓がんに進行することが多く、社会問題となっていますが、適切に治療を行えば多くの場合、進行を抑えることが可能です。

 

参考リンク

消化器内科

センターの特色

早期―中等度進行肝細胞がんに対しては、低侵襲で治療効果の高いラジオ波焼灼療法やマイクロ波凝固療法を中心とした治療を積極的に推進しています。

また、肝癌領域はここ数年で新たな治療薬が続々開発され、進行肝癌の予後は格段に改善しています。当病院では日本で使用可能な薬剤は全て導入されており、最善の医療が受けられる体制となっています。

初発肝細胞がんのラジオ波焼灼療法治療後5年生存率

Stage 1 77%
Stage 2 70%
Stage 3 53%
Stage 4 20%

主な診療内容(入院/2024年度)

肝癌 184症例
肝硬変症 66症例
自己免疫性肝炎・原発性胆汁性胆管炎 48件
アルコール関連疾患 30件
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患 17件
急性肝炎 8例

主な治療数(2024年度)

ラジオ波焼灼療法・マイクロ波凝固療法 83件
肝動脈塞栓療法 35件
肝生検 88例

症例豊富な「アブレーション」

アブレーションとは、ラジオ波焼灼療法やマイクロ波凝固療法などの、皮膚の上から細い針状の電極を刺してラジオ波やマイクロ波の熱でがん細胞を固めて治療する方法です。体を切らない治療法なので患者さんへの負担が軽く、市民病院では約3,600例の実績があります(2025年5月現在)。

我々はこの治療法を積極的に行い、治療の難易度の高い肝臓の最も深い位置にある尾状葉へのラジオ波焼灼療法も150例以上あります。肝疾患センターでは 「ラジオ波で治療できないところをなくそう!」という目標を掲げて、CTアシストアブレーション、造影超音波、フュージョンイメージなどの最新技術を導入し、肝臓がんの治療に日々取り組んでいます。

以前アブレーションは3cm以下3個以下の症例の推奨治療法とされていましたが、これを超える中等度進行肝癌でも有効であることが判明しています。さらに今まで根治が困難とされていた進行した症例でも薬物療法にアブレーションを追加することにより癌が消失する症例も少なからず認めるようになってきました。また、アブレーションは転移性大腸がんの治療法としての有効性も示され、導入症例も増加しています。

画像:腹部CTと超音波画像のフュージョンイメージ

腹部CTと超音波画像のフュージョンイメージ

進行した肝臓がんを治療する「肝動脈塞栓療法」

進行したがんに対しては、肝動脈の血管にカテーテルを通して抗がん剤を投与した後、がん細胞に栄養を送る血液の流れを止めてがん細胞を壊死させる肝動脈塞栓療法も行っています。

当院では、血管造影装置とCT装置が一体化した最新の撮影装置を導入しており、治療の根治度を上げると共に、今までなら見つからなかったより早期のがんも発見できるようになっています。

肝動脈塞栓療法

処置写真:肝動脈塞栓療法

肝動脈塞栓療法とラジオ波焼灼療法

肝動脈塞栓療法とラジオ波焼灼療法により完全に治療された例(矢印の白い部分が癌。周囲の黒い部分がラジオ波で焼灼された範囲)

驚くべき進化を遂げた「薬物療法」

近年、複合免疫療法や分子標的治療が著しく進化し、今まで考えられなかった進行肝細胞癌の長期生存例や消失例が認められるようになっています。現在我が国では8レジメンが使用可能(2025年5月現在)ですが、我々も多くの患者さんにこれらを導入し、良好な治療成績を得ることができています。また、これらの治療で縮小した肝癌を、更に根治度の高いアブレーションや、粒子線(紹介)などで治療し、がんが消失した症例(コンバージョン)も散見されるようになっています。

肝臓がんに進行するC型肝炎やB型肝炎の治療について

C型肝炎は経口の抗ウィルス薬により治療できる病気です。
副作用もほとんどなく、2~3ヵ月で治癒を目指すことが可能です。
B型肝炎も抗ウイルス薬が進歩し、薬のコントロールによって発がんや肝硬変を抑えられるようになってきました。

しかしその一方で「アルコール性肝障害」や肥満・糖尿病が原因となる「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」は増加傾向にあります。
いずれも発見時には既にがんに進行しているケースも多く、自覚症状がないため注意が必要です。

「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」とは

「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」は、以前「非アルコール性脂肪性肝疾患」と呼ばれていたものとほぼ同義であり(2024年から病名が変わりました)、飲酒習慣のない人の肝臓に中性脂肪が蓄積され脂肪肝が進むことで起こる肝臓病です。気づかないうちに肝硬変、肝臓がんへと進んでいく非常に危険な病気です。健診でメタボと診断された方だけでなく、痩せていても肝機能の数値が悪かったり血小板の数値が低かったりした方で、詳しい検査が必要とされる場合はお気軽にお問い合わせください。見落としが多い病気のため、半年に1回は画像診断を受けることをお勧めします。

治療する病気

急性肝炎、ウイルス性肝炎、肝硬変、肝臓がん(転移性肝がんを含む)、
自己免疫性肝炎、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(旧名:非アルコール性脂肪性肝疾患)、
アルコール性肝障害、原発性胆汁性胆管炎(旧名:原発性胆汁性肝硬変)、肝移植適応疾患、
胆嚢・胆管炎、胆石症、総胆管結石、胆嚢・胆管癌、
急性・慢性膵炎、膵臓癌、
食道静脈瘤、門脈高血圧性胃腸症など

