市民病院で20年以上にわたり行ってきたリウマチ教室。新型コロナウイルスの影響により、2020年7月よりWeb版・瓦版(院内での資料配布および掲示)と形態を変え、皆様のリウマチ療養にお役立ていただくべく、引き続き情報を発信しております。
※更新日が古いものは最新の知見と異なる場合がありますのでご注意ください。
第279回リウマチ教室 関節リウマチに関係する検査
解説:岡山市立市民病院 臨床検査技術科 村山・森
はじめに
関節リウマチにおいて、臨床検査は診断・治療効果判定・副作用有無の確認のため重要な役割を担っています。臨床検査技師が担当した昨年1月のリウマチ教室では、関節リウマチに関係する主な検査項目についてご紹介しました。
病院で実施している検査は、様々なものがあります。すべての検査がリウマチに直接関係しているわけではありませんが、今回は生理検査の中から少しリウマチにも関係する検査を臨床検査技師がご紹介します。
生理検査 2つの検査項目
〈 ABI / CAVI 検査(血圧脈波検査) 〉
ABI / CAVI 検査は、動脈硬化を調べる検査です。
厚生労働省が行った2021年人口動態統計によると、日本人の死因は1位 悪性新生物、2位 心疾患、3位 老衰、4位 脳血管疾患となっています。そのうち心疾患、脳血管疾患はどちらも動脈硬化に起因していることが多く、動脈硬化を予防することは重要です。
加齢とともに動脈硬化は進行してしまうものですが、リウマチ患者さんはリウマチによる炎症の影響で動脈硬化が進みやすいので注意が必要です。
できるだけ早期から生活習慣の改善等を行うことで予防効果が大きくなることが期待できます。
ABI / CAVI 検査は、5分程度で比較的簡単にできる検査です。結果もすぐに出るので、その日のうちに医師の診察に活用することができます。
検査の流れ
まずベッドに仰向けに寝てもらい、両手首に心電図電極、両腕と両足首にカフ(血圧計)、胸元に心音マイクを付け、測定を開始します。測定中は声を出さず、四肢の力を抜いてリラックスした状態で行います。
<測定の流れ>
①CAVI測定:四肢のカフ(血圧計)に弱い加圧(脈波測定)
②ABI測定(右側):右腕・右脚のカフに強い加圧(血圧測定)
③ABI測定(左側):左腕・左脚のカフに強い加圧(血圧測定)
分かること
CAVIとは、心臓(Cardio)から足首(Ankle)までの動脈(Vascular)の硬さの指標(Index)の略で、動脈の硬さの指標です。心臓から押し出された血液の拍動は、血管の壁を通じて体の末端に届きます。血管が硬いほど拍動が速く伝わるので、この拍動(脈波)を計測して動脈の硬さを調べています。
また、同性・同年齢の健康な人の平均値と比べることで血管年齢が分かります。ABIとは、足首(Ankle)と上腕(Brachial)の血圧比の指標(Index)の略で、動脈の狭さの指標です。
通常、腕の血圧と足首の血圧は同じくらいか、足首の方が少し高い値になります。しかし、足の動脈が狭くなっていると血液の流れが悪くなり、腕の血圧に比べて足首の血圧が低くなります。このため、腕と足首の血圧を比べることによって足の動脈が狭くなっていないかどうかを調べることができます。
〈 体成分分析検査 〉
体成分分析検査とは体を構成する4つの基本成分(体水分・タンパク質・ミネラル・体脂肪)を定量的に分析し、栄養状態や体のむくみ、身体の発達状況など人体成分を数値にして評価する検査です。
筋肉や脂肪等の電気の流れやすさの違いを利用し、体に微弱な電気を流して体成分を算出します。フレイルやサルコペニアの評価に有用です。
フレイルとは、加齢に伴う様々な機能変化や予備能力低下によって健康障害が生じやすい状態です。サルコペニアはフレイルに含まれ、筋肉量が減少して筋力低下や身体機能低下を起こしている状態のことです。サルコペニアになると死亡、要介護のリスクが高くなります。
リウマチ患者さんは、リウマチによる炎症によって筋肉がダメージを受けたり、痛みで身体が動かせず運動不足になりがちのため、フレイルやサルコペニアにも注意が必要です。
また、薬剤の影響で筋肉が弱くなったり骨粗鬆症を発症するリスクもあるので、転倒や骨折にも気をつけなければなりません。いずれも、栄養バランスの整った食事、適切な運動により改善が見込まれます。
自分の身体の状態を把握する手段の一つとして、体成分分析装置を紹介します。
測定方法
裸足の状態で体成分分析計に乗り、体重を測定します。その後手電極を握り、適切な姿勢(腕を伸ばし体に接しないようにじっとしておく)を維持したまま60秒経過すると結果が表示されます。
分かること
- 栄養評価…タンパク質量、ミネラル量、体脂肪量が適切であるか
- 筋肉、脂肪…筋肉量と体脂肪量が体重に対して適切であるか
- 部位別筋肉量…四肢と体幹の筋肉の発達具合や身体の上下・左右がバランスよく発達しているか
上記以外にも、肥満評価や適正体重などが分かります。
健常者における筋肉量は部位別にバランスよく発達していますが、関節リウマチの患者さんは身体活動量の低下によって下半身の筋肉量が低下する傾向があります。あとどのくらい筋肉量が足りないのか、左右、上下のバランスはどうかを数値にすることで、具体的に自分の身体の弱い部分を発見することができ、リハビリする際の一助となります。
おわりに
今回はリウマチに直接関係する検査ではありませんでしたが、体の状態を知るために
おわりに 色々な検査があります。臨床検査に関心を持ってもらえたら幸いです。
出典および参考資料
- 2021年人口動態統計
- 日本内分泌学会雑誌 第94巻第10号平成17年10月10日
- フクダ電子 動脈硬化net HP https://www.domyaku.net
- InBody Japan 公式ホームページ https://www.inbody.co.jp
- InBody770 結果用紙の見方(株式会社インボディ・ジャパン)