前回はこれまでの歴史を中心にお話をお伺いしました。第2回は専門分野についてです。
今城先生=新型コロナウイルスの解説、というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、血液疾患と感染症は関連があるのでしょうか?
血液疾患は強い抗がん剤や放射線による治療、移植手術などを行うケースが多いのですが、そうすると血液が弱ってしまうんですね。血液が弱ると健康な人では問題にならないような病原体にも感染しやすくなり、それが命を脅かすことになります。
市民病院では、移植手術後などの特に血液が弱っている状態の時は、高精度なフィルターを通して空気を循環させているBCR(バイオクリーンルーム)という無菌室に入っていただきます。バクテリアなんかの体内にいる菌は全部排除することはできませんが、外部の菌に関しては確実に感染抑制効果があります。
それほど血液疾患の治療において感染症は脅威です。そういった背景があるので、血液疾患を扱う医師は感染症の知識が必須なのです。
新型コロナウイルス感染症についても治療研究を行っているのでしょうか。
臨床検査科で新型コロナウイルスのゲノム解析を行っています。
ゲノム解析とは、次世代シーケンサーという大きな機械を使ってウイルスの遺伝子情報などを明らかにし、得られたデータを解析するものです。ワクチンや抗ウイルス薬の開発、変異株の予測、感染ルートの解明などの様々な研究の基盤となる情報を得ることができます。
高性能な設備と解析技術が必要になる上に時間もかかるため、どこの施設でもできることではないのですが、感染症指定病院の責務として取り組んでいます。
最近の医療に関するトピックはありますか?
血液分野に限らず近年研究が盛んなのは、「分子標的薬」という薬剤です。
例えばがんの場合、従来の抗がん剤だと正常な細胞も攻撃してしまうのですが、分子標的薬はがん細胞だけを狙い撃ちすることができて、そうすると副作用が少なくて済むのです。市民病院でも抗がん剤と分子標的薬を組み合わせて、それぞれのメリットを引き出す治療を行いながら、副作用や感染症などを予防する支持療法を併用しています。
中でも血液分野で最近話題となっているのが、BiTE抗体という2種類の抗体を繋いだ製剤により、白血病細胞とT細胞をくっつけることで、T細胞によって白血病細胞を攻撃するという薬剤です。要は体内にもともとある免疫システムを使ってがん細胞を退治するという考え方です。
お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 血液内科 医師 今城 健二(いまじょう けんじ)
※役職は掲載時のものです。変更になっている場合がありますがご了承ください。