慢性肝炎 肝硬変 肝癌 の図

肝臓がん

肝臓がんは慢性肝炎から長い年月を経て生ずる病気です。我々は岡山県でも数少ない日本超音波医学会認定施設として、また日本肝癌研究会の施設会員として、慢性肝炎や肝硬変の患者さんを超音波やCTで定期的に経過観察し、早期発見・早期治療に努めています。また、前述の如く複合免疫療法などをはじめとした様々な新たな治療法の開発が進んでおり、10年以上お元気でご通院いただいている肝臓がんの方も多数おられます。

当院は岡山大学や近畿大学、国立がんセンター東病院等と常時連携し、新たな抗がん剤使用法の治験を含め、治療の選択肢を拡げています。また様々な研究活動にも取り組んでおり、2024年2月には第3回日本アブレーション研究会を、2025年1月には第31回日本肝がん分子標的治療研究会を主催するなど、肝癌診療の均てん化にも積極的に貢献しています。

C型肝炎

C型肝炎は、飲み薬でウイルスを排除できる時代となりました。今までのインターフェロン治療と異なり、副作用も少なく安全に治療が可能であるため、高齢者を含め、既に多くの方が治療を受けられています。既に肝硬変となっていても、数ヶ月の治療で、ほとんどの方のウイルスが消失し、肝機能の改善につながることがわかっています。

また、この治療は公費助成の対象疾患であり、経済的負担も少なく、当院では積極的治療を行っています。C型肝炎でまだ治療を受けていない方、また治療を受けたけれど治らなかった方も対象となりますので、ぜひご相談ください。

B型肝炎

B型肝炎はC型肝炎と異なり、完全にウイルスを排除する事は困難ですが、飲み薬でウイルスを減らすことが可能です。この治療でウイルスを減らす事により、肝臓がんになる確率を著明に減らすことができるのです。以前は「B型肝炎があっても肝機能が正常なら大丈夫」、あるいは「抗原が陰性化すると治療は必要ない」という事が言われていましたが、現在ではこのような方でも、血液中に少ないながらもウイルスが存在し肝癌が起こりやすいことがわかっており、超音波検査を始めとした定期的な検査が必要です。

特にご家族や血縁者のなかにB型肝炎にかかっている方がおられる場合には、B型肝炎ウイルスを持っている可能性がありますので、一度ウイルス検査をする事をお勧めします。

非B非C肝炎・肝硬変

B型でもなくC型でもない肝炎や肝硬変が、肝細胞癌の原因として増加してきています。約半数がお酒に関係した肝臓病ですが、残りは肥満や糖尿病が原因で、肝硬変や肝臓癌になると考えられています。あまり知られていませんが、糖尿病患者の死因の1位は肝硬変・肝臓癌等の肝臓病なのです。

アルコール摂取が1合未満で、脂肪肝と診断されている方の10人に1人が、肝硬変や肝臓癌の危険因子である、代謝機能障害関連脂肪肝炎に罹患していると考えられています。糖尿病や脂肪肝と言われた方、特に血液検査で肝機能異常がある場合には、必ず肝臓専門医の定期的診察を受けることが大切です。

自己免疫性肝炎・原発性胆汁性胆管炎

自己免疫性肝炎及び原発性胆汁性胆管炎(旧名:原発性胆汁性肝硬変)は、放置すると肝硬変に進展しますが、適切に治療を選択する事により、進行を防ぐことができる疾患です。当院でも数多くの方が定期的に受診されています。
肝蔵は「沈黙の臓器」と呼ばれ、症状が出た時は既に進行していることが多いのが特徴です。正確な診断と治療がポイントですので、注意が必要です。

肝硬変・難治性腹水

肝炎ウイルスやアルコール、肥満など、様々な原因で肝硬変が生ずることが知られています。肝硬変の方に分岐鎖アミノ酸製剤を服薬していただくことにより、予後が延長することが分かっています。治療を続けることが重要ですので、通院が困難な方には、お近くのかかりつけ医で治療を行っていただき、検査が必要な場合のみ来院していただく「病診連携」というシステムを用いることもできます。

肝硬変が進行すれば、黄疸、かゆみ、脳症、むくみや腹水が発生しますが、治療により症状を和らげることができます。むくみや腹水に対しては、塩分制限と利尿剤の使用が基本となります。難治性腹水に対しては、トルバプタンという新薬が開発され、有効であることが分かっています。
また、おなかの「はり」が強く苦しい場合には、当院では腹水ろ過濃縮再静注法(CART)という、体の中のたんぱく質を保ったまま、腹水を直接抜く治療も行っています。

胆・膵疾患

当院は、救急部が充実しており、突然の腹痛で受診され、胆石や総胆管結石、膵炎と診断される方が多く、消化管治療部門と共に数多くの患者診療に当たっています。胆・膵領域の悪性疾患についても早期発見に努め、外科的切除が不可能な場合でも、減黄術とともに積極的に化学療法等の治療に取り組んでいます。

当院では、基本理念である「心・技・体」に基づいた、質の高い安全な医療の提供をするとともに、周辺の医療機関との連携を大切とし、岡山市の医療水準の向上に努めています。今後ともご支援を賜りますようお願い申し上げます。