関節リウマチには、高血圧症や糖尿病などのように、はっきり効果が確立された栄養食事療法はありません。大切なのは関節リウマチにより併発しやすい筋肉量低下、貧血、骨粗鬆症、肥満を予防することです。
今月のリウマチ教室瓦版では、管理栄養士よりそれらの栄養食事療法の原則を順に説明させていただきます。
関節リウマチは、全身の多くの関節に慢性炎症が持続し、さらに微熱、倦怠感、貧血などの関節外症状も呈する自己免疫性の全身性炎症性疾患です。身体のエネルギーを多く消耗してしまう疾患であるため、エネルギーの確保に努めましょう。そして、3食規則正しく栄養バランスの良い食事をしましょう。
① 穀物、野菜、肉、魚、卵、大豆製品、乳製品、果物などから1日30品目以上を目標に食べましょう
② 野菜は1日350g以上を目標に食べましょう(毎食100g以上を目安に:生野菜は両手いっぱい、加熱すると片手いっぱい)
③ 食塩相当量は1日男性7.5g、女性6.5g未満にしましょう(高血圧症および慢性腎臓病の重症化予防のための食塩相当量は男女とも1日6g未満)
関節リウマチになると、関節の炎症や発熱によってたんぱく質の分解が活発になります。また、痛みで食欲が低下し、運動量が減ってしまいます。このようなことが影響し、全身の筋肉量が減少する傾向があります。健康な筋肉を保つためには、筋肉をつくるのに不可欠なたんぱく質を毎食摂るようにしましょう。
・良質なたんぱく質を多く含む食材
豚肉、鶏肉、魚、豆腐、納豆、牛乳、チーズなど
多価不飽和脂肪酸には、心血管保護作用以外に抗炎症作用があることが知られています。そのため、関節の炎症を抑える効果が期待できます。
・多価不飽和脂肪酸を多く含む食品
青魚、カニ、牡蠣、えごま油、なたね油など
関節リウマチが長期化すると貧血も起こりやすくなります。貧血予防には、鉄分を積極的に摂ることでよい効果が期待できます。また、鉄分はビタミンCと一緒に摂ることで吸収率が高くなります。
・鉄分を多く含む食品
レバー、かつお、あさり、ひじき、ほうれん草など
・ビタミンCの多く含む食品
赤ピーマン、黄ピーマン、ブロッコリー、カリフラワー、果物など
関節リウマチは骨の破壊が起こり、骨粗鬆症を併発しやすくなります。そのため、骨をつくるカルシウムを豊富に含む食品を摂ることが大切です。また、カルシウムの吸収を助けるビタミンDや、骨の形成に重要な働きをするビタミンKを一緒に摂ることが効果的です。
・カルシウムを多く含む食品
牛乳、チーズ、高野豆腐、小松菜、水菜など
・ビタミンDを多く含む食品
鮭、サンマ、カツオ、いわし、キノコ類など
・ビタミンKを多く含む食品
納豆、春菊、ほうれん草、小松菜、ニラなど
※血栓予防のためにワーファリンを服用している方は、ビタミンKを多く含む食品の摂取を控えましょう。
栄養をつけるために、ごはんやパン、菓子類などの糖質に偏って摂りすぎたり、カ ルシウムの摂取に牛乳を飲みすぎると、肥満につながる恐れがあります。過食により体重が増加すると、足腰の関節に負担がかかり痛みが出る可能性があります。そのため、食べすぎに注意し体重管理をしましょう。
朝のこわばりや身体に痛みがあるときは、無理せず手間を省く調理の工夫も必要です。簡単に調理ができるカット野菜やレトルト食品、冷凍食品などの既製品、缶詰や乾物などを使用し、手間をはぶくようにしましょう。また、固い野菜の調理に困った場合は、茹でるか電子レンジを使用し、少しやわらかくしておくと扱いやすくなります。
ステロイド薬は長期間使用すると、副作用を引き起こす恐れがあります。そのため、副作用による疾患に合わせた栄養食事療法が必要となります。
<ステロイドの副作用>
・食欲増進(減退)
・糖尿病
・脂質異常症
・高血圧症
・骨粗鬆症
・感染症など
◎食欲増進(減退)、糖尿病、脂質異常症・・・体重コントロールをしましょう
【理想体重=(身長m×身長m) ²×22 】
◎高血圧症・・・食塩制限とエネルギーコントロールをしましょう
◎骨粗鬆症・・・カルシウム、ビタミンD、ビタミンKをしっかり摂りましょう
◎感染症・・・消化の良いものを中心に食べましょう、生ものは食べすぎないようにしましょう
岡山市立市民病院 栄養科 板野 裕美
《参考文献》
1. 平澤玲子、佐藤和人:関節リウマチの栄養・食事療法.日本病態栄養学会誌9(1):11-19.2006
2. 中村丁次:栄養食事療法必携 第4版. 医歯薬出版株式会社.2020
3. 伊藤貞嘉、佐々木敏:日本人の食事摂取基準 2020年版. 第一出版