はじめに
関節リウマチの患者さんは、関節の痛みや関節破壊の進行による手足の関節可動域制限や手の変形、握力低下などの影響で、食事や整容、更衣などの日常生活動作や家事動作が一人では行いづらくなってきます。
「2020年リウマチ白書」では、現在不安なこととして、「日常生活動作の低下」との回答が66.0%に及び、また、60.1%の人が自助具を使用しています。日常生活の様々な場面で自立を助け、可能な限り自身で容易に行えるように補助し、日常生活をより快適に送れるよう支えるのが自助具です。
そこで今回は、関節リウマチの患者さんがよく使用される自助具について紹介します。
筋力低下に対する自助具
●太柄スプーン等
スプーンの柄などの持ち手を太くすることで、弱い筋力でも把持しやすくなります。太柄スプーンとして販売されている商品もあります。持ち手に巻いたり、装着してグリップを太くする商品もあり、鉛筆やペン、スプーン・フォークに装着することで食事や字を書くことが行いやすくなります。
●らくらく実感ペットボトル&缶オープナー
手の変形や握力低下でペットボトルのキャップを開けることができない時に使用するペットボトルオープナーは関節リウマチの患者さんに多く使われる自助具です。『らくらく実感ペットボトル&缶オープナー』 (ダイイチ)は、ペットボトルとプルトップを開けることができます。
当院の売店でも購入できます。
●マルチキャップ&プルトップオープナー
マルチキャップ&プルトップオープナー『eg』(アンリミット・ジャパン)はゼリードリンクや目薬といった径の小さなキャップにも対応可能です。
●UDグリップ包丁
『UDグリップ包丁』(ウカイ利器)はハンドルの向き・角度が調整できるので、手首への負担が軽くなり、刃に力が伝わりやすく、食材が切りやすくなります。
リーチ低下に対する自助具
●着衣エイドリーチャー(左)、長柄ブラシ(右)
肩や肘の可動域制限で遠くに手が届かない、人工股関節全置換術後の脱臼防止や股関節・膝の可動域制限で床に手が届かない等の場合にはリーチャーを使用します。
低下しているリーチを補うために、様々な長柄のものがあります。たとえば、更衣動作を補助する着衣エイド、整髪を助ける長柄のブラシ、入浴時に体を洗うための洗体ブラシなどがあります。孫の手もリーチャーとして使用できます。
自助具の作成
●点眼の自助具、ソックスエイド、マスク装着の自助具
100円ショップ等の安価なもので自助具を作成することもできます。患者さんの状態に応じて調整できることもメリットの一つです。
点眼用の自助具は割りばしと消しゴム、輪ゴムで作成したものです。手が目元まで上がらなくても点眼が可能になります。ソックスエイドはポリプロピレンのシートや100円ショップのまな板シートを使用して作成しました。インターネットでもいろいろな型紙を紹介しているサイトがあるので、自身に合わせたものを作ることができます。マスクの着用が増えていますが、そのための自助具も100円ショップのもので作成できました。
自助具の入手方法と選択のポイント
市販の自助具は、福祉用具や介護用品を販売している会社やリウマチ友の会などで入手できます。また、100円ショップやインターネットなどでも様々な便利商品が販売されています。関節リウマチの患者さんにとって使いやすい商品も多いですが、実際に試して本当に使用しやすいかを確認してから購入しましょう。
参考文献
- 石原 義恕, 今野 孝彦:これでできるリウマチの作業療法, 南江堂, pp95-98, 2007
- 神崎 初美, 三浦 靖史:最新知識と事例がいっぱいリウマチケア入門 改訂2版, pp188-192, 2023
- 林 正春:関節リウマチ治療における作業療法の有効性:Monthly Book Medical Rehabilitation No.288, 全日本病院出版会, pp24-36, 2023
お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 リハビリテーション技術科作業療法士 越智 麻子
市民病院HP リウマチセンター当院リウマチセンターについては、こちらからご覧ください。
市民病院HP 整形外科当院整形外科については、こちらからご覧ください。
市民病院HP リウマチ教室(記事一覧)リウマチ教室の記事のアーカイブもございます。ぜひご覧ください。
※役職は掲載時のものです。変更になっている場合がありますがご了承ください
市民病院で20年以上にわたり行ってきたリウマチ教室。新型コロナウイルスの影響により、2020年7月よりWeb版・瓦版(院内での資料配布および掲示)と形態を変え、皆様のリウマチ療養にお役立ていただくべく、引き続き情報を発信しております。
※更新日が古いものは最新の知見と異なる場合がありますのでご注意ください。