市民病院で20年以上にわたり行ってきたリウマチ教室。新型コロナウイルスの影響により、2020年7月よりWeb版・瓦版(院内での資料配布および掲示)と形態を変え、皆様のリウマチ療養にお役立ていただくべく、引き続き情報を発信しております。
※更新日が古いものは最新の知見と異なる場合がありますのでご注意ください。
第296回リウマチ教室 超音波検査について
解説:岡山市立市民病院 臨床検査技術科 小川、森
知っておきたい超音波検査4つのポイント
1.超音波検査って、どんな検査?
超音波検査(エコー検査)とは、人の耳では聞くことの出来ない高い周波数の音波(超音波)を利用して、からだの内部の状態を観察する検査です。超音波を発生させる機械をからだの表面に当てると、体内の臓器から超音波がはね返ってきます。超音波検査では、このはね返ってきた超音波を電気信号に変換し、画像として表示させることで臓器の形や状態を知ることができます。循環器科や消化器科、産婦人科をはじめ多くの診療科の診療において重要な画像検査です。
画像検査は他にもX線検査(レントゲン検査)、CT検査、MRI検査などがあります。検査ごとに特徴があるため、検査したい部位や目的に応じた検査が行われます。
2.超音波検査の特徴
利点
- レントゲンやCT検査と比べて侵襲性が低く、からだへの負担が少ない
- 比較的短時間で検査ができる(検査する部位にもよりますが約10分~20分)
- 診察室や検査室、病室など超音波検査の機械があれば場所を選ばず手軽に検査ができる
- 心臓の動きや血流などをリアルタイムで観察でき、臓器が動いている様子を知ることができる
欠点
- 空気、骨など硬いものに弱いため、肺や骨に囲まれた部位の検査には不向き
- 検査する人の知識や経験によって精度が左右されることがある
3.関節リウマチと超音波検査
血液検査で肝機能障害を指摘されて腹部超音波検査を行ったことはありますか?
肝機能障害の原因には脂肪肝や癌などの肝疾患の他に、薬により肝臓の機能が悪くなる薬剤性肝障害があります。リウマチの治療で使用している薬が体に合っていないと肝機能障害がおこることがあるため、定期的に血液検査や腹部超音波検査でチェックすることが大切です。
※血液検査に関しては、「-第284回- 関節リウマチの血液検査項目について」「-第255回- 関節リウマチに関する主な検査」をご参照ください。
心臓・腹部超音波検査はなじみがある方も多いと思いますが、超音波検査で関節の中をみることができるのをご存じでしょうか。関節に炎症が起きているかどうか、骨の破壊や変形の程度などがわかるため、関節リウマチの診断や治療の評価に用いられています。血液検査やレントゲンでは分からない初期のリウマチの発見にも役立ち、早期治療へ繋げる足掛かりとなります。
手指や手首、肩、足趾など検査したい関節にゼリーを塗ります。ポンッと機械を当てるだけで簡単に検査を行うことができます。
検査時間:約20分
費用(検査のみ):約1100円
(自己負担額3割の場合 ※2024年6月時点)
4.関節超音波検査でチェックするところ
◆関節が腫れていないか
関節リウマチは、関節の内側を覆う滑膜とよばれる組織が異常に増えて腫れぼったくなって痛みを引き起こします。滑膜が腫れていないか、血管新生を起こしていないか確認します。
◆水がたまっていないか
関節リウマチは滑液とよばれる水が多量に貯まることがあります。
◆骨に不整はないか
関節の炎症が長引くと骨まで波及し、骨破壊が起こります。骨破壊が起きて骨の表面がギザギザしていないか、骨と骨の間に隙間があるか確認します。
◆お薬が効いているか
治療を始めて痛みがなくなったという方でも超音波検査でみると炎症が残っている場合があります。使用している薬剤が効いて、関節の腫れや炎症が改善しているかどうか確認します。
関節超音波検査は関節リウマチの発見や、治療の効果判定に役立つ検査です。首や背中など大きい関節はMRIやCTが有用ですが、手指など小さい関節は得意です。朝に手のこわばりを感じる方、関節の痛みの自覚がある方は是非関節超音波検査をご検討ください。通院中の方は必要に応じて検査を受けてください。
参考文献
- リウマチ診療レベルアップ 関節エコービジュアルレシピ 南江堂
- リウマチ診療のための関節エコー撮像法ガイドライン 羊土社
お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 臨床検査技術科 小川、森
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