関節リウマチにおいて、「基礎療法」「薬物療法」「手術療法」「リハビリテーション」は治療の4本柱とされています。
関節リウマチのリハビリテーションでは「関節の痛みや腫れを抑えること、関節保護・機能維持とその後の骨・関節破壊の進行を抑えること、生活の質を改善することに重きが置かれるようになっています。本稿では、関節リウマチのリハビリテーションにおける運動療法の注意点や装具療法、関節保護、自助具を中心に述べます。
臨床症状の改善のみならず、関節破壊の抑制を介して長期予後の改善、特に身体機能障害の防止と生命予後の改善を目指すことです。主治医と患者さんが治療の目標をはっきりと決めて、その目標を達成するために一緒に治療していくことが重要です。
治療目標は、①炎症を抑えること、②骨の関節の破壊を抑えること、③普通の生活ができるようにすることです。
『関節リウマチ診療ガイドライン2014』では、薬物療法、手術療法に加えて、生活指導など基礎療法、身体運動や運動療法、生活に深くかかわる作業療法などリハビリテーション治療が強く推奨されています。リハビリテーションは、関節の動く範囲を広げたり、血液の流れをよくして、痛みや筋肉のこわばりをとるための運動療法や、患部を温める温熱療法などです。
活動期のリハビリテーションは滑膜炎による腫脹・疼痛の軽減、活動性低下に伴う運動器廃用の予防と回復が主たる目的となります。
腫脹や疼痛の軽減には適切な安静、使いすぎや関節に負担のかかる誤った使い方の回避を含む関節保護、寒冷や温熱等局所症状に合わせて物理療法、疼痛が誘発される箇所へのスプリント・装具療法等を行います。また、関節拘縮を防ぐために1日最低1回はすべての関節を動かすことが望ましいとされています。「無理なく、動かせる範囲」が原則です。
関節を動かす際のポイントは、①関節が動く範囲をしっかりと動かす、②痛みが現れる手前まで動かす、③翌日に痛みや疲れが残れば残らない程度に実施します。
非活動期のリハビリテーションは、関節破壊の有無や程度、身体機能障害の重症度に応じて目的が異なります。
薬物療法が奏効し滑膜炎が沈静化した状態では、活動性低下に伴う運動器廃用(筋力低下、関節可動域制限、骨粗鬆症等)を改善するために、使いすぎや関節に負担のかかる誤った使い方にならない程度に負荷を上げていく運動を行います。低強度の運動でも継続して行うことで筋力増強の効果を得ることができます。ウォーミングアップとクールダウンを忘れてはいけません。
非活動期であっても関節変形や破壊により関節機能や日常生活動作能力が障害され、運動時痛等が出現する場合には物理療法、装具療法、運動療法、作業療法を組み合わせます。
関節リウマチに対する装具療法には、①疼痛の軽減、②関節機能の代償、③変形の進行予防の3つの目的があります。
①疼痛の軽減:動くことで生じる痛みを関節運動の制御により軽減するために、手関節や足関節などで固定装具が用いられます。
②関節の代償:装具を用いて動揺を安定化させたり、変形を機能的肢位に矯正したりする方が合目的な機能が得られます。
③変形の進行予防:足の足底板や頚椎装具は正常のアライメントを保つことにより変形の進行を予防します。
装具は日常生活において過度な動きを制限し、関節保護への意識を促すうえで有効な手段です。種類はリストサポーターや指のスプリント、足底板、足型装具など多数あります。
日常生活の中で関節の負担を減らすことです。例えば、マグカップや茶碗は両手で持つ、調理では両手鍋を使用しフライパンも両手で持つようにする、肩や肘、手が痛む場合には自助具を用いることも重要です。
自助具とは障害により日常生活動作が阻害されている場合に、道具や器具を用いて代償するためのものです。理学療法士や作業療法士に依頼して作製する場合と市販品を購入する場合があります。例えば、食事では把持部を太くする皿やコップの工夫、後ろ髪を整える長柄のブラシ、袖や裾を通すドレッシングエイドやリーチャー、靴下を履くソックスエイドなどがあります。また、点眼器や台付爪切り、ペットボトルオープナー、鍵開け、錠剤やカプセルの袋を開けるものもあります。
岡山市立市民病院 リハビリテーション技術科
理学療法士 藤井和敬
作業療法士 坂口和輝
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