はじめに
関節リウマチは、慢性的な経過で全身の様々な関節に炎症を引き起こす自己免疫疾患のひとつです。その症状である手のこわばりや関節の腫れや痛み、全身の倦怠感(けんたいかん)は、患者さんの全体的な健康に影響します。特に中年以降の女性に多い病気であることから、患者さん自身のみならず、家庭や職場、社会へ影響をもたらす病気といえます。
「関節炎は落ち着いている」、「炎症反応やリウマチの数値は良くなっている」と言われたけれど健康な状態とは言えず、生活の質が戻らないという方もおられるかもしれません。今回は、‘well-being’(ウェル ビーイング)の考え方と関節リウマチ患者さんへのケアについてご紹介します。
‘Well-being’(ウェル ビーイング)とはなにか
Well-beingとは、単に病気の有無ではなく、患者さん個人や社会が良い状態にあることを指します。WHO憲章でも、健康を「肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態」と定義し、Well-beingという用語を用いて説明しています 1)。関節リウマチ患者さんでは、以下の要素が疾患と関連しており、Well-beingに影響するとされています 2) 3) 4)。

1.痛み・疲労
関節炎や関節の変形に伴う痛みだけではなく、疲労は痛み、抑うつ状態、睡眠障害とも関連しています。
2.抑うつ・不安
関節リウマチ患者さんではうつ病の併存が一般人口と比較して約2倍程度多いとされています。うつ状態は痛みの増強の原因となり、日常生活動作へ影響します。
3.社会参加・就労
制限なく社会生活や仕事をこれまで通り行うことが、帰属意識や幸福感、自由などポジティブな気持ちと関係し、日々を力強く生きる力となります。
Well-beingを高めるために大切なケア
1.早期診断・適切な早期治療
関節リウマチの薬物治療は大きく進歩しています。標準治療であるメトトレキサートなどの疾患修飾性抗リウマチ薬に加えて、生物学的製剤やJAK阻害剤と呼ばれる新薬の登場により、関節破壊の防止や身体機能の維持をさらに目指せる時代となっています。
症状の発症から治療介入までの期間が短いほどその後の治療成績も良いとされているため、こわばりや関節の腫れ・痛みがあれば早めに専門医へご相談ください。

2.運動・リハビリテーション
適度な有酸素運動や筋力トレーニングは、疲労の軽減や抑うつ状態の改善、身体機能の向上に寄与します。
関節炎の程度が著しく強い場合は適宜安静が推奨されるため、運動の強度は主治医と確認して行ってください。
3.併存症の治療
関節リウマチ患者さんでは、心血管疾患、感染症、骨粗鬆症、筋力低下(サルコペニア)などの身体疾患の併存が多いとされています。併存疾患の適切な評価や、肺炎球菌や帯状疱疹などワクチン接種で防げる病気の予防も、リウマチ患者さんを診る主治医の重要な役割です。
4.心理・経済的サポート
患者サポート会(リウマチ友の会など)や医療費の負担軽減制度(リウマチ教室 第316回 『リウマチ患者さんの医療費について』を参照)の活用も良い手段となるでしょう。

おわりに
Well-beingの考え方と関節リウマチ患者さんにおけるケアについてお話しました。
関節リウマチがあるからこそ、その他の身体的・心理的なケアまで目が届き、適切な管理ができることも多いと思います。その人らしく生きられる生活を目指したいと考えます。普段の受診の際には、痛みだけではなく疲労感や不眠なども含め、症状・お困りごとを遠慮なく主治医にお伝えいただければと思います。
岡山市立市民病院 膠原病・リウマチ内科 今村 竜太
参考文献
- 1)日本WHO協会 世界保健機関(WHO)憲章とは https://japan-who.or.jp/about/who-what/charter/
- 2) I Rupp, et al. Arthritis & Rheumatism. 2004 51(4): 578-585.
- 3) F Matcham, et al. Rheumatology. 2013 52(12): 2136-2148.
- 4) E Landgren, et al. BMC Rheumatology. 2024 27 8(1): 29.
お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 膠原病・リウマチ内科 今村 竜太
市民病院HP リウマチセンター当院リウマチセンターについては、こちらからご覧ください。
市民病院HP リウマチ教室(記事一覧)リウマチ教室の記事のアーカイブもございます。ぜひご覧ください。
※役職は掲載時のものです。変更になっている場合がありますがご了承ください
市民病院で20年以上にわたり行ってきたリウマチ教室。新型コロナウイルスの影響により、2020年7月よりWeb版・瓦版(院内での資料配布および掲示)と形態を変え、皆様のリウマチ療養にお役立ていただくべく、引き続き情報を発信しております。
※更新日が古いものは最新の知見と異なる場合がありますのでご注意ください。