整形外科の外来には、手足の痛みを訴えて多くの患者さんが受診されます。関節リウマチ以外にも腱鞘炎、変形性関節症(加齢により軟骨が摩耗する病気)など多くの原因疾患があります(表1)。日常診療では、これらの疾患を常に頭に入れて進めます。関節リウマチの診断は、関節痛が他の原因で起こっていないことを確かめてから始まります。これを鑑別診断と呼びます。表1では、鑑別診断が難しい順で並んでいます。今回、リウマチと区別がつきにくい、鑑別診断が難しい病気について取り上げてみました。
ウイルス感染に伴う関節炎の代表的なものにパルボウイルス感染があります。お子さんが感染すると両頬がリンゴのように赤くなることからリンゴ病ともいわれています(図1)。大人がかかると関節痛・頭痛などが出現します。当院内科の先生が罹ったことがあり、関節リウマチと見分けがつかないほど手指が腫れていました。お子さんがリンゴ病になっておられたので、治療せずに様子をみるだけで治りました。
図1:リンゴ病の頬
全身性結合組織病は関節リウマチも含めた膠原病のことです(図2)。関節リウマチには3つの特徴①リウマチ性疾患、②自己免疫性疾患、③結合組織病があります。①リウマチ性疾患は、広い意味でのリウマチで手足が痛む病気のことです。変形性関節症や痛風などがあります。②自己免疫性疾患は、免疫、抵抗力の異常によっておこる病気で甲状腺炎、重症筋無力症などがあります。③結合組織病は、身体のすき間を埋める結合組織(膠原コラーゲン)の病気で、血管炎、シェーグレン症候群などのことです。関節リウマチは、膠原病のなかでも最も患者数の多い病気です。日本で約80万人の患者さんがいます。
図2:関節リウマチの3つの特徴
リウマチ性多発筋痛症は高齢者に多くみられ、肩や臀部から太ももが痛くなる病気です。発熱、体重減少などを伴うこともあります。手の関節の腫れや痛みを伴う場合も多く、関節リウマチと見分けがつかないこともあります。また、手足や下腿に浮腫(むくみ)を伴うこともあります。
乾癬性関節炎は乾癬という皮膚の病気の患者さんに生じ、手足などの関節痛や腫れがみられます。背骨や手足が痛くなる脊椎関節炎という疾患群の仲間です。脊椎関節炎には他に、腸の病気に伴うものや感染症に合併するものもあります。親戚の方にこの病気の方がいると発症しやすく、家族集積性がみられます。頭部や臀部に乾癬の皮膚病変や爪の異常がある人に関節炎が多く発生するようです(図3)。皮膚病変より前に関節痛で発症する患者さんもおられ、関節リウマチと間違って診断されることもあります。
図3:額の乾癬、手指関節炎と爪変形
関節痛を訴えてこられた患者さんの調査を3年前にしました。患者さんは320人で平均年齢は59.8歳(12歳~100歳)でした。その中で関節リウマチと診断した患者さんは、129人(40%)でした。その次が、変形性関節症、腱鞘炎でした。その他、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、脊椎関節炎、痛風などもありました。また、糖尿病や更年期障害の患者さんもおられました。関節痛は様々な原因で生じます。また、関節痛は一時的で、自然に治った人もいました。
関節に痛みを生じる病気は沢山あります。診断は、丁寧な診察、血液検査や画像(X線、関節エコー、MRIなど)検査を駆使して慎重に行います。もちろん正確な診断が重要ですが、関節変形が進むかどうかなどの重症度を考慮して慎重に診察を進めています。
岡山市立市民病院副院長 リウマチセンター長 臼井 正明
《参考文献》