市民病院で20年以上にわたり行ってきたリウマチ教室。新型コロナウイルスの影響により、2020年7月よりWeb版・瓦版(院内での資料配布および掲示)と形態を変え、皆様のリウマチ療養にお役立ていただくべく、引き続き情報を発信しております。
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第283回リウマチ教室 関節リウマチと鎮痛薬
解説:岡山市立市民病院 薬剤部 竹下 和輝
はじめに
今回は「関節リウマチと鎮痛薬」というテーマで、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と 呼ばれる鎮痛薬を中心にご紹介します。
関節リウマチにおけるNSAIDsの位置づけ
関節リウマチに使用される薬は、抗リウマチ薬、副腎皮質ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に大別されます。(表1)
抗リウマチ薬(メトトレキサートや生物学的製剤など)は、関節リウマチの薬物療法の中心となる薬で、関節の炎症を抑え、症状を軽減し、関節破壊の進行を防ぎます。
これに対して、ステロイド薬やNSAIDsは、抗炎症作用や鎮痛作用を期待して使用されますが、基本的に関節破壊抑制効果は期待できません。「関節リウマチ診療ガイドライン2020」では、「補助的な治療」に位置づけされています。このため、ステロイド薬やNSAIDsは抗リウマチ薬と併用の上、必要最小量を短期間で使用することが一般的です。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の特徴
NSAIDsと呼ばれる鎮痛剤の種類は、現在20種類以上が処方されています(表2)。また、6割の関節リウマチ患者さんが服用されるとの報告もあります。
NSAIDsは効果が早く、関節リウマチの患者さんの生活の質を改善するために非常に大切なお薬ですが、一方で常用や長期服用する場合は副作用に注意する必要があります。代表的な副作用をまとめています。(表3)
これらの副作用を避けるために、決められた用量用法を遵守する、痛みが改善すれば頓服への変更や中止を医療者に相談する、複数のNSAIDsを併用しないなどの注意が必要です。また、過去に消化性潰瘍やアスピリン喘息などの既往があるかたは、医師・薬剤師にご相談下さい。
NSAIDs以外の鎮痛薬
関節リウマチの痛みに使用される鎮痛薬はNSAIDsが一般的ですが、患者さんによっては他の鎮痛薬が選択されることもあります。
①アセトアミノフェン製剤(商品名:カロナール®錠)
前述のNSAIDsと同様に解熱作用と鎮痛作用があり、解熱鎮痛薬として幅広く使用されている薬です。NSAIDsとの違いとして、アセトアミノフェン製剤は抗炎症作用を持たないためNSAIDsと鎮痛効果が異なる可能性があります。また、消化性潰瘍や腎障害の副作用がほとんどないため、高齢の患者さんにも使用しやすいお薬とされています。ただし、肝機能障害については注意が必要です。
②トラマドール製剤(商品名:トラマール®錠、トラムセット®配合錠、ワントラム®錠)
トラマドールは、オピオイドと呼ばれる鎮痛薬の仲間です。NSAIDsのような解熱作用や抗炎症作用はありません。痛みに対してNSAIDsやアセトアミノフェン製剤では効果不十分な時に使用されることがあります。副作用は、服用を開始して数日間は吐き気や眠気が起こることがあります。また、服用期間を通して便秘が起きやすいです。トラマドール製剤の中には、アセトアミノフェンが一緒に含まれる「トラムセット®配合錠」や1日1回の服用で効果が持続する「ワントラム®錠」といった製剤も販売されています。
出典および参考資料
- 一般社団法人日本リウマチ学会編 関節リウマチ診療ガイドライン2020
- 厚生労働科学研究費補助金 免疫・アレルギー疾患政策研究事業「ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援に関する研究」研究班編 メディカルスタッフのためのライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド
- 川合眞一ら 編 今日の治療薬(2023年版)