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vol.3 内分泌センター 知ることで救える命 <内科×外科クロストーク>

外科・池田医師と内分泌内科・小松原医師による対談企画、前回はそれぞれの専門分野について教えていただきました。最終回では内分泌疾患の発見と予防について、内分泌センター設立への思いなど詳しくお伺いします。

 

内分泌疾患には、緊急性の高いものもあるのでしょうか。

小松原(以下小):内分泌疾患の急性疾患と言うと、クリーゼ=緊急症と呼ばれる疾患です。急に血圧が高くなる高血圧クリーゼ、カルシウムの値が上がる副甲状腺クリーゼなどがあります。どれも特殊な状況になるとホルモンが暴走する疾患で、内分泌疾患が関わっていることが多いです。

例えば若い方が脳出血を起こして、動脈瘤は見つからないけれど血圧が高く、ホルモンの異常が原因だったという症例。こういうケースでは、内分泌疾患を疑わなければ原因が判明せず、再び脳出血を起こす可能性があります。

市民病院の場合は救急センターがあるので、急性期はそこで初期対応をして、内分泌疾患が疑われれば内分泌内科が介入していきます。

画像:救急センター

救急センターは24時間365日体制で稼働しています

急性期から専門性の高い治療が受けられるというのは、患者さんにとって大きなメリットですね。

小:そうだと思います。内分泌内科は内分泌疾患が疑われる救急患者さんに対して、ホルモンの検査をして診断をする以外にも、関わっている他科の先生方に薬の指示を出したり、起こりうるトラブルについて事前に共有したりと細かな調整も行います。そうやって診療科の垣根なく相談できる環境があるということは、本当にありがたいです。

内分泌疾患だとわかったらそのままうちの内分泌内科に通院していただけるし、専門性の問題で対応できないということは少ないと思います。内分泌疾患でより高次の医療が必要となれば、岡山大学病院と連携することになります。

 

明確な診断名が付くことは、患者さんのその後の生活においても重要なことですね。

小:そうですね。あなたの疾患はこれです、この薬を飲み続けてくださいねと専門医が診断を付けて紹介状にバシッとスタンプしておくことで、市民病院での通院が終わってかかりつけに行くようになっても引き継いでいけるので、リスクが大きく軽減します。

 

最後になりましたが、内分泌センター設立への思いと目的を教えてください。

池田(以下池):一番の目的は内分泌疾患という存在の周知です。診断名が頭に浮かぶかどうかという病気なので、患者さんだけでなく、医師の方でも原因がわからず困っている方はたくさんいます。尿路結石や骨粗鬆症で長く治療をしているけれど、実はその原因が内分泌疾患であると判明していないという方もいると思います。

例えば先ほど小松原先生がお話しされた若い方の脳出血、それも内分泌疾患の知識があれば防げますよね。

小:そうなんですよ!防げるんです!健康診断で高血圧を指摘されて、内分泌内科に紹介されてきて内分泌疾患が判明するという方もたくさんいるので、知っていれば防げる可能性が高いです。知ってさえいれば、重篤な症状が現れる前に助かるかも知れないんです。

脳出血を起こす前に薬を飲んで血圧を下げる治療で済めば・・・池田先生の手術の話と同じで、「大したことなかったな」で済めば、その方がいいですよね。
そういう疾患なので、院内、院外ともに、見つけ出せるように啓蒙していきたいと思っています。

池:市民病院は公的病院ですから、そういうことを周知・啓蒙していく責任と義務があります。市民の方にも、地域の医療機関の方にも、伝えていかなければならないと思っています。

小:市民病院では、内分泌疾患の可能性が少しでもあれば、基本的に内分泌内科で診察します。調べてみて違ったとしても、「内分泌疾患ではない」と否定することでわかることもあるので、無駄ではありません。

内分泌疾患はホルモンの異常がなくても起こりうる症状が多いですが、それが内分泌ホルモンの異常なのかどうかを診断し、できるだけ困らず快適に暮らせるように調節することが内分泌内科の役割だと考えています。

間口を広くしつつ、より専門性の高い診療を行っていきたいと思いますので、気になる方はまずはかかりつけの先生に相談してみてください。医療機関の方も、お気軽にご相談いただければと思います。

 


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2022年 内分泌センターを開設しました!

 

お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 外科 医師 池田 宏国(いけだ ひろくに)

※役職は掲載時のものです。変更になっている場合がありますがご了承ください。