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第252回リウマチ教室:予防接種と服用薬の注意点

解説:岡山市立市民病院 薬剤部(更新日:2020/10/15)

 

はじめに

 秋風が気持ちの良い季節になりました。朝晩はだいぶ涼しく感じられるようになりましたが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。
今回のリウマチ教室瓦版は薬剤師より、これから流行の季節となるインフルエンザ等の予防接種についてと、関節リウマチの治療薬を服用中の方がこれからの季節に気を付けることについて、お話させていただきたいと思います。

 

予防接種について

関節リウマチで予防接種は受けてもいいの?

 種類により受けてはいけないもの、積極的に受けるべきものがあります。
 予防接種(ワクチン)は、生ワクチン(BCG、麻疹、風疹、水ぼうそう、おたふくかぜなど) と不活化ワクチン(インフルエンザ、肺炎球菌 など)に大きく分けられます。生ワクチンはウイルスや細菌の毒性や感染力を弱めたワクチンのため、薬により免疫力が低下した状態では感染してしまう可能性があります。関節リウマチの薬の中で、メトトレキサートやタクロリムス、生物学的製剤、ステロイド剤などを使用している方は接種できません。これらのワクチン接種が必要な際には医師にご相談ください。
 不活化ワクチンはウイルスや細菌の毒性や感染力を失わせたワクチンなので、ワクチン接種により発症することはなく、関節リウマチの薬を使用中の方も受けても問題ありません。不活化ワクチンであるインフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンについては、日本リウマチ学会からも積極的な投与を推奨されています。

 

インフルエンザワクチンについて

 インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行されることが予測されると判断されたウイルスを用いて製造されます。
 例年日本では、インフルエンザは12月~4月頃に流行し、1月~3月上旬に流行のピークを迎えます。今年は、新型コロナウイルスと並行しての流行が懸念されており、65歳以上の方や基礎疾患を有する方などはとくに、早めの接種を推奨されています。接種実施期間は自治体によって異なります。接種にあたってはあらかじめ医療機関にお電話での予約等をお願いします。
 インフルエンザワクチンの接種回数は、13歳以上の方は基本的には1年に1回です。医師が必要と判断した場合などは2回接種されることもあります。13歳未満の方は2回接種です。

 

インフルエンザワクチンの効果は?

 現行のインフルエンザワクチンは、接種すれば絶対にインフルエンザにかからない、というものではないですが、発病の予防・発病後の重症化の予防に関しては一定の効果が認められています。

 インフルエンザウイルスが口や鼻、眼の粘膜等から体の中に入ると、細胞に侵入して体内で増殖します。この状態を「感染」といいますが、インフルエンザワクチンにはこれを完全に抑える働きはないため、手洗い・うがい、マスクの着用や人混みを避けるといった感染予防対策が重要になります。
ウイルスが増えると数日の潜伏期間を経て、発熱等のインフルエンザの症状が出現します。この状態を「発病」といいます。発病後、多くの方は1週間程度で回復しますが、 中には肺炎や脳症等の重い合併症が現れ、入院が必要となったり、死亡される方もいます。これを「重症化」といい、基礎疾患のある方や高齢者では重症化する可能性が高くなります。インフルエンザワクチンの最も大きな効果はこの重症化の予防です。

 ワクチン接種による副反応として、比較的多く見られるのが接種部分の発赤や腫れ、痛みなどで、通常は2~3日でなくなります。まれですが重い副反応が起きる可能性もありますので、接種後に体調不良等が生じた場合には早めに医療機関にご相談ください。
 

関節リウマチの治療薬を服用中の方がこれからの季節に気を付けること

脱水には注意を!

 気温が下がってくると、水分の摂取量も少なくなってしまいがちです。体内の水分が不足すると、血液の量も不足します。
薬を体外へ排出する器官である肝臓や腎臓に十分な血液量がいかなくなると、肝臓や腎臓の働きが低下し、薬が排出されにくくなる可能性があります。薬が十分に排出されないことで、体内の薬の濃度が上がってしまい、副作用が起きてしまうこともあります。とくにメトトレキサートを服用中の方は脱水にならないよう適度な水分摂取を心がけましょう。
 また、薬の副作用の予防のためにも、定期的な血液検査で腎臓・肝臓の働きが低下していないか確認していく必要があります。
 

感染症に注意!

 風邪やインフルエンザ、肺炎など感染症の流行の季節がやってきます。関節リウマチの治療薬は体の免疫力を抑えてしまうものも多いので、感染症にはとくに注意が必要です。これからの季節、手洗い・うがい、マスクの着用、人ごみを避ける等の感染予防対策をいつも以上に心がけましょう。

 

感染症にかかった時は?

 メトトレキサート服用中の方は、発熱があるときや食あたり等で下痢をしているときなどは服用をやめましょう。メトトレキサートはいったん効果を示すと、1~2週間程度の中止では関節リウマチが悪化することはありません。体調の悪い時に服用すると副作用も出やすくなるため、服用を中断してください。
 一方、ステロイド(プレドニゾロン)は急に内服を中断すると、副腎不全などを起こす可能性もあるため、自己判断では中止しないようにしましょう。発熱が続く場合や、咳・息切れがある場合などは間質性肺炎の可能性もあるため、早めに医療機関を受診してください。

 

おわりに

 まだまだ過ごしやすい気候が続きます。食欲の秋、読書の秋、実りの秋…感染症には十分気を付けながら、皆様それぞれの秋をお楽しみください。

 


 

岡山市立市民病院 薬剤部

《参考文献ならびにWebサイト》

 

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