はじめに
関節リウマチは、関節が炎症を起こし腫れや痛みを引き起こします。最近では、関節リウマチと「フレイル」「サルコペニア」の関係が注目されています。関節リウマチでは、関節の痛みや変形などにより活動量低下や栄養が不足し、フレイルやサルコペニアに陥りやすい疾患とされています。今回は、それぞれの特徴と改善のための工夫を紹介します。
まずは、フレイルかどうかをチェック!
現在、65歳以上の10人に1人がフレイルと言われています。【体重が減ってきた、疲れやすい、筋力が低下する、歩くのが遅くなる、活動量が少なくなる】この5つのうち、3つ以上当てはまる場合は、フレイルです。
※0項目:健常,1~2項目:プレフレイル,3項目以上:フレイル
改訂日本版フレイル基準(J-CHS基準)
項目 | 評価基準 |
---|---|
体重減少 | 6ヵ月で,2~3kg以上の体重減少 |
筋力低下 | 握力:男性<26kg,女性<18kg |
疲労感 | (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする |
歩行速度 | 通常歩行速度<1.0m/秒 |
身体活動 | ①軽い運動・体操をしていますか? ②定期的な運動・スポーツをしていますか? 上記の2ついずれにも「1週間に1度もしていない」と回答 |
フレイルとは?
フレイルとは、加齢に伴い心身の機能(運動機能や認知機能等)が低下し、健康と要介護の間にある状態とされています。要介護の前段階である要支援になる原因の第1位は関節疾患、第2位は高齢による衰弱、第3位は転倒・骨折です。
フレイルの原因は、身体だけでなく精神・心理的(認知症やうつ等)、社会的要因(閉じこもり等)と様々だとされています。特徴は、「早く気づいて対策すれば改善が期待できる」点です。
フレイルには種類がある?
フレイルは大きく3つの種類に分かれます。
●身体的フレイル
運動器の障害で移動機能が低下したり(ロコモティブシンドローム)、筋肉が衰えたり(サルコペニア)するなどが代表的な例です。
●精神・心理的フレイル
高齢になり、定年退職や、パートナーを失ったりすることで引き起こされる、うつ状態や軽度の認知症の状態などを指します。
●社会的フレイル
加齢に伴って社会とのつながりが希薄化することで生じます。独居や経済的困窮の状態などをいいます。
これらの3つのフレイルが連鎖していくことで老い(自立度の低下)は急速に進みます。
サルコペニアとは?
サルコペニアは、転倒、骨折、身体機能障害や死亡のリスクを高める進行性および全身性の骨格筋疾患です。サルコペニアは加齢によるサルコペニア(一次性サルコペニア)と、疾患・低活動・低栄養などの加齢以外によるサルコペニア(二次性サルコペニア)に分類されており、高齢者に限らず若者にも生じ得ます。
つまり、サルコペニアとは筋力が減ることで、握力や歩く速さが低下することです。身体的フレイルに陥る原因の1つとされています。
女性関節リウマチ患者の37.1%がサルコペニアであったと報告されています。
(京都大学付属病院リウマチセンターで実施したサルコペニアの調査)
サルコペニアのチェックをしてみましょう!
質 問 | 点 数 |
---|---|
4、5kgくらいのものを持ち上げたり 運んだりするのはどのくらい難しいですか? |
全く難しくない=0 いくらか難しい=1 とても難しい,またはできない=2 |
部屋の中を歩くことは どのくらい難しいですか? |
全く難しくない=0 いくらか難しい=1 とても難しい,杖などが必要,またはできない=2 |
ベッドや椅子から立ち上がることは どのくらい難しいですか? |
全く難しくない=0 いくらか難しい=1 とても難しい,または介助が必要=2 |
10段くらいの階段をのぼることは どのくらい難しいですか? |
全く難しくない=0 いくらか難しい=1 とても難しい,またはできない=2 |
過去1年間に何回転びましたか? | 全くない=0 1~3回=1 4回以上=2 |
※4点以上の場合には、サルコペニアの疑いがあります。
フレイルやサルコペニアを予防しよう!
予防で掲げている柱は3つあります。1つは歩いたり、筋トレをしたりするなど「身体活動(運動)」です。次に、「栄養」です。さらに、就労や余暇活動、ボランティアなどに取り組む「社会参加」です。
適切な運動
体調の良い日や時間帯に、片足立ちや踵上げ、椅子からの立ち上がり運動を安全に行いましょう。軽い負荷の運動でも、継続することでサルコペニアの改善につながります。
毎日の食事
偏りの少ないバランスの良い食事を心がけましょう。運動に加え、食事でアミノ酸を摂取することでさらに筋肉の増加を助けられます。特に、ロイシンと言われる牛乳や乳製品、肉や魚、卵、大豆製品に多く含まれる栄養素が不可欠です。
外出のすすめ
散歩や趣味など、外出の機会や人との交流を持ちましょう。
薬は正しく服用
おわりに
関節リウマチでは、フレイルやサルコペニアになりやすい傾向があります。しかし、予防・改善できるものです。薬物療法による炎症のコントロールに加え、適切な運動や食事などを見直してみましょう。
岡山市立市民病院 リハビリテーション技術科 理学療法士 圖師 いをり、藤井 和敬
参考文献
- 日本老年医学会
- 日本生活習慣病予防協会
- 望月猛:関節リウマチにおけるサルコペニアの実態と予防:Monthly Book Medical Rehabilitation No.228,全日本病 院出版会,pp18-22,2023
- Tanaka S,Kamiya K,Hamazaki Net al:Utility of SARC-F for Assessing Physical Function in Elderly Patients With Cardiovascular Disease.Journal Of the American Medical Directors Association 2017;18(2):176-181
- 橋本求,鳥井美江:関節リウマチのサルコペニア合併時の対策について:Geriatric Medicine 57(12),PP1189-1194,2019
お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 リハビリテーション技術科 理学療法士 圖師 いをり、藤井 和敬
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