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喘息・慢性咳嗽外来

喘息・慢性咳嗽外来を開設しました。

当院呼吸器内科では、地域医療に貢献すべく、「喘息・慢性咳嗽外来」を開設致しました。
 患者さんが医療機関を受診する症状として、「咳:せき(咳嗽:がいそう)」は非常に多く、しかも最近は「長引く咳」を訴える患者さんが増えていることが指摘されています。
「咳」の原因は多岐にわたり、呼吸器疾患のほとんど全てが原因として当てはまるといっても過言ではありません。「咳」というのはそもそも、異物や気道にたまった「たん」を出すための生体防御反応です。「たん」を伴わない咳は、気道そのものに炎症などがあるために病的に起こってくる「咳」になりますので、「咳」の反射を和らげるなど、「咳」をターゲットとした治療になります。一方、「たん」を伴う咳であれば、「咳」を無理に止める治療は望ましくありません。「たん」自体の分泌を減らすとか、「たん」が出やすくなるような治療を心がけます。
<ポイント>「たん」が出る咳には咳止めを安易に使ってはいけません。

持続期間による咳の分類(図1)

分類図:持続期間による咳の分類

一般的に、3週以内の咳を急性咳嗽、3~8週の咳を遷延性咳嗽、8週以上持続する咳を慢性咳嗽と定義しています。3週以内に軽快する急性咳嗽の多くは上気道炎(いわゆるかぜ)や感染後咳嗽ですが、持続期間が長くなるほど、これらの頻度は低くなります。8週以上では感染後咳嗽の頻度は数%以下となり、後に紹介する、咳ぜんそく、副鼻腔気管支症候群、胃食道逆流症、アトピー咳嗽など多彩な疾患が原因となります。中でも咳ぜんそくは本邦で最多の原因疾患であり、慢性咳嗽の40%以上を占めるといわれています。

遷延性・慢性咳嗽(3週間以上続く咳)の鑑別

 「咳」の原因を呼吸器疾患に限った場合、まずは胸部レントゲン写真で肺炎、肺癌、肺結核、間質性肺炎などの重篤になり得る疾患を鑑別します。胸部レントゲン写真で異常がなかった場合、次にチェックをしなければならないのが、「喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒュー)の有無」です。患者さんへの問診と念入りな聴診で、喘鳴の有無をチェックします。喘鳴が聴取できた場合、頻度が高いのが(咳優位型)ぜんそくであり、吸入ステロイドを中心とした治療を開始します。

咳ぜんそく

イラスト:喘息

咳ぜんそくは、ぜんそくにとても近い病気ですが、喘鳴や呼吸困難を起こすことがないこと、気道過敏性亢進、気管支拡張薬が有効なことより定義されています。咳は、就寝時、深夜~早朝や、かぜをひいた時、冷気、運動、受動喫煙への暴露などで惹起され易く、しばしば一定の季節に悪化します。
「たん」は伴わないことが多く、伴っても、さらっとした性状で、量も少量です。成人では女性に多い傾向があります。他に原因がなければ気管支拡張薬を試験的に使用し、「咳」が改善すれば「咳ぜんそく」と診断してよいことになっています。
診断確定後はぜんそくと同様に、吸入ステロイド薬を中心とする長期療法を行います。成人咳ぜんそくの30%で経過中に喘鳴が出現し、典型的ぜんそくに移行しますが、吸入ステロイド治療によりその頻度は低下します。

アトピー咳嗽

 アトピー咳嗽とは、「アトピー素因に関与する咳感受性亢進を伴う好酸球性気管気管支炎」と定義されています。
アトピー咳嗽は、喉のイガイガ感を伴う持続性のたんを伴わない咳が唯一の症状です。喘鳴、呼吸困難発作がない、エアコン、タバコの煙、会話、運動、精神的緊張などにより「咳」が誘発されやすいなどが特徴です。
咳ぜんそくとの違いは、咳ぜんそくに有効な気管支拡張剤がアトピー咳嗽には効かないという点とぜんそくには移行しないという点です。
治療には抗アレルギー薬の一種である抗ヒスタミン薬が60%の患者さんに有効と言われています。これで治らない40%の患者さんには吸入ステロイドや、経口ステロイドが必要な場合があります。治療の効果については、大部分の患者さんでは2週間で「咳」が軽快するといわれています。先ほど、述べましたようにアトピー咳漱は咳ぜんそくと違って気管支ぜんそくに移行することは「まれ」と言われていますので、一旦「咳」が軽快したら継続的な治療は不要です。

