関節リウマチは多発する関節炎と関節破壊により、関節痛・関節変形を生じます。近年の治療薬の進歩により関節リウマチ患者さんに対する手術は減少傾向にあります。しかしその内訳を見ると、主に膝関節や股関節に対する人工関節の件数が減少しており、手指や肘関節に対する手術件数には変わりがなく、相対的に増えているのが現状です。その理由として、手は人目につくため、機能障害のみならず美容的観点から手術を希望される患者様が多くなっているからだと考えます。
今回は私が治療に関わらせていただいた患者さんの例を上げながら、関節リウマチ患者さんの上肢に対する手術の一部を紹介させていただきます。
代表的な変形として尺側偏位(図1A)、母指ボタン穴変形(図1B)、母指スワンネック変形(図1C)、ボタン穴変形(図1D) 、スワンネック変形(図1E)などがあります。いずれも関節リウマチによる関節炎・関節破壊によって生じます。手術療法は様々ありますが、変形の程度や関節拘縮の程度によって最適な手術法を選択する必要があります。今回は尺側偏位に対して手術を行った患者様のご紹介をさせていただきます。
【図1】 A:尺側偏位 B:母指ボタン穴変形 C:母指スワンネック変形 D:ボタン穴変形 E:スワンネック変形
●41歳女性。20代で関節リウマチが発症するも、早期に生物学的製剤を使用することで関節破壊・ 関節変形がないまま経過していた。
しかし、出産前後の生物学的製剤が使用できない時期に手指の変形が進行。外観(図2A)が気になるため受診されました。患者さんと十分に相談した上で、軟部組織再建による手術を施行した(図2B) 。
【図2】A:手術前外観 B:手術後4週外観
関節リウマチによって手関節の関節破壊 ・変形が進行した場合、手首の疼痛や手首の動きが悪くなります。加えて、手関節の変形により骨と腱との間で摩擦が生じるために腱が断裂し、指が伸びなくなる場合もあります(図3)。そのまま様子を見ていても、次々に他の指が伸びなくなる場合もあるため、1本でも指が伸びなくなった場合(多くの場合は小指から)には早急に手術を行う必要があります。
【図3】薬指と小指の伸筋腱が断裂した場合
肘関節の手術は強い痛みがある場合や動きが悪くなり日常生活に困る様になった場合に行われます。日常生活の中では洗顔・結髪・更衣などが特に制限されやすいです。手術の方法としては炎症の原因となっている関節内の滑膜を除去する「滑膜切除術」や「人工肘関節全置換術」などがあります。
●66歳女性。肘関節痛・可動域制限が強く、洗顔・洗髪・ドアノブを回す・趣味のガーデニングが困難であったが何年も我慢されていた。人工肘関節置換術および手関節形成術を行った(図4)。
【図4】 A:手術前X線写真 B:手術後X線写真
関節リウマチの手指で悩んでおられる患者さんは非常に多いです。その中でも、①6ヶ月以上続く薬物が効かない手指の疼痛。②指の腱断裂(指が伸びない・曲げられない)。③回内外(ドアノブを回す動き・「きらきら星」の手の振り付け)ができない。④手の外観に困っている。などの訴えがある患者さんには私は手術療法を提案するようにしております。ただ、手術療法は治療方法の選択肢の一つでしかないため、実際は装具装着や薬物療法で機能・疼痛が改善する場合も多いです。
上肢でお困りのことがございましたら、お気軽にご相談いただければと思っております。
岡山市立市民病院 整形外科 医師 沖田 駿治