市民病院で20年以上にわたり行ってきたリウマチ教室。新型コロナウイルスの影響により、2020年7月よりWeb版・瓦版(院内での資料配布および掲示)と形態を変え、皆様のリウマチ療養にお役立ていただくべく、引き続き情報を発信しております。
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第284回リウマチ教室 関節リウマチの血液検査項目について
解説:岡山市立市民病院 臨床検査技術科 小川・森
はじめに
血液検査の結果用紙には、結果と基準範囲(基準値、正常値とも言います)が記載されています。結果が基準範囲から外れていたらどう思われるでしょうか。不安になる人もいるでしょうし、少しくらい大丈夫と思われる人もいるでしょう。検査結果で一喜一憂しないために、今回は基準範囲と臨床検査項目の生理的変動、リウマチに関わる検査項目についてお話しします。
基準範囲
基準範囲とは、健常者(病気がなく健康な人)の測定結果を集計して、95%の人が含まれる範囲のことです。つまり、健常者でも100人のうち5人は基準範囲から外れて異常値と診断されます。ですから基準範囲から外れたとしても、確実に病気であるとは言えません。基準範囲は診断の補助的役割を担っています。異常値の他に、身体的特徴や画像検査の結果を総合的にみて異常があるかどうか判断されます。
また、医療施設ごとに基準範囲が違うことがあります。大きく異なることはありませんが、検査の方法や試薬の種類によって差がみられることがあります。病院によって検査結果が異なる場合は基準範囲も気にしてみてください。
臨床検査項目の生理的変動
血液検査には、生理的な要因によって検査結果が変動する項目があります。年齢、性別、環境、生活習慣、喫煙、飲酒など様々です。代表的なものをご紹介します。
※他にも生活習慣でAMY、ChE、ALP、総コレステロール、尿酸等が影響を受けやすい項目です。
※ホルモンも日内変動が大きい項目です。(コルチゾールやカテコールアミン)
※筋肉の量や、性ホルモンの影響で性差がある項目があります。加齢により腎機能が悪くなると高値を示す項目があります。
採血前に気をつけていることはありますか?食事をたくさん摂ると、血糖値が正しく測定できないことがあります。運動をすると、LDHやCKが高値になることがあります。正しい検査結果を得るためにできることがあれば実践してみてください。
リウマチに関わる検査項目
リウマチに関わる代表的な項目をご紹介します。
CRP(C反応性蛋白質)
体内で炎症や組織破壊が起こると増える蛋白です。感染症、組織障害、手術や外傷など関節リウマチ以外の疾患でも増加しますが、病気の活動性や重症度を反映する指標です。
赤血球沈降速度(ERS)
赤血球の沈む速度を測定する検査です。炎症が起こっているとERSは速くなります。CPR同様、炎症の程度を評価するのに用いられます。
リウマトイド因子(RF)
リウマチ患者の血液中に高頻度で出現する自己抗体です。リウマチ以外の膠原病や肝臓病などでも陽性になることがあります。健常者でも高齢者では陽性になることがあり、RF陽性であっても必ずしもリウマチであるとは言えませんが、重症のリウマチの場合は数値が高くなるため重要な指標の一つです。
抗CCP抗体
リウマチ患者の滑膜組織(関節を保護する組織)に対する自己抗体で、リウマチの早期に血中に出現するため早期診断に有用です。リウマチ以外の疾患でみられることは少ないため、関節症状があり抗CCP抗体が陽性であればリウマチの可能性が高くなります。RFと併せて測定することで精度の高い診断が可能になります。
MMP-3
軟骨を壊す酵素で、関節破壊の程度と関連しています。リウマチの活動性の評価や予後予測、治療効果判定に有用です。治療経過中にCRPと併せて測定することで、リウマチの活動性の評価や、感染症などの鑑別にも有用です。
おわりに
リウマチでは多くの場合はリウマトイド因子(RF)と抗CCP抗体ともに陽性となります。しかし、高齢で発症する関節リウマチでは両方陰性であることも多く、他疾患との鑑別が必要です。また、RFや抗CCP抗体が陽性で高値である場合、関節破壊が進みやすいとされています。関節の炎症が強いと、CRPの数値が高くなります。赤血球沈降速度も炎症で高値になりますが、CRPのほうが炎症の状態をより早く反映します。
関節リウマチでは、早期診断・早期治療が重要です。高齢人口の増加により関節リウマチ患者は高齢化しており、診断の遅れは急激に身体機能を低下させ、回復が難しくなる原因にもなります。治療法の進歩により、早期発見することでリウマチの進行を抑えることができるようになってきました。ご自身やご家族が病気や検査内容について理解を深めることも、大切な治療につながります。
参考文献
- 医学書院データブック
- 臨床検査 vol.63 no.4 2019年 4月・増刊号
- 臨床検査 vol.65 no.4 2021年 4月・増刊号