がん薬物療法による副作用対策を専門とされている鍛治園先生にインタビュー取材を行いました。鍛治園先生の専門領域や昨今のがん治療の傾向についてお伺いしました。
がんの治癒または進行の抑制、がんによる身体症状を緩和するために行われます。内服薬や注射、点滴などで薬を体内に取り込みます。薬の種類によって効果や副作用は異なります(脱毛、嘔吐、口内炎など)。また、薬物療法による副作用を和らげるために対策することを支持療法といいます。
先生のご専門について詳しくお聞かせください。
がんの患者さんに対する薬の副作用対策(支持療法)が専門です。この薬を投与したら、どの時期にどのような副作用が出るからこういう対応が必要だとか、患者さんには気をつけてほしいことやできたら避けてほしいことをお伝えしています。
最近、仕事や子育てをしながら治療をされている患者さんが増えてきていると聞きます。先生も実際にそのような患者さんとやりとりをされることが多いのでしょうか。
元々は乳がんの患者さんとやりとりをすることが多かったんです。
一番印象に残っているのは、妊婦検診で乳がんが見つかった患者さんへの対応です。妊娠中に抗がん剤を投与するのは、時期によって投与できるかどうか判断が必要ですし、そもそも投与ができない薬もあります。それらを医師と相談しながら対応したのは今までで一番苦労しましたし、印象深いエピソードだと思います。
日常生活をしながらがんの治療を受けている患者さんは最近増えているのでしょうか。
日常生活をしながら、外来で治療できると認知をされている方はここ10年くらいで増えてきたかなという気がします。
最近は特に抗がん薬が高価で、お金のかかる治療ばかりです。一昔前は、がんになったら「治療に集中しなくてはいけない」とすぐに仕事を辞められる患者さんが多かったんです。今でも「仕事を辞めて治療に集中しようと思う」とおっしゃる患者さんはいらっしゃいます。ただ、辞めるのではなくて休職だったり、いろいろな道があるということをお伝えするためにソーシャルワーカーにつないだりしています。
最近「緩和ケア」「緩和療法」という言葉をよく耳にするようになりました。緩和ケアをするにあたって、薬剤師としてどのようなことを意識して患者さんに対応されていますか。
緩和ケアというと、いまだに患者さんは「もう最期でどうしようもない」「がんを治すための方法がないから緩和ケアをするんだ」「もう医師からも見放されたんだ」と思われる方がまだまだたくさんいらっしゃいます。さらに、使う薬が麻薬だったりすると、薬に対して強く抵抗を感じる方もいらっしゃいます。そうではなく「“日常生活を終わるため” ではなく、“いつも通りの日常生活を送るため” に使う薬なんだ」というところを患者さんにも強調しています。

笑顔でインタビューに応じる鍛治園先生(※撮影時のみマスクを外しています)
次回は当院薬剤部の新たな取り組みについてお聞きします!
お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 薬剤部 鍛治園 誠
※役職は掲載時のものです。変更になっている場合がありますがご了承ください