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vol.1 自ら切り拓いてきた専門の道 膠原病・リウマチ内科 医師 若林 宏

「膠原病」と聞くと「難病」「珍しい病気」というイメージを持つ方も多いかも知れません。しかし、実際は診断に至っていない方も含め100万人規模の患者さんがいると言われています。難病に指定されている病気も多いものの、近年新しい治療薬の開発などで飛躍的に進化を遂げ、今では日常生活を守りながら病気と付き合うことが可能になってきています。
市民病院では2015年に膠原病・リウマチ内科が創設されました。当初から中心となって患者さんの診療に当たってこられたのが若林宏先生です。

 

膠原病とは?
「膠原病」とはひとつの病気の名前ではなく、例えば「心臓病」のように、共通する性質を持ついくつかの病気の総称です。「リウマチ性疾患」などと言い換えられることもあります。全身の臓器に関わり、さまざまな病気がありますが、基本的には自己免疫疾患に該当するものが膠原病内科の範疇です。

 

若林先生が膠原病を専門として選んだきっかけを教えてください。

浜松医科大学在学中に、臨床研修実習で「強皮症」という膠原病の患者さんと出会いました。

当時の膠原病はまだまだ治療や診断が充分にできない文字通りの「難病」で、ステロイドくらいしか有効な治療法がありませんでした。こんな風に困っている患者さんを救う方法はないんだろうかと興味を持ったことがこの道に進んだきっかけです。

 

当時、膠原病を専門にされている方は珍しかったのでは?

そうですね。卒業後は地元である岡山に帰郷して岡山大学病院に入局し、膠原病の診療に携わるようになったのですが、当時は膠原病を専門にしている方が岡山にはほとんどいませんでした。ですから、それはそれは苦労を重ねてきました(笑)。

膠原病の一種であるリウマチに限ってはその頃から専門家の方もおられて、現在の市民病院副院長である臼井先生もそのお一人です。ただ、リウマチに限定せず「膠原病全体」を診ているところは市中病院にはなかったので、大学病院に患者さんが集中していましたね。

イメージ:若林先生インタビュー

笑顔でインタビューに応じる若林先生(※撮影時のみマスクを外しています)

 

当時はどのようなことに力を入れていたのでしょうか。

もともとは研究や留学にも興味があったんですが、毎日たくさんの方を診療する中で、実際に臨床の現場で必要とされることを重視するようになり、難治性自己免疫疾患の治療、診断困難症例の診断などを行ってきました。また、同じように現場に立てる人を増やす必要性を感じて、教育にも力を注いできました。

 

「診断困難症例」という言葉が出ましたが、膠原病はなかなか診断が付かない患者さんも多いそうですね。診断が難しい病気なのでしょうか。

難しい方だとは思います。

どんな病気でも診断をする上で必要なことはまず情報を拾い集めることですが、膠原病の診断で特に重要なのが診察と問診です。要は身体的な症状や患者さんの訴えを見逃さないこと。気にしなければ通り過ぎてしまうようなことも、それが病気と関係していないか見極めて、関連する症状や身体所見がないか確認するなどして診断につなげていきます。

ですから、膠原病の知識はもちろん必要ですけれど、幅広い知識を持って全身を診ることができなければ膠原病を正しく判断することはできないと思います。

 

膠原病そのもののことだけでなく、総合内科的な見識も必要なんですね。

そうですね。まず病気というのは、その病気だけ治すことができればいいというものではないです。特に膠原病の場合は合併症や副作用に関する対処も重要で、それってもはや膠原病の知識だけでどうにかできるものじゃないんですよ。だからより全身的に診られる人、見られる環境が必要です。

その点で市民病院はいい環境だと思います。いろんな診療科が揃っていて、特に内科だと全内科※1があります。それに「24時間365日断らない救急」を目標に掲げる救急センターがあるので、急な事態にも対応できるというのは患者さんにとって大きなメリットです。

 

イメージ:膠原病・リウマチ内科外来

膠原病・リウマチ内科外来は2階外来フロアの25番。関節リウマチは24番の整形外科と共に診療を行っています。

 

膠原病にはリウマチのように、整形外科と膠原病・リウマチ内科の両方で診る疾患もありますね。

リウマチは昔は痛み止めやステロイド注射を使って、それでも良くならない場合は手術をするというのが一般的でした。最近は薬物治療が主になってきているので、副作用管理などの面から内科も関わるようになってきたという感じですね。

市民病院では、膠原病・リウマチ内科と整形外科とで協力して「リウマチセンター」として診療を行っているので、どちらの科を訪ねても安心して治療に臨んでいただけると思います。

 

リウマチセンターでは20年以上に亘り「リウマチ教室」として啓蒙活動を行っていますが、これにはどんな狙いがあるのでしょうか。

膠原病って、セルフケアがすっごく大事なんです。患者さんが病院にいる時間って数ヵ月とかの長い尺度で見ると本当にわずかで、診察室にいる時間に至っては数分じゃないですか。

慢性的な病気というのは、圧倒的に自分一人で病気の管理をしている時間が多いんですよね。そう考えると何が一番大事かというと、「自分で自分の病気を知る」ということです。

基本的なことは診察時の説明などでお伝えしますが、時事的な情報や最新の知見などはアップデートしていく必要があります。「リウマチ教室」は、そういった情報を共有する場です。さまざまな職種のスタッフが関わり、それぞれの専門知識を活かして情報発信を行っています。

イメージ:リウマチ教室瓦版

リウマチ教室は感染対策のため対面の教室は休止中ですが、Web版・瓦版(院内での資料配布および掲示)と形態を変えて引き続き情報を発信しています

 

※1 厚生労働省が定める内科診療科目を差します。


▶第2回を読む
膠原病のセルフケアとは?なぜ大切なのか、具体的にはどんなことをするのか・・・
引き続き若林先生にお話しをお伺いしました。

 

お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 膠原病・リウマチ内科 医師 若林 宏(わかばやし ひろし)

※役職は掲載時のものです。変更になっている場合がありますがご了承ください。