変形性関節症とは
「関節」は骨と骨との間の動きを支える精密な構造で、表面は滑らかな軟骨で覆われていてスムーズに動くようになっています。
ところが、傷ついた軟骨は殆ど修復されることが無いため、成人して以降は長い年月の間に徐々に軟骨が削れて、負荷のかかかる周辺の骨も変形してしまい、徐々に痛みや動きにくさを感じるようになります。これを変形性関節症といいます。
関節リウマチや痛風などといったその他の関節疾患と違い、一定以上の年齢になると、程度の差こそあれ全ての人に起こる疾患です。
1.手指の変形性関節症
変形性関節症は全身全ての関節に起こり得ます。膝の痛みなどが話題になりやすいと思いますが、実は手指の関節が最も罹りやすいといわれていて、ある地域の住人を対象にレントゲン検査をすると高齢者の9割以上の指に変形性関節症が生じていたという調査もあります。女性ホルモンの影響があると考えられており、女性の方が罹り易いですが男性にも生じます。
爪に一番近い第1関節(DIP関節)の変形が最も多く、多くは40代~60代でしばしば赤みを伴う腫れで発症し、その後痛みは自然におちつくものの徐々に骨ばった膨らみと変形、動きにくさが進行します。このような固い膨らみを「へバーデン結節」といいます。第2関節(PIP関節)も同じくらい多く変形がみられ、こちらは「ブシャール結節」といいます。
親指では指先から三番目(手首に近い場所)の関節に生じることが多く、母指CM関節症といいます。最初は摘まんだり握ったりするときの痛みで発症しますが、徐々に関節の脱臼・変形が進行し親指が外側に開きにくくなり、大きなものを掴むことも難しくなってきます。
指の付け根の関節(親指では指先から2番目、他の指では3番目)の関節は変形性関節症が生じにくい関節ですが、親指~中指では時々みられます。

図1 手指変形性関節症が起こりやすい部位
2.手指変形性関節症の治療(手術以外)
変形性関節症の初期に感じる強い痛みは数週間~数ヵ月で徐々に落ち着くことが多いため、この間は痛みに対する対症療法を中心に行います。消炎鎮痛剤が効くことが多いですが、長期的に使用すると胃腸の粘膜や腎臓に悪い影響があるため、塗り薬や貼り薬も上手に使い分けるようにします。
また、痛みが強い時には関節に直接注射して痛みと炎症を取る治療も有効です。これらの治療の目的は痛みを軽減することであって、病期の進行を食い止めることではありません(そのような効果はありません)。そのため、「効果が無いのに続けないこと」「症状がよくなったら減量したり休薬すること」が重要です。
また、変形性関節症では腱鞘炎を伴ったり、関節の組織が固くなってくることから、「指のこわばり」を感じる方が多くおられます。こわばりを伴うような痛みに対しては手指の運動・ストレッチも有効と考えますが、強すぎる運動はかえって痛みを悪化させる原因になるため、ゆっくりと優しく行うことも大切です。また、テーピングや装具療法も有効です。
3.手指変形性関節症の手術治療
痛みが辛い、変形で困っている、見た目が嫌、という状態が続くようであれば、手術治療を行う選択肢もあります。手術は軽症~重症までいずれの段階でも対応できますが、軽症のうちに手術をうけた方が術式の選択肢が広がります。重症化して手術以外に選択肢が無くなる前に、一度整形外科で相談されることをお勧めします。
①粘液嚢腫の切除
へバーデン結節の周囲に粘液の入った袋状の瘤(粘液嚢腫)が出来ることがあります。潰しても再発して、大きくなると潰れて感染症を起こすことがあるため手術により切除することをお勧めします。日帰り手術が可能です。
②関節固定術
変形した関節を固定する手術で、主にへバーデン結節に対して行います。固定すると使いにくくなりそうですが、第1関節だけ固定しても慣れればほとんどの作業で不便は感じないようになります。むしろ痛みや変形が無くなることで使いやすくなったり、見た目が良くなるメリットの方が大きいためよく行われています。日帰り手術が可能です。
③人工関節置換術
主に第2関節に対しては人工関節置換術も行われます。変形した骨を切除して金属製やシリコン製の人工関節を入れることで痛みと変形を取り除きます。
④母指CM関節症に対する手術
母指の関節症に対しては脱臼した関節を元に戻す関節形成術や、力仕事が多い方には関節固定術を行います。いずれも痛みを取って親指を開きやすくする効果が期待できます。
変形性関節症Q&A
Q.サプリメントは効きますか?
様々なサプリメントが販売されていて、一部に注目すべき物もありますが、現在までに変形性関節症に対して効果が証明されたものはありません。昔から販売されてるのに未だに効果が証明されない(たぶん効かない)ものも多いです。あまり期待しすぎないように、まずは病院で相談してください。
Q.リウマチとは違うんですか?
関節リウマチとは異なる疾患です。関節リウマチと違い、手指の変形性関節症は急速に進行したり、重度の変形・機能障害を生じることは少ないです。ただし、関節リウマチと違って進行を止める方法が見つかっていないという点ではやっかいな病気であるといえます。
Q.変形が進むのが嫌で大事にしているのですが…
手指の変形性関節症では、強い負荷、いわゆる「使いすぎ」の影響があるとされていますが、実は家事や「手をよく使う仕事」という程度の使い方は殆ど影響がありません。残念ながら生まれ持った体質の違い(どのくらい変形性関節症になりやすいか)の方が影響が大きいので、手を使わないように意識することは変形進行の予防には繋がらないでしょう。ただし、明らかに変形が進行している時には、変形を強くする方向に強い力が加わらないように手の使い方を工夫しましょう。
岡山市立市民病院 整形外科 那須 義久
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岡山市立市民病院 整形外科 那須 義久
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