“胆道・膵臓”と聞くと、有名人が膵臓がんで亡くなられたことを思い出す方が多いかもしれません。
膵臓がんはがんの部位別罹患数でいうと男性は6番目、女性は5番目(2020年時点)1)に多く、今や珍しい病気ではありません。
しかし、どのような病気か詳しく知る機会は少ないのではないでしょうか。
また、膵臓は胆道と深い関係があります。
今回は胆道・膵臓疾患を専門とされている加藤先生にインタビューを行い、胆道・膵臓(以下、胆膵)の働きや病気についてお伺いしました。
膵臓がんは、がんの部位別統計によると死亡数が男性4位、女性3位というデータがあります(図1,2)。
また、全体的に増加傾向にあり、その理由としては日本人の生活習慣の変化などが関係しているのでしょうか。
はっきりとした原因というのは正直わかっていないんです。食生活とか生活習慣が一番関わっているのではないかと言われている中で、様々な研究が進められていますが、なかなかわかってないというのが実情ですね。
例えば、胃がんであればピロリ菌が原因。肝がんであれば、主にB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスが原因という、一対一的な原因がある病気はわかりやすいですが、おそらく膵臓がんは一対一の原因はないのではないかと言われています。
ただ、後年、膵臓がんは○○菌、あるいは○○ウイルスが原因でした、と判明する可能性もなくはないと思います。実際に、細菌やウイルスを膵臓がんの原因と考えて調べている人はたくさんいますが、なかなか解明されていないのが現状です。
膵臓がんに罹患する方というのは、先天的、あるいは後天的に何かしらの素因を持っていて、そこに食べ物や環境などの要因が加わることで膵臓がんになる可能性もあるかな、と考えていますが、難しい分野だと思います。
※グラフ「その他」は、口腔・咽頭、喉頭、皮膚、乳房、膀胱、中枢神経系、悪性リンパ腫、その他のリンパ組織・造血組織及び関連組織の悪性新生物、その他の悪性新生物の合計
※グラフ「その他」は、口腔・咽頭、喉頭、皮膚、膀胱、中枢神経系、悪性リンパ腫、その他のリンパ組織・造血組織及び関連組織の悪性新生物、その他の悪性新生物の合計
がんは遺伝が関係しているということも聞きますが…。
消化器のがんの約10%は遺伝が関係あると言われています。ただ、人口の半分はがんに罹患する時代ですから、同じ家系で消化器がんになった家族が1人いるからといって過度に恐れる必要はないと思います。例えば、胃がんになったご家族が複数人おられる場合は、定期的に検査を受けることをお勧めします。
胆膵に関して、当院にはどのような症状や病気で来院される患者さんがいらっしゃいますか。
当院では腹痛の訴えで救急を受診される患者さんが多いです。その中でも急性膵炎や胆石の発作など、日常の診療で頻度の高い病気で来られますね。
その他、慢性膵炎があります。これはお酒をたくさん飲まれる男性が多いですね。もちろんお酒を飲まない人も慢性膵炎になったりします。急性膵炎もお酒が原因だったり、胆石が原因だったりいろいろ原因はありますが、一般的な病気ですね。
胆膵はセットで捉えられている臓器のように思いますが、それはなぜでしょうか。
解剖学的においても症状の面においても胆膵は切っても切り離せない臓器です。というのも、胆管は膵臓内を経由し、十二指腸に続いています。
また、胆石発作時、場合によっては胆石性膵炎が起こる可能性があります(胆石が原因で起こる膵臓の炎症)。膵臓がんの場合でも、胆管の処置が必要になることもあります。胆道がんと膵臓がんは、同じ術式で手術をする場合もありますし、抗がん剤で治療する際、同じ薬を使用することもあります。これらの理由から胆膵は切っても切り離せない存在です。
胆膵のそれぞれの働きを教えてください。
胆道
胆管や胆のうをまとめて胆道と言い、胆汁が通る道です。胆汁は脂肪を消化するための液体で、肝臓で作られます。その後、胆のうに入り一時的に貯えられます。体内に取り入れた食べ物が十二指腸に到達すると、胆のうは筋肉を収縮させ、胆汁を押し出します。胆汁は総胆管を通り十二指腸に流れ出ます。
膵臓
膵臓のはたらきは、主に2つあります。
1つ目は膵液を作る働きです。膵液には三大栄養素と言われる炭水化物、脂質、たんぱく質を分解する消化酵素が含まれています。
2つ目はホルモンを作る働きです。血液中の糖分を減らすインスリンや逆に糖分を増やすグルカゴンを膵臓で作っています。インスリンとグルカゴンは血液中の糖分のバランスを整える働きがあります。
例えば、膵臓がんになり、手術で膵臓を全部摘出することがあっても通常は命を落とすことはありません。ただ、インスリンを常に補充し、血糖値のコントロールを行う必要があります。先ほども述べたように、膵臓は膵液やホルモンを作る役割を担っています。可能であれば膵臓を完全に摘出せず、残すことが大切だと言われています。
胆石は尿管結石のように自然に出ていくことはないのでしょうか。
全くないわけではないですが、解剖学的に出て行きにくい構造になっていて、十二指腸の出口のところで石が引っかかるようになっています。すると、腹痛などが起きます。
胆石の大きさによりますが15mmくらいであればほとんど内視鏡で取ることができます。20mmを超えてくると、衝撃波を当てたり、特殊な治療が必要になってきます。内視鏡で石を取るのは、胆膵の内視鏡の一番の醍醐味と言えます。
次回は胆膵の内視鏡検査についてお聞きします!
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