アイキャッチ_リウマチ教室

関節リウマチ患者さんにおける骨粗鬆症診療

市民病院で20年以上にわたり行ってきたリウマチ教室。新型コロナウイルスの影響により、2020年7月よりWeb版・瓦版(院内での資料配布および掲示)と形態を変え、皆様のリウマチ療養にお役立ていただくべく、引き続き情報を発信しております。

グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の特徴

グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症による脆弱性骨折は、骨密度が正常でも合成グルココルチコイドによる治療開始後早期から生じる例も少なくなく、小児から高齢者までどの年齢でも生じます。骨量減少は合成グルココルチコイドの投与量に依存しますが、少量でも骨粗鬆症の原因となります。合成グルココルチコイドの投与開始から3~6か月後までに骨粗鬆化が急速に進行し、脆弱性骨折率も高くなります。プレドニゾロン換算5mg/日以上の合成グルココルチコイドを3か月以上内服すると骨折率は50%増加し、長期使用患者さんの30~50%に骨折が発生し、関節リウマチ患者さんで合成グルココルチコイドを併用すると、非併用の患者さんに比べて2年間で骨密度の低下が2.6倍になるといわれています。

 

グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の診断に有用な症候、検査、画像所見

グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症に特異的な症状はないですが、合成グルココルチコイドを開始する際には胸椎と腰椎の単純X線により椎体骨折の有無を評価し、投与中も腰椎および大腿骨近位部の2部位のDXA(dual energy X-ray absorptiometry)による骨密度測定を定期的に行うことが重要です。

 

グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の薬物治療開始基準

合成グルココルチコイドを3か月以上使用中か使用予定の18歳以上の患者さんで、投与量や投与期間にかかわらず、栄養や運動療法を含めた一般的な生活指導が推奨されています。その上で、既存骨折、年齢、合成グルココルチコイド量、骨密度を危険因子として点数評価し、3点以上であれば薬物療法の介入が推奨されます。

 

図1 診療アルゴリズム

図1 診療アルゴリズム
2014年改訂版で決定したスコアカットオフ値を用いた2023年版のアルゴリズム

GC:グルココルチコイド, RANKL: receptor activator of nuclear factor-kappa B ligand, SERM: 選択的エストロゲン受容体モジュレーター, PSL: プレドニゾロン, YAM: young adult mean
*6ヵ月から1年ごとの腰椎単純X線撮影, 骨密度測定

〈グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023より引用〉

 

グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症に対する薬物治療

治療薬としては、活性型ビタミンD(エルデカルシトールなど)、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(ラロキシフェン/バドキシフェン)、骨吸収抑制薬であるビスホスホネート製剤(アレンドロネートやリセドロネートなど)や抗RANKL抗体(デノスマブ)、骨形成促進薬であるテリパラチドを適切に用いることが重要です。
特に骨折の危険性が高い重症骨粗鬆症に対してはテリパラチドの使用が推奨されています。

 

おわりに

関節リウマチに対する薬物療法の進歩により、大関節の人工関節置換術を受けられる患者さんは減少してきていますが、一方で患者さんの高齢化に伴い骨折に対する手術を受ける患者さんが増加してきています。関節リウマチ治療と並行して、定期的な骨粗鬆症に対する検査を受けていただき、必要であれば薬物治療を開始することで骨折を予防していくことが重要です。

 

参考文献

  • 「グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023」 一般社団法人日本骨代謝学会 グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン作成委員会/編、南山堂、2023.

 

お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 リウマチセンター 副センター長 堀田 昌宏

 

※役職は掲載時のものです。変更になっている場合がありますがご了承ください。

 

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