前回は鍛治園先生の専門領域や昨今のがん治療の傾向などについてお話をお伺いしました。第2回は薬剤部部長である松山哲史先生を交えて当院薬剤部の新たな取り組みについてお伺いしました。
当院でも外来化学療法室がありますが、鍛治園先生もその外来で患者さんとやりとりをすることはあるのでしょうか。
鍛治園(以下鍛・写真左):当院では今年の6月から「薬剤師外来」を開始させていただいています。日常生活に支障があるような患者さん、例えば吐き気や口内炎など、副作用による症状についてお話を伺います。その内容を主治医にお伝えして、支持療法といった副作用に対する薬の提案をしています。
松山(以下松・写真右):薬剤師外来の患者さんは何人くらいでしたっけ?
鍛:60 人くらいです(2024年10月時点)。
松:患者さんが外来に来られて採血して結果が出るまで、どうしても1時間くらい空きますよね。その間に薬剤師外来として患者さんと面談をしてくださっています。
これは当院の薬剤部として新たな取り組みなのですが、岡山大学病院でも薬剤師外来を運営された経験のある鍛治園先生を中心に調整して、立ち上げていただきました。医師からも非常に好評で、患者さんにも浸透していくと良いなと思います。

外来化学療法室 出入口

外来化学療法室 内部
患者さんの気持ちとしてはかなり心強い存在ではないかと。
鍛:そうだといいのですが。採血の結果が出るまで待っているだけだった時間にお話しさせてもらっているので、帰る時間が遅くなったりはしないですから。基本的には患者さんにネガティブなイメージは持たれていないのではと思っています。
外来で接する患者さんの表情などからどんなことを感じますか。
鍛:面談の 1 回目は「何なんだろう」という気持ちがあったと思うんですよ。薬剤師と話をすることはないので。ただ、月に1~2回のペースでお会いするのを2~3カ月繰り返していると、患者さん自身も言わなきゃいけないことがだんだん分かってきているのかなという気がします。「こんな症状が出て困ったよ」など少しずつ話してくれるようになっています。
松:患者さんとコミュニケーションをとることによって、薬の副作用による患者さんの体調の変化に薬剤師が気づくことができるきっかけになるといいですよね。

抗がん薬やそれによる副作用について説明する鍛治園先生
がんを治療するにあたって、薬物療法を受けることに不安や抵抗がある方々にメッセージがありましたら、お聞かせください。
鍛:薬物療法に対して不安に思われる患者さんはまだまだ多いです。一昔前はがんになると日常生活ができなくなり、ベッドの上で過ごすことになり、副作用が原因で嘔吐などしてしまう…ドラマなどでもそういう描写にされていたので、ネガティブなイメージが強いと思います。ただ、今お話ししたように抗がん薬が発達すると同時に、副作用に対する対症薬の発達がすごいので、患者さんが嘔吐する頻度は昔より少なくなりました。
副作用に対応する方法はさまざまあります。抗がん薬の効果が見込めていて、かつ主治医から「やってみるべきだ」と勧められるような患者さんにおいては、トライしていただく。そこに出てくる副作用に対して、さまざまな業種の職員と協力しながら対応していくので「一緒にがんばっていきましょう」と伝えたいです。
お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 薬剤部 鍛治園 誠
※役職は掲載時のものです。変更になっている場合がありますがご了承ください