日増しに秋の深まりを感じるこの頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。
関節リウマチの薬物療法はこの十数年間で大きく進歩し、従来からの抗リウマチ薬に加えて生物学的製剤やヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬なども使用され、治療の選択肢も広がっています。しかし、これらの薬も正しく服用できなければ、十分な効果が得られないことや、副作用が現れることが懸念されます。
そこで今回は「ご自宅で薬を正しく飲むための工夫」についてご紹介したいと思います。
「服薬アドヒアランス」という言葉をご存知でしょうか。アドヒアランス(Adherence)は「患者さんが積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること」を意味します。つまり「服薬アドヒアランス」とは、患者さんご自身が薬を服用する意義を理解し、主体的に治療を受け、継続した服薬を行うことを意味します。医師や薬剤師からの説明により「今飲んでいる薬はなぜ飲んでいるのか」「服用しないとどのようなデメリットが生じるのか」を理解しつつ、不安や疑問なことがあれば積極的に相談していくことが重要です。
比較的気軽に行える飲み忘れの対策として、携帯電話やスマートフォンのアラーム機能の使用がおすすめです。服用時間を登録しておくとアラームで通知されるので、飲み忘れの防止に繋がります。近年では、スマートフォンのアプリを利用した服薬管理アプリも注目されていますので、興味のある方はぜひ検索してみて下さい。
薬の飲み忘れ・飲み間違いを防ぐための様々な便利グッズがドラッグストアや100円ショップで販売されています。今回はその中の一つ「おくすりカレンダー」とよばれるグッズをご紹介します。最も一般的なものは、 壁に吊るすタイプのものであり、横に「朝・昼・夕・寝る前」と1日のうちに服用するタイミング、 縦に「月・火・水・木・金・土・日」と曜日を表示している1週間分のポケットが碁盤の目のように配置されています。
「おくすりカレンダー」の様々なメリットとして、壁掛けなので場所をとらない、まとめて準備できるので手間が減る、薬の飲み忘れが明確にわかる、家族にも服薬をチェックしてもらえるなどがあげられ、非常におすすめです。リウマチのお薬の中には週1回服用する薬もあり、それらの飲み忘れの防止にも良いのではないでしょうか。
「一包化」という言葉をご存じでしょうか。一包化とは、1回に複数個服用する薬や、「朝・昼・夕」など服用するタイミングが同じ薬を1袋ずつパックすることです。一包化することで薬の飲み間違いが少なくなり、薬の管理もしやすくなります。また、シートタイプと比べると開封がしやすく、関節リウマチによる手指のこわばりなどで薬を取り出すことが難しい方にも便利です。
保険薬局で一包化を行う場合、基本的には病院で薬を処方した医師の指示が必要となりますので、かかりつけの医師にご相談ください。(一包化には追加料金が発生することが多いです)
「ポリファーマシー」とは、多くの薬を服用しているために、副作用を起こしたり、きちんと薬が飲めなくなっている状態をいいます。75歳以上の高齢者の4割は5種類以上の薬を使っています。もちろん、薬の数が多いからといって必ず減らすべきということではないので、勝手に薬をやめたり減らしたりすることはよくありません。しかし、薬の数が増えると薬の管理も複雑になります。
ポリファーマシーを防ぐためには、お薬手帳を使用して自分が服用している薬をすべてまとめて記録しておきましょう。かかりつけの薬局をもつと、服用薬を把握してもらえるのでさらに安心です。また、処方内容によっては、配合錠(複数の成分の薬が1つにまとまった錠剤)への変更や、用法の単純化によって服薬支援が行える場合もありますので、薬の数が多く管理が困難な場合は、医師・薬剤師にご相談ください。
岡山市立市民病院 薬剤部
竹下 和輝
《参考文献》