アイキャッチ:胃がんの原因となる「ピロリ菌」とは?

胃がんの原因となる感染症「ピロリ菌」とは?

消化器内科 主任医長 喜多 雅英(きた まさひで)先生に「ピロリ菌と胃がん」について教えていただきました。

消化器内科といいますと、どのような患者さんが受診されるのでしょうか?

消化器内科は内科の中でもいろいろな臓器を幅広く見ている科の一つです。腹痛、胸やけ、貧血、黒っぽい便、食欲不振、貧血、黄疸など様々な症状の方が受診されます。

また、がん検診を希望されて受診する方も多くいらっしゃいます。現在日本では、高齢化社会を迎えており、がんの罹患率・死亡率ともに、年々増加傾向となっていますので関心を持っていただいているのかもしれません。

 

日本人に多いがんとしては、どのようながんがあるのでしょうか?

罹患数で言いますと1位は大腸がん、2位は肺がん、3位に胃がんと続きます。日本人のがんの約半数は消化器のがんですが、早期がんであれば根治的に治すことも可能です。

がんによる死亡率を減少させる方法としては、がんになる危険性のある環境因子を回避するという1次予防と、がん検診によりがんを早期発見、早期治療をするという2次予防、がん発症後(治療後)に社会復帰を目指し、新たながんの発生を予防する3次予防に分けられます。

 

がんの1次予防とお話しがありましたが、がんになる原因にはどのようなものがあるのですか?

がんの原因の要素としては、喫煙や生活習慣、遺伝的要因に加えて、感染症が原因となるものがあることが分かってきました。感染症によるがんは、がん全体のおよそ25%を占めています。ヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸(けい)がんが2~3%、B型肝炎やC型肝炎など肝炎ウイルスによる肝臓がんが10%、最も多いのがピロリ菌による胃がんの15%です。

 

では、ピロリ菌ってどんな菌なんでしょうか?

ピロリ菌は、胃の中に住むことができる細菌です。1983年にオーストラリアの医師により発見されました。後にピロリ菌が胃炎や胃潰瘍の原因となる事が分かり、この医師たちはノーベル賞を受賞しました。

ピロリ菌は幼少期に感染すると言われています。感染して数週間から数ヵ月で100%慢性胃炎を発症します。われわれ日本人の感染率は諸外国に比べ高く、約半数がピロリ菌に感染していると考えられています。

 

ピロリ菌をもっているとすべての方が胃がんになるのですか?

ピロリ菌を持っている方、また以前持っていた方は胃がんのリスクがあると言えます。ですが、この中で胃がんになる方は、ごく一部です。

でもピロリ菌をもともと持っていない方は、ほとんど胃がんになる事はありません。また、ピロリ菌を持っている方でもピロリ菌を除菌することで、胃がんのリスクを3分の1に減らせることがわかっています。

 

実際ピロリ菌を除菌しようと思ったらどのようにしたらいいのでしょうか?

一般的に保険診療でピロリ菌の検査治療を希望される方は、順番としてまず胃カメラを受けて頂く必要があります。これは早期の胃がんはほとんど無症状ですので、除菌前に胃がんがないことを確認する必要があるからです。

胃カメラというと、やはりしんどい印象が強く受けたくないという方が多いかもしれませんが、最近では細くて柔らかく鼻からでも口からでも検査することのできる経鼻内視鏡や、適切に鎮静剤を使用することにより検査のしんどさの軽減を図ることが可能になってきています。

 

ポイント

胃がんの早期発見・早期治療のために、がん検診やピロリ菌検査を活用しましょう!

 

※役職は掲載時のものです。変更になっている場合がありますがご了承ください。