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脈の乱れについて

スペシャリストに聞いてみよう!(診療のチカラ)(更新日:2018/1/22)

当院で教育・学術顧問に着任されている大江先生に、ご専門の不整脈のことについてお伺いしてみました。

教育・学術顧問:大江 透の微笑んでいる写真

教育・学術顧問 大江 透

コメント

当院では、毎週木曜日午前に「不整脈外来」、毎週月曜日午前に「動悸息切れ外来」を設けていますので、気になる症状や検査結果がおありの方はお気軽にご相談ください。

「脈の乱れ」とは、どういう病気なのでしょうか?

「脈の乱れ」という表現は、中国の漢、西洋のローマ時代から用いられていましたが、現代では一般的には「不整脈」を意味しています。脈の乱れにも色々なタイプがあり、①脈が飛ぶ、②脈が遅い、③脈が早い、の3つに大別されます。

「脈が飛ぶ不整脈」とは、どんな病気ですか?

通常、脈が飛ぶ不整脈とは「期外収縮」を意味することが多いです。正常の場合は、洞房結節(どうぼうけっせつ)という部位で電気信号を発生させて心臓を動かしていますが、期外収縮は、別の部位から電気信号が発生して心臓を余分に動かします(余分に収縮するという意味で期外収縮と名付けられました)。
自覚症状としては、心臓が止まる感じ、胸苦しいと訴える人が多いですが、全く無症状な人もいます。ただ、脈を取ると途切れて飛んでいることに気づきます。確定診断には心電図が必要となります。

期外収縮に対しては、どのような治療がされるのですか?

期外収縮が危険かどうかは、期外収縮が起こしている原因と起こっている部位によります。期外収縮を起こす元の病気としては、心筋梗塞、高血圧、心筋症などがありますが、そうした疾患がない若い人でも起こる場合があります。この場合は、突然死の危険度は低いので、無治療で経過を見ることが多いです。一方、原因となる疾患を有する場合で心室から起こっている場合は、元の病気の治療に加えて抗不整脈薬を投与します。無効な場合は、発生部位を高周波で焼灼するカテーテル焼灼術を行うことがあります。

「脈が遅い不整脈」とは、どんな病気ですか?

脈拍が60以下になる不整脈を「徐脈性不整脈」と言いますが、健康な人でも夜間60/分以下になることがあり、特にスポーツマンは夜間50/分に低下します。脈が遅くなる原因が、生理的なものなのか病的なものなのかの違いとしては、健康な人は運動時や労作時には速くなりますが、病的な徐脈(脈が遅い不整脈)は歩いても脈が早くなれないのでしんどくなります。

病的な徐脈に対しては、どのような治療をするのですか?

病的な徐脈は加齢によることが多いのですが、原因がある場合は元の病気の治療で治りますので、まず原因を調べることが必要です。原因不明あるいは加齢による場合で、失神や全身倦怠感などの症状がある場合はペースメーカーの植え込みが必要となります。

「脈が早い不整脈」は、どんな病気ですか?

1分間に100以上に脈が打つ不整脈を「頻脈性不整脈」と言います。正常な人でも、走ったり、興奮したり、熱が出た場合は脈が100を超えますが、病的な頻脈(脈が早い不整脈)とは、体が必要としていないのに勝手に早く打つ頻脈のことです。 病的な頻脈は、起こっている部位と頻脈レート(心拍数)で10種類以上に分類されますが、心室から発生している頻脈性不整脈は突然死の原因となります。

 心室から起こっている頻脈性不整脈は、突然死の可能性があると言われましたが?

心室が300/分以上に早くなる頻脈性不整脈は「心室細動」と呼ばれます。心室が300/分以上の頻脈を起こすと血液を全身に送ることができず数秒で失神し、早急に正常のリズムに戻らなければ死に至ります。最近は、AEDという器械が学校・公共の場に置かれて、多くの人がこの重篤な頻脈を起こしても助かるようになりました。

どのような人が心室細動を起こしやすいですか?

心室細動を起こしやすい人は、重篤な心臓病を持っている人、心電図に特殊な異常波形を有する人、また家族に若くて突然死した家族歴を持っている人です。そのような人は病院で検査してもらい、心室細動を起こす可能性が高いと診断された人は、頻脈を起こさないようにする薬物治療や植え込み型除細動器の植え込みが必要となります。

心房から起こる頻脈は心配がないのですか?

心房は直接血液を全身に送りませんので、心房から起こる頻脈性不整脈が突然死を起こす可能性は低いです。しかし、心房が400/分以上に興奮する心房細動は、心房に血栓ができやすく、またその血栓が脳に飛び脳梗塞を起こすことがあります。

心房細動の患者さんで脳梗塞を起こしやすいのはどのような患者ですか?

心房細動になって脳梗塞を起こしやすい人は、弁膜症などの心臓に解剖学異常を持っている人の他に、1)高齢者、2)高血圧の人、3)脳梗塞の既往がある人、4)心不全の人、5)糖尿病の人、6)血管病(動脈硬化)がある人です。最近、心房細動をカテーテル焼灼術で治す治療法も普及してきましたが、高齢者の5%程度の人が心房細動を有している現状では、無症状の人の場合は、心房細動自体は積極的に治療せずに脳梗塞の予防目的で抗凝固剤を投与する治療法が一般的です。

 

ポイント

脈が乱れる場合、動悸や倦怠感がある場合、心臓疾患をお持ちの場合、あるいは検査で異常が発見された場合は、原因や症状にあわせた治療で突然死に至る可能性を減らすことができます。