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第258回リウマチ教室:関節リウマチの手術について

解説:岡山市立市民病院副院長 リウマチセンター長 臼井 正明(更新日:2021/04/15)

 

はじめに

 リウマチに対する外科的療法(手術)は、薬物療法、リハビリとならんで有力な治療手段です。関節の変形が進み痛くて歩けない場合や頚椎 (脊髄神経)に病変が及んだ場合は、薬やリハビリでは回復が難しい場合もあるからです。
人工関節は非常に成績が良好な手術方法で、特に股関節・膝関節では50年以上の歴史があり、多くの患者さんを救っています。薬物療法は上手くいっているのに日常生活で不自由が生じた場合、「歩きにくい」、「外出が難しい」と感じたら手術が選択肢になります。従来、当院では人工関節手術は私が担当していましたが、2018年からは人工関節が専門の藤原一夫整形外科主任部長が岡山大学から加わり、一層充実したものになりました。ナビゲーションシステムなどコンピューター技術を導入して、質の高い医療を提供できる体制になっています。
 また、近年は手指や足趾の手術も多く施行されるようになりました。「物がつまめない」、「足に胼胝(たこ)ができる」 、「靴が履きにくい」などでお困りでしたら手術を考えてもよいでしょう。機能障害の原因をつきとめ、それが関節破壊ならば人工関節を、腱断裂なら腱移行、腱移植が選択されます。当院では、手の外科が専門の沖田医員が指関節形成術・再建術などを行っています。沖田医員は、国内留学先の新潟県立リウマチセンターで研鑽を積まれたリウマチ学会専門医でもあります。

 

手術は有力な治療手段のひとつです。

リウマチ白書から

 2020年に、日本リウマチ友の会からリウマチ白書が発行されました。この中では、手術についても取り上げられています。手術を受けているリウマチ患者さんは約半分おられました。さらに、その中の半数以上は3回以上の手術が施行されていました。関節リウマチを発病して経過が長い患者さんにとって、手術は有力な治療手段の一つとなっています。手術の種類は、人工関節手術が多くなっています (図1)。薬物療法の進歩で、滑膜切除術や関節固定術は減少傾向にあるようです。時代とともに手術も変わっていきます。

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図1.  手術の種類
 

 人工関節の手術部位は膝関節が最も多く、股関節、肘関節と続きます(図2)。術後の生活も改善され、正座可能な患者さんもおられます(図 3)。最近は、足関節、肩関節も行われるようになりました。足関節は従来、関節固定術が施行されていました。痛みは楽になり、平地は歩きやすくなりますが足の甲に負担がかかり、でこぼこ道は大変でした。当院では岡山で最も早く人工足関節を取り入れました。痛みが取れて歩きやすくなり、可動域も良好な成績が得られています。

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図2.  人工関節の部位

 

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図3.  両膝人工関節術後 正座可能

  • 年齢/手術時年齢44歳のリウマチ患者
  • 症状/歩行障害、両ひざ関節痛、運動制限                 
  • 治療内容/両ひざの人工関節置換術施行
  • 費用/ 3割負担で片側手術の入院で120万円程度です(年齢、保険の種類、身体障害者手帳の有無により異なります。また、高額医療制度も使用可能です)
  • 期間/片側の手術で入院約3週間
  • デメリット/血栓症、感染、人工関節の弛みなど

 

 リウマチの病変が手関節に及び、手の腱(指を伸ばすスジ)が切れる場合があります。通常、小指が伸びなくなり、環指、中指へと進みます。この場合は、手首の骨と腱の手術を行います。術後、指は伸びるようになります(図4) 。また、手指の人工関節手術も増加しており、変形の矯正に役立っています。

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図4.  手伸筋腱断裂手術前後

  • 年齢/手術時年齢53歳のリウマチ患者
  • 症状/左手の中、環、小指の進展障害
  • 治療内容/腱移行術・移植術
  • 費用/ 3割負担で約15万円程度(年齢、保険の種類、 身体障害者手帳の有無により異なります)
  • 期間/入院は1週間、外来での機能訓練を含め約4週間
  • デメリット/皮膚壊死、感染、腱の再断裂など

     

おわりに

 リウマチによって日常生活に不自由が生じた時、 薬物療法以外の方法も考慮にいれましょう。 環境整備、装具などもあります。スロープ・手すりの設置、段差の解消などでも生活の改善が出来ます。 杖の使用やサポーター装着などで楽になる場合もあります。手術は出来れば避けたいものです。しかし、手術でしか改善しない症状もあり、数多くの術式が考案されています。困ったことがあれば、整形外科受診時に相談してみましょう。 
 最後に、手術後のよい状態を持続するには生活習慣も大切です。人工関節術後は体重増加に注意し、過度の負担は避けましょう。足の手術後にはフットケアに注意を払い、清潔にし、足にあった靴を履きましょう。基礎療法(バランスのよい食事、睡眠管理、休養・運動の調節など生活習慣を整えること)をしっかりと行い、手術後の定期的検診も忘れないようにしましょう。たとえ再手術が必要な場合でも早期に発見することが大切です。

 

岡山市立市民病院副院長 リウマチセンター長 臼井 正明

 

 

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