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第266回リウマチ教室:整形外科手術の進歩~コンピュータ支援手術について~

解説:岡山市立市民病院副院長 リウマチセンター長 臼井 正明(更新日:2021/12/16)

 

はじめに

 最近、整形外科分野でもIT(information technology情報技術)の進歩により、CTを用いて立体的な3次元データを活用できるようになりました。
従来は、レントゲン写真を頼りにしてトレーシングペーパーを用いた術前計画を行っていました。人工関節の手術前は「紙と鉛筆」を頼りに人工関節のサイズ、設置位置を検討していました。人工関節の設置には高度の正確性が必要であり、3度以上角度が狂うと成績が低下すると報告されています。しかし、手術に際しては、実のところ医師の経験や感覚だけが頼りでした。当院では、これを改善するために、正確で安全な手術のために岡山県で初めて人工関節手術支援ロボットを導入しました。人間よりも精密に動作する専用アームが補助して0.5mm、0.5度の精度での手術が可能となりました。
今回、正確で安全な手術が期待できる整形外科システムを紹介します。
 

『人工関節手術支援ロボット』を導入しました

術前計画へCT(コンピュータ断層 撮影)の応用

 レントゲン写真は2次元=平面データですが、 CTでは3次元=立体的なことがわかります。人工関節手術は、傷んだ関節、骨を人工物で置き換える手術です。患者さんの体格に合ったサイズを選んで、正確に設置することが大切です。 
ひざの手術の場合、股関節から足まで下肢全体のCTを撮影して、専用のソフトを用いて術前計画を行います。 患者さん個人の骨モデルを作成し、オーダーメイドの術前計画を作成します(図1)。骨を切る量、人工関節のサイズ、3次元的な設置位置のプランを立てる事が出来ます。 
 

202112rheumatism01.png

図1. 股関節手術での3次元プラン

 

ナビゲーションシステム

 関節周囲には、筋肉、靱帯や神経・血管があります。これら周囲組織を傷めずに、手術をするため視野は限られます。また、手術中に患者さんの姿勢が変わり、骨の向きや傾きが変化するため関節の位置を正確に把握することが難しくなります。従来は、術者の熟練した感覚に頼っていましたが、精度や再現性に課題がありました。人工関節を正確に設置しないと、神経・血管の損傷や術後脱臼するリスクが大きくなります。また、関節に過度のストレスがかかり、摩耗(ちびること)や弛み(ずれること)が早期に生じて成績不良の原因となります。
手術のナビゲーションシステムは、車のナビが現在地や目的地への経路を示すように術中に人工関節の適切な設置位置を示してくれます。赤外線センサーを搭載した3次元位置システムにより、人工関節の正確な位置を示してくれます(図2、図3)。

 

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図2. 赤外線センサー 

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図3. ナビゲーションシステムでの画像

 

人工関節手術支援ロボットシステム(下の図4、図5)

 ナビゲーションを搭載した手術支援ロボットが、骨切りや人工関節の設置を補助するシステムです。手術を行うのはあくまで執刀医で、ロボットではありません。術前計画にそった正確で再現性の高い手術が可能であり、合併症の少ない手術が期待されます。
3つのメリットが知られています。
 

①正確性が高い手術手技

ひざ関節の大きさ・形状を赤外線装置で駆使して手術中に解析し、執刀医に知らせます。さらに、人間よりも精密に動作する専用のロボットアームが補助して0.5mm、0.5度の精度での手術を実現します。

②より適切な人工関節設置

術前計画で3次元モデルが作成され、最適な人工関節の種類とそのサイズが選定されます。術中データと術前計画を、手術支援ロボットが解析して執刀医に知らせます。より適切な人工関節手術が可能となります。

③満足度と長期成績の向上へ個別化治療(オーダーメイド手術) 

手術前に患者さん1人ひとりに個別に計画を立て、その人の理想の人工膝関節を高い再現性で実現します。手術後の早期の回復が可能となり、長期成績の向上が期待されます。


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図4. 人工ひざ関節手術支援ロボットシステム

 

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図5. 実際の手術室での様子

 

おわりに

 リウマチ治療において薬物療法が飛躍的に進歩しましたが、整形外科の分野も日々発展しています。 「紙と鉛筆」から「コンピュータ」に進化したのです。市民病院では、今年8月から人工関節手術支援ロボットシステムを従来のナビゲーションシステムに加えて導入し、症例を重ねています。関節変形が進行して歩行に障害がある患者さんに、低侵襲で合併症のリスクの少ない手術を行ない、早期の回復・長期成績の向上を目指しています。
なお、人工関節手術支援ロボットシステムは整形外科 臼井副院長と藤原主任部長が担当しています。 

 

岡山市立市民病院副院長 リウマチセンター長 臼井 正明

 

 

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第266回リウマチ教室:整形外科手術の進歩~コンピュータ支援手術について~