アイキャッチ_リウマチ教室

第324回 JAK阻害薬(ヤヌスキナーゼ阻害薬)について

はじめに

JAK阻害薬(ヤヌスキナーゼ阻害薬)は、関節リウマチの炎症を引き起こす体内のシグナル伝達を内側からブロックする、飲み薬タイプの治療薬です。日本ではトファシチニブ、バリシチニブ、ウパダシチニブ、ペフィシチニブなどが使用されています。

 

どんな薬か

関節リウマチの炎症の原因となる複数の炎症性物質(サイトカイン)の産生を、細胞内のJAKという酵素を阻害することで抑えます。JAKにはJAK1, JAK2, JAK3, TKY2の4種類あり、どれが選択されるかで薬剤の特徴が少しずつ異なります。

注射や点滴の生物学的製剤とは異なり、錠剤として毎日服用できる手軽さがあります。

 

期待できる効果

関節の痛みやこわばり、腫れを改善します。効果の発現は他の抗リウマチ薬と比べて比較的早い(数日〜1ヶ月以内)とされています。

メトトレキサートなどの飲み薬が効果不十分な場合に追加したり、もしくは生物学的製剤を使用しているが、効果が不十分な場合に切り替えて使用したりします。

関節の破壊(骨や軟骨のダメージ)の進行を抑える効果も確認されています。

各薬剤の特徴(※薬価は2026年10月時点)

一般名 トファシチニブ バリシチニブ ペフィシチニブ ウパダシチニブ フィルゴチニブ
商品名 ゼルヤンツ オルミエント スマイラフ リンヴォック ジセレカ
JAK
選択性
JAK1, 3 JAK1, 2 JAK1, 2, 3, Tyk2 JAK1, 2 JAK1
薬物
代謝経路
70%が肝代謝、
30%が腎代謝
腎代謝 肝代謝 肝代謝 腎代謝
用量調節 中等度肝障害
eGFR<60
30≦eGFR<60で減量
eGFR<30は投与不可
中等度肝障害 重度肝障害 15≦eGFR<60で減量
eGFR<15は投与不可
通常
投与量
10mg/日 4mg /日 150mg/日 15mg/日 200mg /日
減量
投与量
5mg /日 2mg /日 100mg/日 7.5mg/日 100mg /日
薬価 2260円/5mg 4820/4mg錠
2472円/2mg錠
1201円/150mg錠
2326円/100mg錠
4325円/15mg錠
2205円/7.5mg錠
4089円/200mg錠
2109円/100mg錠

 

知っておくべき副作用

JAK阻害薬には、服用中に注意すべき副作用があります。

●感染症のリスク

関節リウマチを引き起こす異常な免疫反応を抑えると同時に、感染症に対する正常な免疫の働きも抑えるため、他の抗リウマチ薬と同様に、細菌・ウイルス感染症のリスクが上がります。感染症を疑う症状(発熱、長引く咳、息切れ、倦怠感)が出現したときは早めに病院に連絡するようにしましょう。

また、JAK阻害薬で特徴的なリスクとして、帯状疱疹(ヘルペス)の再活性化が知られています。帯状の水疱や痛みの症状、それに伴う頭痛や発熱が出た場合もすぐに医療機関へ連絡してください。

イラスト:帯状疱疹

※感染症リスクを減らす方法として、インフルエンザ、コロナ、肺炎球菌ワクチン接種があります。
※帯状疱疹は体の神経の中に潜んだウイルスが、加齢、ストレス、薬剤などの影響で免疫力が下がると再活性化し発症します。一度罹患したら免疫がつく感染症ではなく、繰り返すこともあります。予防の手段として、不活性化ワクチン(シングリックス, 2回接種)を接種することで、接種後1年時点で9割以上、5年時点で約9割、10年時点で約7割の予防効果が期待できます。65歳以上の方は5歳刻みで公費補助の対象になります。

●血栓症(血の塊)のリスク

足の静脈血栓や肺塞栓症のリスクが高まる可能性があります。片足のむくみや痛み、突然の息切れや胸の痛みがあれば直ちに受診してください。

●心血管イベントのリスク

心臓発作や脳卒中などのリスクがわずかに増える可能性が報告されています。
特に50歳以上で心血管の危険因子(喫煙歴、糖尿病、高血圧、肥満など)がある方はリスクが高くなります。

イラスト:心血管イベントのリスク

●がんのリスク

ORAL Surveillance臨床試験において、トファシチニブ(ゼルヤンツ)の使用時に、1年半以上の長期使用時に悪性腫瘍発生率が増える可能性が示唆されました。他のJAK阻害薬では明らかに悪性腫瘍リスク増加したという臨床試験結果はありません。

●血液検査値の変化

貧血、肝機能障害、白血球減少、コレステロール値の上昇などが起こることがあるため、定期的な血液検査が必要です。

イラスト:血液検査血の変化

おわりに

関節リウマチの患者さんそれぞれに合った治療薬を探し、寛解を一緒に目指しましょう。

岡山市立市民病院 膠原病・リウマチ内科 上里 祐賀

 

参考文献

 

お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 膠原病・リウマチ内科 上里 祐賀

 

市民病院で20年以上にわたり行ってきたリウマチ教室。新型コロナウイルスの影響により、2020年7月よりWeb版・瓦版(院内での資料配布および掲示)と形態を変え、皆様のリウマチ療養にお役立ていただくべく、引き続き情報を発信しております。

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