関節リウマチを含む膠原病患者さんの多くは免疫低下作用がある薬剤を使用されています。
免疫力が低下していると、様々な感染症にかかりやすくなり、重症化もしやすいため、感染予防が大切です。マスク着用、手洗い、うがいなど様々な方法がありますが、ワクチンの接種も感染症予防対策の一つです。
そこで今回は膠原病患者さんの予防接種を取り上げたいと思います。
ワクチンには7種類があり、そのうち一般に使用されているものは弱毒化ワクチン、不活化ワクチン、組み換え蛋白ワクチン、ウイルス粒子様ワクチンの4種類になります(表1)。
弱毒化ワクチンはいわゆる生ワクチン(生きた菌・ウイルス)なので、日本ではステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤などの使用中の方、免疫力が著しく低下した方に対して使用されません。
また、ワクチン接種はできるだけ病気が落ち着いている時に行われるべきとされています。ワクチン接種は免疫力全体を活性化させるため、病原体のみならず自己に対する免疫も活発になり、結果病気が悪化する可能性があるからです。B細胞を除去するような治療(膠原病領域の薬剤ではリツキシマブになります)前にワクチン接種を考慮すべきとされています。
ワクチンに対するアレルギーがなければ、予防接種は強く推奨されています。接種は毎年で、通常10月以降となります。
インフルエンザと同様に、強く推奨されています。2回目以降の予防接種は前回接種から5年以上間隔を空けて行われます。2回目以降の接種ではアレルギーの頻度が増えることが知られてい ます。
帯状疱疹ワクチンには、生ワクチンと組み換え蛋白ワクチン(リコンビナントワクチン)の2種類があります。
健常な方でも、50歳以上になると帯状疱疹の発症リスクは急激にあがり、年間100人に1人が発症します。そのため、帯状疱疹の予防を目的として、50歳以上の方にワクチン接種の適応があります。但し、いずれのワクチンに関しても自費診療となり、免疫抑制作用のある薬剤(ステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤、抗がん剤)を使用中の方、持病により免疫力が大きく低下した方には生ワクチンを使用できません。
組み換え蛋白ワクチンは2020年1月から国内で使用可能となりました。健常な方で約97%、膠原病の方で約90%帯状疱疹の発症率が低下します。
用法は2か月の間隔で2回筋肉注射です。懸念されるのは、アジュバントという免疫活性物質が含まれるので膠原病が悪化する可能性がある点です。膠原病が十分に抑えられている状態での使用は問題ないとされていますが、病気の勢いがある状態での使用は十分に検証されていません。
国内で直近に使用されるCOVID-19ワクチンは、ファイザー社(米国)、モデルナ社(米国)、アストラゼネカ社(英国)の3社が製造しているものです。
前2者はRNAワクチン、後者はウイルスベクターワクチンとなります。2021年3月時点で国内で接種が開始されているのはファイザー社のワクチンです。ファイザー社のワクチンは16歳以上で使用可能で21日間隔で2回筋肉注射を行います。約 95%発症率が低下します。
一般的な副反応としては、アナフィラキシーを含むアレルギー反応です。
いずれの3種のワクチンともコロナウイルスの突起部分(スパイク)の蛋白をヒトの細胞で作らせて、その蛋白に対する反応を利用してコロナウイルスに対する免疫をつけます。体内で過剰に産生されたウイルス蛋白が中長期的に人体にどのような影響を及ぼすかが分からないのが現在の懸念点です。
また、膠原病の方での有効性や副反応に関する検証はなされていません。現時点でワクチン接種と薬剤内服の時期についてのガイドラインや推奨はありません。2月に公表されたアメリカリウマチ学会タスクフォースのガイダンスは(表2)の通りです。しかし、論文化されたものではなく今後随時変更されるものと思われます。
(表2)にある薬剤を使用されている方はワクチン接種の順番が来た段階で、改めて最新情報をご確認ください。
岡山市立市民病院 リウマチセンター
副センター長 若林 宏
《参考文献ならびにWebサイト》
Ann Rheum Dis. 2020; 79: 39-52.
N Engl J Med. 2015; 372: 2087-96.
Rheumatology (Oxford). 2020 Sep; doi: 10.1093/rheumatology/keaa424.
ACR COVID-19 Vaccine Clinical Guidance Task Force, Feb 2, 2021.