アイキャッチ_リウマチ教室

第297回 その兆候を見逃さないで オーラルフレイルとは?

市民病院で20年以上にわたり行ってきたリウマチ教室。新型コロナウイルスの影響により、2020年7月よりWeb版・瓦版(院内での資料配布および掲示)と形態を変え、皆様のリウマチ療養にお役立ていただくべく、引き続き情報を発信しております。

自身の歯の減少や食べることに関する様々な機能の『軽微な衰え』が重複し、「口の機能の低下」の危険性が増加している状態です。それは、噛みにくさ、飲み込みにくさ、食べこぼし、滑舌の低下による発音のしにくさなどの“口の衰え”、つまり、口の機能の健常な状態(いわゆる『健口』)と『口の機能低下』との間にある状態です。

これらが進行すると、全身の健康や生活の質(QOL)に重大な影響を与えます。また、全身のフレイル(病気ではないけれど、年齢とともに、筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい、健康と要介護の間の虚弱な状態)や、筋肉減少(サルコペニア)、低栄養を引き起こすと考えられています。

さらには、身体的(フィジカル)フレイル、社会的(ソーシャル)フレイル、精神・心理/認知的(メンタル/コグニティブ)フレイルに代表される、高齢期に生じる複数の課題が重複していることも少なくありません。早期にその兆候を評価して適切な対策を行うことにより、機能低下を緩やかにし、改善する可能性があります。

 

オーラルフレイル概念図

 

関節リウマチとオーラルフレイル

リウマチは関節の痛みや動きの制限を引き起こし、口腔ケアのしにくさを生じやすくします。これにより、オーラルフレイルが進行しやすくなります。オーラルフレイルが進むと、食事がしにくくなり、栄養状態が悪化する可能性があります。

関節リウマチでは特に、定期的な歯科検診、自身の状態に適した口腔ケア方法やケア物品の選択の説明を受けることが重要となります。歯科医院への通院が難しい場合には、自宅や施設に往診することもできます。

 

オーラルフレイルの評価

5項目(「残存歯数(残っている歯)の減少」、「咀嚼困難感(噛みにくさ)」、「嚥下困難感(飲み込みにくさ)」、「口腔乾燥感(口の渇き)」、「滑舌低下(しゃべりにくさ)」)のうち2つ以上該当した場合をオーラルフレイルとしています。

オーラルフレイルチェックリスト

 

オーラルフレイル予防

定期的な歯科受診
定期的に歯科医師の診察を受け、口腔内の健康状態のチェック、むし歯や歯周病、入れ歯の不具合等の早期発見と早期治療に努めることが重要です。肉や魚に含まれるたんぱく質を摂取するためには、しっかり噛める口にしておくことが必要です。また、お口の異変について相談をしましょう。

口腔ケアの徹底
毎日の歯磨きや入れ歯の管理を行うことで、口臭予防や味覚の改善を期待します。

口腔体操
舌や唇、頬といった口腔や口腔周囲の筋肉を鍛える体操をすることで、食べにくさやしゃべりにくさの改善、唾液分泌増加による口腔乾燥を予防します。

栄養管理
バランスの取れた食事摂取をこころがけましょう。

生活習慣の改善
禁煙や適度な運動、十分な睡眠など、健康的な生活習慣を維持しましょう。ストレス管理も重要です。

 

オーラルフレイル予防

おわりに

オーラルフレイルを早期発見と適切な予防対策を講じることでQOLは向上し、全身の健康維持に寄与することが期待されます。「そういえば最近…」と思ったら、かかりつけ医やかかりつけ歯科に早めに相談してみましょう。

 

参考文献

  • オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント 一般社団法人日本老年医学会、一般社団法人日本老年歯科医学会、一般社団法人日本サルコペニア・フレイル学会

 

お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 リハビリテーション技術科
歯科衛生士 中山 良子

 

※役職は掲載時のものです。変更になっている場合がありますがご了承ください。

 

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