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vol.2 内分泌センター それぞれのスペシャリスト<内科×外科クロストーク>

外科・池田医師と内分泌内科・小松原医師による対談企画、前回は内分泌センターの具体的な連携体制について教えていただきました。第2回はそれぞれの専門分野について詳しくお伺いします。

 

「内分泌」という言葉にあまり聞き馴染みのない方も多いと思うのですが、新しい分野なのでしょうか?

池田(以下池):内分泌疾患はすごく裾野が広くて、困っている患者さんもとても多いですが、あまり世の中に認知されていないという現状があります。ただ、内分泌ホルモンは人間の根本的なもので、概念としてはかなり昔からあります。

小松原(以下小):ホルモンが発見されたのは1900年代初頭ですね。「血液の中に何かコミュニケーションを取るものが流れているぞ」と、インスリンをはじめ様々なホルモンの存在に気付いて研究してきたのが内分泌内科です。今では他の分野でも細胞内や遺伝子のコミュニケーション方法の研究が盛んになっていますけど、内分泌内科は昔からそういう視点を持って治療してきたと自負しています!

 

小松原先生は、今回の対談を依頼した時に「内分泌のことならいくらでも話せます」と言われていたのが印象的でした。この道に進むきっかけはあったのでしょうか?

小:大学で受ける内分泌の授業って、眠いんですよ(笑)難しくて。僕は正直言って苦手でした。でもいざ診療に携わってみると、数字を組み合わせて理論立てて考えて、突き詰めて答えを導き出していく工程が納得できるというか。性格に合ってたんですね。

それから、内科では珍しく老若男女問わず幅広い年齢層の患者さんと関われること、特定の臓器だけでなく全身を総合的に診られることも魅力です。

芸術家やエンターテイナーは「ゼロからプラス」を創り出すことができますが、医療は「マイナスをゼロに近づける」ことが目標なんですよね。内分泌内科は、例えば足りないホルモンを補充することで限りなくマイナスをゼロに近づけることができます。そういった医療の本質的な部分に触れられるところもいいなと思っています。

画像:小松原基志先生

内分泌内科愛を語る小松原先生

 

池田先生は、どのようにして外科の道に進まれたのですか?

池:僕は救急に長くいて、外科は必要な技術だったので。いろいろありますが、長くなるので今回はいいです(笑)。臓器で言うと、甲状腺もやりますが、消化器外科も呼吸器外科も何でもやります。

 

オールマイティーなんですね。前回、小松原先生が「創(きず)が小さい」と言われていましたが、どのような手術をされているのでしょうか。

池:左右ともに10cm、合わせて20cmにも大きくなってしまった甲状腺を、5cmぐらいの創部から摘出できることもあります。経過が良ければ、術後3・4日程で退院されます。

画像:甲状腺の小切開手術

甲状腺の小切開手術

技術的なことを言えば簡単な手術ではないんですが、外科医が必死で難しい手術をしたとしても、患者さんには「大したことなかったなぁ」と思われるくらいが成功です。

 

創が小さいと、患者さんの負担が小さいだけでなく、美容的なメリットもありますね。

池:そうですね。バセドウ病や腫瘤が原因で甲状腺が大きくなってしまった方では、整容性に悩まれて手術を希望されるかたもおられます。
また、整容面のことが気になり、病状的に手術が必要な状態であっても、どうしても手術治療に踏み出せない方もおられます。こういった場合、手術のために首に大きな創が残ると、他の症状が改善したとしても気持ち的に救われないところがあるかとも思います。ですからやはり創は出来る限り小さな方がいいかなと考えています。

※整容とは:疾患の症状や手術による患部の切除などで引き起こされる、身体の創や凹みなどの容貌の変化を整えること。

小:例えば首が詰まった服だと腫瘤が目立つんですけど、仕事柄そういう服を避けられない人もいます。だからそれがなくなってすごく喜んでいる方は多いですよ。手術の創は鎖骨のあたりなので、小さければ、ワイシャツなんかだと全然見えません。

創が残るから手術はしたくないという方もいますが、そうなると放射線治療が選択肢になります。ただ、放射線治療は確実にホルモンが下がらなかったり、目が腫れることがあったり、逆にホルモンの値が高くなったりすることもあって、それなりにリスクがあります。

手術はそれ自体はリスクが高いものですが、うまくいけばその後はすごく安全になります。それで創も小さいとなると、メリットは非常に大きいと思います。患者さんにはそういう話をした上で、外科でも説明を聞いていただいて、やむを得ない事情がなければ手術を選択される方が多いです。

 

外科ではどんな説明をされているんですか?

池:そこはシビアに、どういうリスクがあって、術前の準備も含めてどういう管理が必要で・・・と事実をお伝えします。可能性で言うと何パーセントかと聞かれることもありますが、実際には「その事態がご本人の身に降りかかるか否か」の二択じゃないですか。ご自身が納得できるかどうかに尽きます。

 


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次回は内分泌の疾患の発見と予防について、内分泌センター設立への思いなどをお伺いします。

2022年 内分泌センターを開設しました!

 

お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 外科 医師 池田 宏国(いけだ ひろくに)

※役職は掲載時のものです。変更になっている場合がありますがご了承ください。