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第267回リウマチ教室:腎機能に関する主な検査

解説:岡山市立市民病院 臨床検査技術科 村山・森(更新日:2022/1/20)

 

はじめに

 関節リウマチにおいて、臨床検査は診断・治療効果判定・副作用有無の確認のため重要な役割を担っています。検査から得られる情報は様々ですが、今回は腎機能に関する検査について臨床検査技師からご紹介します。

 

 

腎機能7つの検査項目 

腎臓とは

 腎臓は腰よりやや上の背中側に位置しており、 左右に一つずつあります。ソラマメのような形をしていて、大きさは握り拳くらいです。 腎臓の重要な働きのひとつは、血液中の不要なものを尿として体の外に排出することです。まず血液をろ過して原尿をつくり、そこから体にとって必要な成分を再吸収して最終的に尿をつくっています。 健康な人では1日におよそ150リットルもの原尿をつくり、99%を再吸収し尿として1.5リットル程度を排出しています。腎臓の機能が低下すると、赤血球や蛋白が尿に出たり、クレアチニンという物質が尿に排出されず血液中で高くなったりします。 
 

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 腎臓には老廃物を体外に排出する他に、各種ホルモンを産生する役割があります。たとえば、腎臓で作られるエリスロポエチンは赤血球の産生に関与します。慢性腎臓病が進行すると、エリスロポエチンの産生が不十分となり貧血になります。また、骨の形成に重要なカルシウムとリンの吸収に関与するビタミンDは腎臓で活性化されます。慢性腎臓病が進行すると、ビタミンDを活性化することができず、骨がもろくなったりします。
 腎障害の原因は様々ですが、関節リウマチに合併するアミロイドーシス(アミロイドという蛋白が臓器に付着して障害を起こす病気の総称)、薬剤の影響、高血圧や糖尿病などの生活習慣病などがあります。腎機能は低下すると回復しない場合が多いため、早期に治療を開始したり薬を変更したりして機能を保つことが大切です。 腎機能低下の初期は自覚症状がほとんど現れない為、日々の生活で気が付くことができません。定期的に病院で血液検査や尿検査を受けて、早期に腎臓の変化を発見することが大切です。

 

血液検査の主な項目

BUN(尿素窒素)

血液中に存在する尿素中の窒素量を測定しています。尿素は食物中や体組織の蛋白質の老廃物で、クレアチニンと同様に腎臓から尿中に排泄されます。 腎機能が悪くなると尿中に排泄される量が減り、血液中で高値を示します。ただし、BUNは消化管出血、脱水、高蛋白食など腎臓以外の要因でも増加するため注意が必要です。

CRTN(クレアチニン)

筋肉に必要なエネルギーの老廃物で、腎臓から尿中に排泄されます。腎機能が悪くなると尿中に排泄される量が減り、血液中で高値を示します。

e-GFR(推定糸球体ろ過量)

GFR(糸球体濾過量)は、腎臓の糸球体という場所で1分間に何mLの血液をろ過しているかを示します。日常診療では血液中のクレアチニン濃度と年齢、性別からGFRを推算しており、これがe- GFR(推定糸球体濾過量)です。健康ならおよそ100(mL/分/1.73㎡)なので、若く健康な状態と比べた%と考えることができます。60未満だと慢性腎臓病と診断されます。クレアチニンは体の筋肉で作られるため、同じ腎機能でも筋肉の多い人は高く、少ない人は低くなることに注意が必要です。
 

尿検査の主な項目

蛋白

蛋白は体に必要な成分なので、基本的に尿に排出されることはありません。これが尿中で検出された場合は、尿をろ過している糸球体に問題があり、腎臓病(腎炎、ネフローゼ症候群等)が疑われます。 リウマチの状態が長く続いていると腎臓の機能が悪くなり、尿に蛋白が排出されることがあります。健康な人でも激しい運動や気温の変化、精神的ストレ スや生理前に一時的に出ることがあります。

糖は血液からろ過されたあと再吸収されて血液に戻ります。しかし、血糖値が160mg/dL以上になると尿細管で再吸収できる上限を超えるため尿中に排出されます。このため、尿糖が陽性になった場合には血糖値が高かったり、腎臓での再吸収力が低下していることが考えられます。

潜血

尿の通り道のどこかに出血があると尿潜血が出現します。目で見て尿に血が混じっていることが分かれば重要な病気のサインです。検査では目に見えないわずかな出血でも見つけることができます。続けて検出される場合は病気の可能性があるので注意が必要です。
 

白血球

白血球は血液中で細菌やウイルスなどから体を守る働きをしており、通常は尿にみられません。膀胱炎、尿道炎などの尿路感染症や腎炎などで検出されます。

 

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おわりに

 今回は腎臓にスポットをあてて解説しました。腎機能は、加齢、生活習慣病をはじめとする病気により低下します。脱水症状も腎機能低下の原因になるので、寒い時期ですがこまめな水分摂取を心がけましょう。昨今はマスクをすることが多く、気付かないうちに脱水となっていることもあるので注意が必要です。腎障害は初期に自覚症状が乏しいため、定期的な検査が重要となります。
新型コロナウイルスの流行が続いていますが、自己判断での休薬や通院自粛は行わず、 主治医としっかり相談して治療を進めましょう。

 

 

岡山市立市民病院 臨床検査技術科 村山・森


 

《参考文献》

  • 臨床検査データブック 医学書院
  • 日本腎臓病学会HP

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第267回リウマチ教室:腎機能に関する主な検査