市民病院で20年以上にわたり行ってきたリウマチ教室。新型コロナウイルスの影響により、2020年7月よりWeb版・瓦版(院内での資料配布および掲示)と形態を変え、皆様のリウマチ療養にお役立ていただくべく、引き続き情報を発信しております。
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第282回リウマチ教室 関節リウマチ頸椎病変について
解説:岡山市立市民病院 リウマチセンター 副センター長 堀田 昌宏
はじめに
関節リウマチによる頸椎病変は上位頸椎 (環椎-軸椎) に好発し、その発生頻度は17~88%と報告されています。頸椎病変は環椎と軸椎の関節に生じる滑膜炎の結果、骨びらんや靭帯の弛緩が生じ、不安定性を引き起こします。 さらに進行すると脊髄を圧迫し四肢麻痺という重大な身体機能障害をきたすこともあります。関節リウマチ患者では、頸椎病変を生じやすく重症化すると生命予後にもかかわってくるため、定期的に経過観察し早期に病変を見つけることが重要です。
上位頸椎の解剖について
関節リウマチ頸椎病変の経過(頸椎を横から見た図)
関節リウマチ頸椎病変の画像評価
まず、頸椎の不安定性の評価には単純X線が用いられます。神経障害を認めた場合、もしくは単純X線像で頸椎病変を疑った場合にはCTやMRIの適応となります。CTは骨びらんや脱臼、関節強直などの評価に有用です。脊髄や神経根の圧迫の有無の評価にはMRIが有用です。
治療
保存治療の代表的なのものは装具療法です。関節リウマチ頸椎病変の発生および進行の予防は装具による固定では困難な場合がありますが、局所安静により痛みを軽減させることができます。代表的な頸椎装具として、ソフトカラーやフィラデルフィアカラーなどがあります。また、進行性あるいは重度の脊髄障害や保存療法に抵抗する強い頸部痛に対しては手術療法が考慮されます。
おわりに
関節リウマチによる薬物療法の進歩により高度の破壊・破綻を伴った頸椎病変は減少してきています。しかし、薬物治療介入時に既存の頸椎病変、特に上位頸椎病変が存在する場合には疾患活動性がコントロールされていても頸椎病変が進行することが報告されておりますので、頸椎病変の定期的な評価は今後も必要です。
出典および参考資料
- 一般社団法人日本リウマチ学会:関節リウマチ診療ガイドライン2020. 診断と治療社 2021.
- Kaito T, Ohshima S, Fujiwara H, et al. Predictors for the progression of cervical lesion in rheumatoid arthritis under the treatment of biological agents. Spine (Phila Pa 1976) 2013, 38(26): 2258-2263.
- 堀田昌宏、西田圭一郎. 関節リウマチ頸椎病変の画像評価 (解説). リウマチ科 2016、55巻、3号、323-329.
- Horita M, Nishida K, Hashizume K, et al. Prevalence of and Risk Factors for the Progression of Upper Cervical Lesions in Patients with Rheumatoid Arthritis. Acta Med Okayama. 2019, 73(3):235-240.