循環器内科 部長 河合 勇介先生に、心筋梗塞について教えていただきました。
心筋梗塞とはどのような病気ですか?
心筋梗塞は心臓に栄養を運ぶ血管が最終的に完全に詰まって心臓の筋肉の損傷が刻々と進行している状況で、直ちに治療が必要です。
約20~30%の方は病院に行く前に命を落とすとも言われています。一刻も早く詰まった血管をもう一度血液が流れる状態に戻す必要があります。
どのような治療になりますか?
カテーテルという直径2mm程度の細く柔らかい管を、局所麻酔をした手首、ひじ、足の付け根などにある血管から入れて、折りたたんだ状態の風船やステントという筒で心臓の血管のつまった部分を拡げます。それで血流が再開すれば、とりあえず一安心です。
とにかく一刻も早いカテーテルでの治療が必要ということですね。
病院に運ばれた後で命を落とすのは約5%程度です。適切な治療をされれば95%の方は助かりますが、命を落とす5%の方の多くは家で長い時間我慢をされていて、病院を受診した時点で手遅れになってしまっていることがあり、治療をしても命を救うのが難しいケースもあります。
我慢をしすぎるのは危険ということですね。では症状の特徴について教えてください。
心筋梗塞の症状として多いのは胸から肩や顎などに拡がる広範囲の痛みです。しばしば冷や汗を伴うような激しい痛みになります。しばらくすると症状がなくなることがあり、それで安心してしまって病院を受診されないこともよくあります。
早めに病院に行った方がよいのはどのような方ですか?
症状に波があることも心筋梗塞の前兆としてよくあることなので、一度でもそのような痛みがあった場合は受診をおすすめします。だんだん頻度が増えてきたり、持続時間が長くなってくるのは非常に危険な兆候です。
心筋梗塞にならないためには、日頃どのようなことに気を付ける必要がありますか?
一般的には糖尿病や高血圧、高脂血症の方、長期の喫煙習慣がある方は心筋梗塞のリスクがあります。健診をきちんと受けて、そのようなリスクのある方は適切な食習慣と適度の運動、必要に応じて適切な薬での治療を継続するというのが心筋梗塞の予防に最も有効です。
適度の運動というと、だいたいどの程度の運動ですか?
年齢や心臓の機能や運動能力などにもよりますが、少し疲れる程度の軽い有酸素運動を30分以上、週に2-3回以上するのをお勧めします。
生活習慣の管理や運動が大切なのですね。
食生活や運動などの生活習慣の乱れと動脈硬化は大きく関わっています。動脈硬化の過程では質の悪いコレステロールや炎症細胞などが血管の壁の中に溜まっていき、進行すると血液の流れる通路が狭くなったりつまったりします。それが心臓を栄養する血管に起これば狭心症や心筋梗塞の原因になります。
血管は全身の臓器を走行していますので、脳梗塞など全身の臓器障害の原因にもなります。健康寿命を延ばすためには、若いうちから生活習慣を意識することがとても重要です。
最後に、循環器内科はどのような患者さんが受診されていますか?
循環器というのは全身への血液の循環を司る臓器の総称です。その中心となる心臓病の方や、心臓と全身の臓器をつなぐ動脈や静脈などの血管病・動脈硬化の方が多く来院されます。
また、心臓病や動脈硬化の原因となる高血圧、糖尿病、高脂血症など生活習慣病の方も予防治療のため通院されています。
お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 循環器内科 医師 河合 勇介(かわい ゆうすけ)
※役職は掲載時のものです。変更になっている場合がありますがご了承ください。