整形外科 医長 馬﨑 哲朗（まざき てつろう）先生に「腰椎椎間板ヘルニア」について教えていただきました。
整形外科の中で先生の専門である脊椎分野ではどのような病気の患者さんが多いのですか？
脊椎とはいわゆる「背骨」のことで、大きくは「首、胸、腰」のレベルで分かれます。私の外来では特に「腰」を痛めて受診される方が多いです。腰に関連する病気にも様々なものがありますが、代表的な病気に『腰椎（ようつい）椎間板（ついかんばん）ヘルニア』があります。
腰椎椎間板ヘルニアは具体的にはどのような病気ですか？
椎間板は背骨の骨が積み重なった部分（椎骨）でクッションの役割を果たしています。椎間板の中心にはゼリー状の髄核があり、まわりを線維輪という軟骨が囲んでいます。
椎間板に何らかの負担がかかると、線維輪の亀裂から髄核が飛び出し、神経を圧迫して痛みやしびれなどの症状を引き起こすのが、腰椎椎間板ヘルニアです。
原因にはどのようなものがありますか？
腰椎に生じた椎間板ヘルニアは、重いものを持ったり腰に負担がかかることで発症し、腰痛や足のしびれなどを引き起こします。年齢的には20～40歳の方が発症することが多いです。
症状で何か特徴的なものはありますか？
多くの場合、片足に症状がみられます。正座した後でよく起きるしびれと似た部分で起こりやすく、痛みやしびれの強さには個人差があります。
また両足に症状が出ることもあり、筋力の低下により足が持ち上げにくい、歩きづらい、足の感覚が鈍いなどの症状で受診されることもあります。
その他の症状にはどのようなものがありますか？
重症の場合は、尿が出にくい排尿障害が起こることがあります。腰痛は他の原因でも起こることが多く、この病気に特徴的な症状とは言えません。
保存療法について教えてください。
腰椎椎間板ヘルニアは自然に縮小したり、大きさに変化がなくても症状が改善するケースが多いため、まずは保存療法で様子をみます。保存療法には、安静、薬物治療、コルセット、神経ブロックなど、症状に応じてさまざまなものがあります。
手術療法について教えてください。
保存療法で効果がみられない場合は、手術療法を行います。症例によっては日帰りか数日の入院で椎間板内に酵素を注入する治療を行います。
手術では、ヘルニアを摘出し神経の圧迫を直接取り除くため、直視もしくは内視鏡や顕微鏡を使用して行います。椎間板内酵素注入療法では、椎間板内に酵素を含んだ薬剤を直接注射することで、ヘルニアによる神経の圧迫を弱める効果が期待できます。
ポイント
腰椎椎間板ヘルニアの治療法は原則保存療法を行います。効果がみられない場合は体に負担の少ない低侵襲手術を中心に治療を行います。
岡山市立市民病院の脊椎外来では、腰椎椎間板ヘルニアだけでなく、背骨に関する症状であれば「首」から「腰」まで対応しています。手術では、基本的に内視鏡を中心とした低侵襲手術を心がけて診療しています。足のしびれや歩きづらさなど、背骨関連でお困りのことがあれば、何でもお気軽にご相談ください。
※役職は掲載時のものです。変更になっている場合がありますがご了承ください。