COVID-19流行下での関節リウマチを含む膠原病の管理と県下の感染状況についてQ&A方式でお届けします。
現在までに自己免疫疾患の方がCOVID-19にかかりやすいという証拠はありません。また、膠原病の方が重症化しやすいという報告はありません。但し、関節リウマチの患者はCOVID-19に関連した臓器障害のリスクが1.2倍だったと韓国から報告されています。また、高齢、男性、心血管疾患、肥満が重症化因子として知られています。関節リウマチを含む膠原病の患者さんの中にもこういった因子を持っている方はおられますので注意は必要です。
COVID-19に対する予防方法は国ごとの指針に従うこととなっております。日本国内においては、下記のことが推奨されています。
上記の他に、膠原病の患者さんに関する特別な予防方法はありません。
肺炎球菌とインフルエンザに関しては、ワクチン接種を考えてください。シクロフォスファミドおよび副腎皮質ステロイドを使用されている患者さんでは、ニューモシスチス・ジベロッティ肺炎(カリニ肺炎)の予防を検討する必要があります。
COVID-19にかかっていない場合、関節リウマチを含む膠原病のコントロールに必要な治療を続けてください。減量・中止によって病気の悪化する可能性があること、COVID-19の病態に炎症伝達物質や免疫が関与していると想定されていることを考慮する必要があります。以上から、抗リウマチ薬、生物学的製剤、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤は、原則として同じ用量で継続してください。
痛み止めは通常通り使用可能です。一時COVID-19の重症化に関連するかもしれないと考えられましたが、英国での検証で重症化への関与は否定されています。
ただ、痛み止めや生物学的製剤が発熱などの症状を抑えた結果、COVID-19の症状がわかりにくくなることがあります。
薬剤の中には、重症化を抑えるのではないかと考えられている薬剤もあります。
現在日本国内でCOVID-19にかかった場合、入院することが原則となっております。膠原病の方がCOVID-19になった場合、リウマチ医が診療チームに対して薬剤を含む治療への助言を与えることを、欧州リウマチ学会は推奨しています。
COVID-19では軽症から重症まで幅広い病状が存在し、時にその病状は急激に変化します。リウマチ医が診療チームに参加できる場合、時々の状況に応じて、薬剤の継続、中止を判断することになりますので、そのアドバイスに従ってください。
7月8日までに2026人の方に県下保健所においてPCR検査が実施されています。3月22日に1例目の感染が確認され、7月8日までに28人の方の感染が確認されています。うち1名が人工呼吸器の装着を要しましたが、その方を含め26名は無事退院されています。ほとんどの方は県外ないしは家庭内での罹患と考えられています。ただし、少数ながら感染者への濃厚接触歴や県外への移動歴が確認されていない方もおられますので、県内での感染の可能を考えた対策は必要です。
現時点ではCOVID-19に対する適応をもった薬剤はありません。国内では他の病気に適応がある薬剤を、各施設で必要な手続きを行った上で適応外使用しています。
抗ウイルス薬としては、エボラ出血熱治療薬であるレムデシビルが海外において、インフルエンザ治療薬であるファビピラビルが国内外で、それぞれ臨床試験中です。
シソクレニドは気管支喘息治療薬ですが、感染早期~中期あるいは肺炎初期での使用が考慮され、日本において観察研究が行われています。
副腎皮質ステロイド、IL-6阻害薬、Jak阻害薬は、重症化を抑えることができるのではないかと考えられ、臨床試験を行われていますが、現時点で有効性の確認はなされていません。
ヒドロキシクロロキンは試験管レベルでコロナウイルスの増幅を抑えることが証明され、一時ヒトにおいても有効性を示す論文が発表されました。結果、米国でCOVID-19に対する使用が認可されましたが、すぐに論文が撤回され認可も取り消されています。
以上の情報は下記のWebサイトならびに文献から引用しております。
情報の正確さには万全を期したつもりですが、COVID-19に関する知見は日々蓄積され見直されておりますので、疑問点がございましたら都度主治医にご確認ください。
岡山市立市民病院 リウマチセンター
副センター長 若林 宏
《参考文献ならびにWebサイト》