はじめに
関節リウマチの患者さんは、治療を始める前に結核に感染しているかどうかを調べます。関わりがなさそうに思われるかもしれませんが、現在症状がなく感染している自覚がなくても、万が一体の中に結核菌がいた場合、関節リウマチの治療中に結核を発病する危険性があるためです。今回は関節リウマチと結核の関係性についてお話します。
1.結核とは
結核は、結核菌によって引き起こされる感染症のことです。日本では毎年10,000人以上の患者さんが発生し、1,400人以上が死亡しています。2類感染症に指定され、発病した場合は直ちに保健所に届出をしなければなりません。新登録結核患者は高齢者に多く、およそ6割が60歳以上です。
日本では、約8割で肺に結核の病変があります。肺結核の症状は、初期は無症状のことが多いですが、微熱、咳、喀痰、倦怠感など風邪に似た症状がみられます。病状が進行すると呼吸困難や喀血などがみられます。残りは肺外結核といって、リンパの流れに沿って肺以外の臓器に病巣をつくります。関節リウマチの患者さんでは肺外結核が多いと言われています。

2.結核菌の感染から発病まで
空気中に漂っている結核菌を吸い込んで感染が成立すると、体内では免疫が活性化することで、肉芽腫を作り結核菌を包み込んでしまいます。閉じ込められた結核菌は休眠状態となるため、症状がでることはありません。その後、何かのきっかけで結核菌が目覚めると症状がでてきます。
感染から半年後に発病する人もいれば、一生発病しない人もいます。多くは免疫力の低下をきっかけに発病します。

3.TNF-α(腫瘍壊死因子)と生物学的製剤
TNF-αは炎症性サイトカインと呼ばれ、炎症反応を促進させます。免疫に関わりがあり、身体の中に入ってきた細菌やウイルスなどの異物を排除する役割があります。正常に免疫が機能していれば身体を守る味方ですが、関節リウマチの患者さんはTNF-αや、同じく炎症性サイトカインのIL-6が過剰産生されてしまい、その結果関節が炎症を起こして痛みの原因になります。
炎症を取り除くために、生物学的製剤というお薬を使うことがあります。関節リウマチの全ての患者さんが使用しているわけではありませんが、治療してもなかなか痛みが取れない時や、治まっていた痛みが再発したとき、妊娠・授乳中などに使われ、高い治療効果が期待できます。生物学的製剤の中にはTNF-αを標的としたものがあり、TNF-αに直接結合して働きを抑えます。
TNF-αの働きが抑えられることによって炎症が治まり、関節リウマチの症状は改善されますがTNF-αの働きによって休眠状態になっていた結核菌は目覚めてしまう可能性があります。そこで関節リウマチの患者さんは、生物学的製剤など免疫を抑える治療を始める前に結核に感染しているかどうかを検査し、感染している場合は治療する必要があります。
4.結核の検査方法
①喀痰検査
痰の中に結核菌が含まれているかどうかを調べます。
顕微鏡で直接菌を観察する塗抹検査、結核菌の遺伝子を増やして存在を確かめるPCR検査などがあります。喀痰を培養することで結核菌が発育し、どのお薬が効くのかを調べることができます。
結核菌はゆっくり発育するので、培養検査の結果がでるまで時間がかかります。
②画像検査
まずは胸部レントゲン検査を行います。レントゲン検査で肺に影がある場合には、CT検査で詳しく調べます。
③血液検査
クオンティフェロン(QFT)検査やT-SPOT検査が代表的で、採血をして調べます。いずれも感染したことがあるかどうかを判定するので、発病しているかどうかは他の検査で判断します。
5.結核の治療
結核に感染していることが分かった場合、発病していなくても関節リウマチの治療と並行して結核の治療も行わなければなりません。関節リウマチの治療がきっかけで、結核を発病する恐れがあるためです。
肺結核も肺外結核も治療法はほとんど変わりません。6ヶ月間にわたり、抗結核薬を服用します。結核性髄膜炎などの重篤な感染症では最低9ヶ月は治療が必要です。
結核菌を排菌している場合は、他の人に感染させる恐れがあるため保健所の指示で入院措置がとられることがあります。
おわりに
関節リウマチの患者さんは、治療のために様々な薬を使います。薬によって引き起こされる副作用や合併症は様々です。日々の体調管理に気を配り、発熱や咳、倦怠感など気になる症状が続く場合は早めに主治医に相談してください。
岡山市立市民病院 臨床検査技術科 森、小川
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岡山市立市民病院 臨床検査技術科 森、小川
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