アイキャッチ_リウマチ教室

第272回 関節リウマチ前足部変形に対する手術について

前足部の関節リウマチ4つのポイント

1.関節リウマチによる前足部変形とは

関節リウマチによる前足部変形には、①外反母趾および内反小趾、②開帳足(足の指が横に広がってしまう状態)、③中足趾節(MTP) 関節の背側脱臼などがあります(図1)。いずれも滑膜組織が豊富なMTP関節における炎症が主因であるため、抗リウマチ薬による病勢のコントロールが重要です。
また疼痛や変形は履物と深く関わっており、中足骨パッド付き足底挿板や柔らかい幅広の靴を使用することも大切です。

関節リウマチによる前足部変形の事例写真

図1 外反母趾、内反小趾、足底胼胝、MTP関節の背側脱臼を認める

 

2.関節リウマチの前足部変形に対する手術の有用性

関節リウマチ診療ガイドライン2020によると、関節リウマチの前足部変形による機能障害に対する手術は機能改善に優れていると推奨されています。

 

3.前足部変形に対する手術の術式選択

関節リウマチの前足部変形に対しては従来行われていた切除関節形成術に替わり、軽度から中等度の疾患活動性の患者さんに対して関節温存手術の適応が広がってきており、良好な治療成績が報告されています。一方で、重度の外反母趾があり関節破壊の重度な高齢者では関節温存をしない手術も選択されます。関節破壊の程度や年齢、罹病期間に応じて適切な術式を選択することで関節温存と非温存術ともに良好な治療成績が報告されています。

前足部変形の関節温存手術イメージ

図2 関節温存手術(母趾と第2-5趾の中足骨骨切り術)

①関節温存手術
現在、関節リウマチの前足部変形に対しては中足骨骨切り術により関節温存する手術が第一選択となってきています(図2)。ただし、関節リウマチの病勢コントロールが良好であることが安定した術後成績を得るための前提であるので、引き続いての薬剤治療の徹底は必須です。

②母趾MTP関節固定術
重度の外反母趾に対しては母趾MTP関節固定術を行っており、第2-5趾に対しては関節破壊の程度や各々の患者さんの状況により手術方法を選択します。ただし、関節固定術は隣接関節の関節症性変化や隣接関節部分の胼胝形成などの合併症のリスクがあり、注意深い経過観察が必要です。

 

4.関節温存術の利点と注意点

関節非温存手術では母趾が動かなくなる(関節固定術)や踏み返しができなくなる(切除関節形成術)などの欠点がありますが、本術式ではMTP関節を温存できるため、正常に近い足の機能(可動域や踏み返しなど)を残すことができます。術後は関節の拘縮を予防するために、早期から足趾の関節可動域訓練を開始します。一方で、外反母趾の再発のリスクがあるため注意深い経過観察が必要です。

 

おわりに

これまで関節リウマチの前足部変形に対して関節切除や関節固定術が行われてきましたが、今では関節温存術が主流となりつつあります。
当院では、リウマチ内科と整形外科が一体となり、足部の変形に対して適切な治療を提案できるように頑張りたいと思います。

 

参考文献

一般社団法人日本リウマチ学会:関節リウマチ診療ガイドライン2020. 診断と治療社2021.
Nishida K, Machida T, Horita M, et al. Shortening Oblique Osteotomy with Screw Fixation for Correction of the Lesser Metatarsophalangeal Joints of Rheumatoid Forefoot. Acta Med Okayama. 2016, 70(6):477-483.
Horita M, Nishida K, Hashizume K, et al. Outcomes of Resection and Joint-Preserving Arthroplasty for Forefoot Deformities for Rheumatoid Arthritis. Foot Ankle Int. 2018, 39(3):292-299.
Horita M, Nishida K, Hashizume K, et al. Subjective and Objective Outcomes of Surgery for Rheumatoid Forefoot Deformities Under the Current Treatment Paradigm. J. Foot Ankle Surg. 2022, 61(1):53-59.

 

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