ロゴ:岡山市立市民病院

文字サイズ

標準

ボタン:TEL
ボタン:MENU

第263回リウマチ教室:ストレッチについて

解説:岡山市立市民病院 リハビリテーション技術科 理学療法士 藤井 和敬(更新日:2021/09/16)

 

はじめに

 ストレッチという言葉はよく耳にすることはあるかと思いますが、具体的にどれぐらいの強度がよいか、どのぐらいの時間すればよいかについて目にすることは少ないかと思います。ストレッチとは「引っ張る」「伸ばす」という意味であり、その名の通り「身体を伸ばすこと」です。身体運動の源であり、関節を固定して安定化する役割を持つ筋肉や腱を意識的に伸ばすための運動をストレッチングと呼びます。
ストレッチングは、運動を始める前の準備運動として、運動を行ったあとの整理体操として、あるいはリハビリテーションにおける筋肉の柔軟性改善や関節の可動域を広げるための柔軟体操として多くの場面で行われています。
今回は、ストレッチングを効果的に行うための研究や報告を紹介させていただきます。


 

ストレッチングにまつわるQ&A

ストレッチングを実施する目的

①怪我の予防

②柔軟性(関節可動域)の改善

③筋疲労の軽減

④リラクセーション

上記だけでなくストレッチングには様々な効果があると報告されています。

 

202109_rheumatism01.png

 

Q1.ストレッチングの伸張強度

 A...ストレッチングの基本的な条件の一つである伸張強度については「痛みのない範囲」が推奨され、痛みを伴う強度に対しては否定的な見解が大半を占めています。しかし、伸張強度が、強いほど柔軟性をより大きく改善し、かつ効果を長く持続させるとの報告もあります。伸張強度が強くなるほど痛みによって筋肉に力が入り過ぎてしまうことや、筋肉を傷つけてしまう可能性もありますので、自覚的には「気持ちいい以上」であればストレッチングの効果は期待できます。
 

Q2.ストレッチングの伸張時間

 A...先行研究において様々な見解はありますが、一回のストレッチングの時間を60秒×2、30秒×4、10秒×12と伸張時間やセット数を変化させても合計時間が同じであれば、同程度の効果が得られると報告されています。このことから、ストレッチングの一回の伸張時間は少なくとも複数回繰り返すと効果的であると考えられます。ストレッチングの時間の目安としては、合計時間「2分以上」が望ましいです。
 

Q3.ストレッチングのセット数

 A...セット数については、1セット目は最も効果が大きく、5セット目までは効果はありますが、5セット目から10セット目はあまり変化がなかったと報告されています。1セット目の効果があれば「5セット以内」で行えば効果的です。 
 

Q4.ストレッチングの期間

 A...ストレッチングの効果がどのくらい持続するかについては様々な報告がありますが、ストレッチングをやめてしまうと筋肉は徐々に硬くなってしまうとされています。今年発表された研究報告では、週2日で5週間ストレッチングを行い筋肉の硬さは改善されたが、ストレッチングをやめて5週間後には筋肉は再び硬くなってしまったと報告されています。持続的な効果を目的とする場合は、週に3回以上の介入頻度が必要とも考えられます。このことから、目安としては「5週間以上(週3回以上)」になりますが、継続して行うことが大切です。 

 

Q5.ストレッチング効果の検証(高齢者)

 A...ストレッチングの効果は高齢者においても、短期間・長期間ともに関節可動域は増大すると報告されています。また歩行についてもストレッチングを行うことで、歩行速度や歩容 (歩き姿)を改善させると報告されています。
 

 

ストレッチングのまとめ

①ストレッチングの伸張強度は「気持ちいい以上」

②ストレッチングの伸張時間は「合計2分以上」

③ストレッチングのセット数は「5セット以内」*1セット目の効果があれば

④ストレッチングの持続期間は「5週間以上(週3回以上)」*継続が大事

⑤高齢者においても効果は期待できる

 

202109_rheumatism02.png

 



岡山市立市民病院 リハビリテーション技術科
理学療法士 藤井和敬

 

《参考文献》

1.   鈴木重行:ストレッチングの科学.三輪書店.2013 

2.   山本利春:市民公開講座 健康づくりのためのストレッチングの効用~疲れや痛みを予防・解消するために~.第27回 日本医療薬学会年次.2017

3.   波多野元貴 他:静的ストレッチングの柔軟性改善効果は伸張強度が高いほど大きい.体力科学 第63巻 第1号 114-110. 2014

4.   中村雅俊 他:スタッティックストレッチングが腓腹筋筋腱複合体の筋力及びスティフネスに及ぼす影響の検討:異 なるストレッチング時間と反復回数を用  いた検討:体力科学 第66巻 第2号163-168 .2017

5.   Nakamura M,Yahata K,Sato S,Kiyono R,Yoshida R,Fukuya T,Nunes JP,Konrad A.Traning and Detraining Effects Following a Static Stretching Program on Medial Gastrocnemius Passiive Properties.fronties in Physiolosy. 2021

 

 

 

PDFダウンロード

このページをPDFで閲覧・印刷される方はこちらからダウンロードしてください。

第263回リウマチ教室:ストレッチについて