前回はこれまでの歩みを中心にお話をお伺いしました。第2回は膠原病との付き合い方、セルフケアの大切さについてです。
膠原病のセルフケアについて具体的にはどんなことをお伝えしているのでしょうか。
まず、日常生活の過ごし方。規則正しい生活をしてしっかり睡眠をとる、感染予防、無理をしないことなどです。
次に、服薬管理。決められた量、決められたタイミングで薬を飲むことです。
それから、知識を持つこと。何らかの症状が出た時にその病気に関係するものなのではないか、薬物を使っている場合はそれに関係する副作用が出ているのではないかをある程度判断できるようになること、そして、そういう時に病院に連絡することです。
病院に連絡することがセルフケアにつながるんですか?
セルフケアと言っても、すべて一人でやらなければいけない訳ではないんですよ。
患者さんには困ったことがあったらまず電話してくださいとお伝えしています。電話であれば受診するよりもハードルが低いと思いますので、しっかり活用していただきたいです。お話をお伺いして必要と判断すれば受診をご案内しますので、ご安心ください。
自分の病気について知識をつけるためには何をしたら良いのでしょうか。
市民病院では、まず診察時に詳しくご説明した上で、院内で作成した冊子やリウマチ教室などの支援ツールの利用についてご案内しています。
また、今はインターネットで情報を得ることもできますので、ぜひうまく活用していただきたいです。私たちはそれをより正しい方向に導いて、うまく病気と付き合うことができるように支えていきます。
セルフケアに自信がない方への支援はあるのでしょうか。
リウマチに関しては2泊3日の教育入院を行っています。
内科医、整形外科医、看護師、薬剤師、理学療法士、臨床検査技師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーが病気の説明、日常生活での運動、食事など、病気とうまく付き合っていくためにサポートします。
病気と向き合い学ぶ上で、患者さんに知っておいてもらいたいことはありますか?
医者も研修医からはじまって、専門の道に進んで、経験を積んで・・・と段階を踏んで一人前になっていきます。
患者さんにも同じことが言えて、最初は何の病気かすらわからないところから、診断がついて、薬を飲んで良くなっていって、症状をコントロールして落ち着いた状態を保って・・・という流れの中で、だんだんと病気や薬の知識を得ていくものです。
そして最終的に「ここまでは大丈夫かな」とか「ここからは病院行った方がいいかな」とか、ある程度のことが自分で判断できるように、焦らず段階的に知識を蓄えていっていただければと思います。
正しい知識を持っていると限られた診察時間でも必要な情報を効率よく得ることができますし、それが自分自身を救うことになります。
膠原病は良くなる病気だということをよく知って、前向きに治療に取り組んでいただきたいです!
文字通りの「難病」から、今は良くなる病気になったんですね。
そうですね。病気のメカニズムの解明が進み、新しい薬がどんどん出てきていますし、検査機器も進化して種類も増えました。市民病院には検査機器が揃っていますから、患者さんにとって良い環境だと思います。
薬のことや費用のことなど、病気そのもの以外のお困りごとにも、薬剤師や医療ソーシャルワーカーなどの専門知識を持ったスタッフがご相談に乗りますよ。
長く付き合っていく病気ですが、地域の診療所でも診てもらえるのでしょうか。
それは患者さんと診療所の先生のニーズや環境によります。市民病院も参加している「OKAYAMAリウマチネットワーク」という医療施設間ネットワークから、対応可能な医療機関をご紹介させていただくことも可能です。
最後に、今後の展望を教えてください。
まず、昔から力を入れている人材育成です。今後は医師だけでなく、看護師や薬剤師など他の医療スタッフにもしっかりと教育を行い、より確実な対処ができる体制を作っていきたいと思います。
それから、膠原病を診られる医療機関は昔より増えましたが、患者さんの数から言って市中病院にもリウマチセンターや膠原病内科の役割を果たすところは絶対に必要だと思います。
膠原病では肺炎などの急性疾患を併発することがあるので、救急もしっかりしていて、すぐに対処して入院できる環境が用意されていることがベストです。その点で市民病院はサポート体制が整っていますから、今後はこの環境をより充実させていきたいですね。
お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 膠原病・リウマチ内科 医師 若林 宏(わかばやし ひろし)
※役職は掲載時のものです。変更になっている場合がありますがご了承ください。