血液の病気には、急性白血病をはじめ、悪性リンパ腫、血液を作ることができなくなる再生不良性貧血など多くの種類があります。赤血球や白血球などの血液をつくる造血幹細胞が異常を起こす骨髄異形成症候群といった病気も、社会の高齢化を背景に増えています。
これらの患者数は、乳がん(20人に1人が発症)よりも患者数が多いにも関わらず、地域に血液疾患の専門家は少なく、遠方から当院まで治療に来られる患者さんも多いのが現状です。
東は姫路市から西は三原市までと岡山市の医療圈はかなり広く、岡大病院だけでは入院を必要とする患者さんすべてを受け入れることができません。そこで、同レベルの治療を提供するために、岡大病院と市民病院で医療連携を進めてきました。
現在は、それぞれの得意分野を活かして、岡大病院では移植医療を、市民病院では骨髄異形成症候群や急性白血病、リンパ腫などの患者さんを担当するという役割分担ができています。
急性白血病や悪性リンパ腫には、強い抗がん剤を用います。従来の抗がん剤は、正常な細胞まで壊してしまうため副作用が強く出ていましたが、最近では分子標的薬といって悪性腫瘍の固有のタンパク質だけを攻撃する治療薬ができています。
市民病院では、副作用がより少なくなった分子標的薬と従来の抗がん剤を組み合わせることで、それぞれのメリットを引き出す治療を行いながら、副作用や感染症などを予防する支持療法も併用しています。「副作用の管理がうまい」病院として日本一になったこともあります。
遺伝子解析の技術が進み、新しい治療薬が次々と生まれているのが血液疾患の分野です。例えば、慢性骨髄性白血病は、9番と22番の染色体が組み換わることで起こるのですが、その染色体が作り出す異常なタンパク分子が原因だと分かり、生成をストップさせる分子標的薬が開発されました。
医療の進歩によって副作用が少なく、驚くほど高い治療効果をあげることができるようになった今、市民病院も現代にふさわしい病院として、新しい治療法を率先して導入していきたいと考えています。