副鼻腔気管支症候群

 副鼻腔気管支症候群は「たん」を伴う咳の原因としては最も頻度が高く、慢性副鼻腔炎(≒蓄膿症)に慢性の下気道感染症(慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎など)が認められるものを言います。
症状の特徴は、黄色~緑色で粘り気のある「たん」が出る、鼻水や鼻づまりがある、鼻水がのどの方に落ちて、「たん」が絡んだような感じがする、せき払いをしたくなる、蓄膿症にかかったことがあるなどです。
何らかの上下気道の防御機構の欠損・低下が原因とされており、治療ではマクロライド系抗菌薬及び去たん薬の併用が有効です。

その他

 胃食道逆流症(胸やけ、ゲップが主な症状ですが「咳」の原因になる事もある)、降圧剤の一種である ACE阻害薬 による咳はある程度目安がつき、診断的治療としてそれぞれ、胃食道逆流症への制酸剤投与、ACE阻害薬の中止を行います。
また、かぜなどの感染症による発熱、のどの痛みなど感染症の症状は治まったのに、咳がしつこく続く場合は感染後咳嗽と考えられ、多くは自然に消退します。

新しい呼吸機能検査

 喘息・慢性咳嗽外来では、新たに2種類の呼吸機能検査装置、呼吸抵抗測定装置(モストグラフ)と一酸化窒素ガス分析装置(NIOX MINO)を導入しましたので、ご紹介します。

① 呼吸抵抗測定装置(モストグラフ)

 呼吸抵抗とは、呼吸のしにくさの指標です。肺につながる空気の通り道である気道が狭くなったり、肺の動きが悪くなったりすると、呼吸抵抗が上昇して呼吸がしにくくなります。呼吸抵抗の検査は様々な原因による日常的な呼吸の状態の変化を捉えます。
 モストグラフとはこの呼吸抵抗を評価し、それをきれいなカラーのグラフで表示してくれる検査機器です。
気管支ぜんそくやCOPD(肺気腫、慢性気管支炎)はこの末梢気道に病気があり、その機能の評価が重要といわれています。しかし、今までの通常の呼吸機能検査では評価が難しい部分でありました。モストグラフでは一般的な呼吸機能検査とは異なり、検査を受ける方に努力を強いることなく、安静呼吸をしてもらうだけで短時間にこの末梢気道の評価ができます。
 モストグラフは気管支ぜんそくやCOPDの診断はもとより、治療効果の評価にも役に立つ検査です。

モストグラフ

装置写真:モストグラフ

典型的なモストグラフのパターン

典型的なモストグラフのパターン(健常人(著者)、喘息、COPD)

②一酸化窒素ガス分析装置   (NIOX MINO)

マウスピースをくわえて、深呼吸するだけで呼気中に含まれる一酸化窒素(NO)の濃度を測定できる簡単な装置です。NIOX MINO による呼気一酸化窒素(NO)の測定方法

気管支ぜんそくの患者さんはぜんそく発作が起こると「咳」が出たり、呼吸のたびにゼイゼイと音がしたり、息苦しくなったりします。患者さんの気管支粘膜には、好酸球などの細胞が集まり、アレルギー反応を起こしているためです。こうした気管支粘膜の炎症の結果、一酸化窒素(NO)を作る酵素が増え、ぜんそく患者さんの吐く息(呼気)のNO濃度は健常者に比べて高くなりますので、気管支ぜんそくや咳ぜんそくの患者さんの診断が容易に行えることが期待されます。

呼気NO濃度

まとめ

 当科では、呼吸器症状でお困りの患者さんから、詳しくお話を聞いて、丁寧な診察をさせて頂くことはもちろんですが、最先端の検査機器を駆使することによって、呼吸器症状に悩む患者さんのお力になれればと考えておりますので、遠慮なく、相談頂ければと思います。