アイキャッチ_リウマチ教室

第303回 食事でできる骨粗鬆症と貧血対策

寒い日が続いていますが、皆さんいかがお過ごしですか?
今月のリウマチ教室瓦版は「食」がテーマです。寒さに負けず、十分な栄養をとって体力をつけていきましょう。
関節リウマチの合併症として骨粗鬆症や貧血、体重減少、食欲不振、肺障害、リウマトイド結節などが知られています。今回はこの中から骨粗鬆症と貧血について「食」の面から注意したいポイントをお伝えします。

 

「食」からみる関節リウマチ2つの合併症

骨粗鬆症

1. 適切なエネルギーとタンパク質の摂取

骨粗鬆症の好発年齢である高齢者・超高齢者においては、食事摂取不良により体重減少からフレイル(※)に結びつきやすく筋肉減少に繋がります。食事量が極端に減らないようにし、肉・魚・卵・大豆製品等のタンパク質食品を1食に1品は必ず食べ、主食・主菜・副菜の揃ったバランスのよい食事を心がけましょう。
※フレイルとは健康な状態と要介護状態の中間の段階

画像:適切なエネルギーとタンパク質の摂取

2. カルシウム、ビタミンD、ビタミンKの摂取

骨粗鬆症の治療のためには1日700~800mgのカルシウム摂取が勧められます。
また、同時に食事からビタミンDやビタミンKを摂取することで、より骨密度上昇効果、骨折予防効果が高くなります。
令和5年国民健康栄養調査によると、日本人のカルシウム平均摂取量は下図のように推奨される700~800mgには達していません。それぞれ多く含む食品を参考に、日々の食事に上手に取り入れてみましょう。
サプリメントを使用する場合は急激に血清カルシウム濃度が上昇する可能性が考えられることから、1回に500mg以上を摂取しないように注意が必要です。

令和5年国民健康栄養調査(一人1日当たり平均摂取量)

60~69歳 70~79歳 80歳以上
カルシウム
(mg)
男性 516 546 542
女性 518 543 528

3. 過剰摂取を控えた方がよい食品

リン、食塩、カフェイン、アルコールの過剰摂取は骨にとって負の働きをします。
特にリンは、カルシウムの骨への吸収を阻害し、食塩に含まれるナトリウムはとり過ぎるとカルシウムを尿の中に排出してしまいます。通常食べたり飲んだりする量であれば問題ありませんが、過剰摂取は控えるように心がけましょう。

画像:推奨される食品・過剰摂取を控えた方がよい食品

 

貧血

鉄は吸収率の低い栄養素といわれています。貧血を予防するには、毎日の食事からの鉄分が不足しないよう十分とることが必要です。

  1. 主食、主菜、副菜がそろったバランスのよい食事を1日3食とる
  2. 鉄を多く含む食品を十分にとる
    • レバー、赤身の肉類、あさり、かき、大豆製品、緑黄色野菜、海藻など
  3. タンパク質を十分にとる
    • 肉、魚、卵、大豆製品、牛乳・乳製品など
  4. 鉄の吸収率を良くする
    • 酢、柑橘類、梅干しなど酸味のあるものや香辛料を使って胃液の分泌を良くする
    • ビタミンCの多い野菜、いも、果物などと一緒にとって吸収を促進させる
    • ビタミンB12(レバー、魚の血合い、納豆など)、葉酸(緑黄色野菜など)、ビタミンB6(いわし、カレイ、卵黄など)、銅(貝類、レバー、ごまなど)などと一緒にとる
  5. 食事中の緑茶やコーヒー、紅茶などは控える
    • これらに多く含まれるタンニンが鉄と結合して鉄の吸収を阻害します。食事中はほうじ茶、麦茶、番茶などを飲むようにしましょう

画像:推奨される食品

 

おわりに

関節リウマチにははっきり効果が確立された食事療法はありません。骨粗鬆症や貧血以外にも、ステロイド等の長期服用による糖尿病や高血圧などにも注意しなければなりません。普段からバランスの良い食事だけでなく体重管理や塩分を控えめにするなどリウマチと上手に付き合っていきましょう。

岡山市立市民病院 栄養科 川上 あや

参考文献

  • 「メディカルスタッフのためのライフステージに応じた関節リウマチ支援ガイド」
    厚生労働化学研究費補助金 免疫・アレルギー疾患政策研究事業「ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援に関する研究」研究班編
  • 「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015版」日本骨粗鬆症学会 ライフサイエンス出版
  • 「令和5年 国民健康・栄養調査」の結果 厚生労働省
  • 「病態栄養ガイドブック 第7版」日本病態栄養学会 南江堂

 

お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 栄養科 川上 あや

 

市民病院で20年以上にわたり行ってきたリウマチ教室。新型コロナウイルスの影響により、2020年7月よりWeb版・瓦版(院内での資料配布および掲示)と形態を変え、皆様のリウマチ療養にお役立ていただくべく、引き続き情報を発信しております。

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