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第305回 帯状疱疹ワクチンについて

日本人を含む東アジア人では、帯状疱疹にかかるリスクが高いことが知られており、日本人の3人に1人が80歳までに帯状疱疹を発症することが知られています。

関節リウマチや膠原病では副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤など免疫力を低下させる薬剤を使用することがあります。これらの薬剤の中には、帯状疱疹の発症を増加させるものがあります。帯状疱疹ワクチンはこれまで任意接種でしたが、2025年4月から予防接種法に基づく定期接種の対象となりました。

これを受けて、岡山市では、帯状疱疹発症のリスクが高い方に対して接種費用助成が開始されました。帯状疱疹ワクチンについては過去に当教室で帯状疱疹ワクチンを取り上げたことがありますが、非常に大切な内容ですので、再度この機会に取り上げたいと思います。

 

水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster virus)

水痘(Varicella)は、一般に「水ぼうそう」として知られている全身に丘疹、水疱をともなう発疹をおこす感染症で、通常9歳以下で発症します。皮疹以外には発熱、倦怠感、くしゃみや咳がみられます。

水痘は水痘・帯状疱疹ウイルスに初めてかかった時にみられる症状ですが、感染力が非常に強く、飛沫感染、空気感染をおこします。水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫力がないと病棟で同じフロアにいるだけで発症する可能性があります。

帯状疱疹(Zoster)は、ウイルスに対する免疫力が低下したときに知覚神経に潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化したもので、再活性化した知覚神経に沿って帯状に小水疱を来たし、しばしばかゆみと痛みを伴います。帯状疱疹には有効な抗ウイルス薬があり、1-2週間で皮疹は軽快します。

しかし、皮疹がよくなった後も、皮疹があった部分に一致してかゆみや痛みが残ることがあり、これを帯状疱疹後神経痛といいます。帯状疱疹によって引き起こされる痛みは非常に強く、時に不眠を引き起こすなど日常生活に支障をきたすこともしばしばあります。

日本人の3分の1は80歳までに帯状疱疹にかかります。

従来、帯状疱疹は保育園、幼稚園従事者や30-39歳の子育て世代に少ないことが知られていましたが、水痘にかかった小児に接する機会が多いためと推定されています。2014年に乳幼児に対する水痘ワクチン接種が定期接種となり、小児を中心とした水痘患者が大幅に減少しており、逆に帯状疱疹はしばらくの間増加すると考えられています。

 

帯状疱疹の発症リスク因子

図1は帯状疱疹発症リスク因子をまとめたものです。50歳以上になると帯状疱疹の発症は10倍に増えます。またステロイドや免疫抑制剤の使用、免疫抑制状態は帯状疱疹発症の危険性を高くすることが知られています。

 

図1:帯状疱疹発症のRisk factor

帯状疱疹ワクチン

帯状疱疹ワクチンには生ワクチンと遺伝子組換えサブユニットワクチンの2種類があります。

生ワクチンは50歳以上の方を対象として単回投与です。遺伝子組換えサブユニットワクチンは現在国内でシングリックス🄬が発売されており2回投与が必要で、50歳以上では2-6か月の間隔を空けて投与、帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の方では投与間隔を1か月まで短縮することができます。

健常な方を対象にした臨床試験の結果では、生ワクチンで51.3%、サブユニット97.2%の帯状疱疹発生抑制効果が確認されています。生ワクチンでは70歳以上では効果が減弱し、サブユニットワクチンでは年齢による効果の減弱は確認されていません(表1)。

表1:帯状疱疹ワクチンの臨床試験

生ワクチンでは「明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する者及び免疫抑制をきたす治療を受けている者」への投与は禁忌です。サブユニットワクチンは2020年1月から国内で使用できるようになっており、免疫を抑える薬剤を服用しているリウマチを含む膠原病の患者さんには、サブユニットワクチンをお勧めします。

膠原病の患者さんにおけるサブユニットワクチンの帯状疱疹発生抑制効果は90.5%で、70歳を超えると若干効果が減弱します。副反応としてはアレルギーの他に、膠原病の悪化に注意する必要があります。サブユニットワクチンには免疫活性化物質が含まれているためです。

膠原病の方を対象にした臨床試験では、4.4%の方で病気の悪化や新規の免疫疾患発症が報告されています。理論上、ワクチン接種が膠原病を悪化させる可能性がありますので、病気が十分にコントロールされた状態でワクチン接種を受けるようにしてください。

 

接種費用と助成制度(2025年4月現在)

帯状疱疹は、個人予防に重点を置いた努力義務のないB類疾病のため、原則としてワクチン費用は全額自己負担です。費用は、医療機関毎であらかじめ設定されていますので、接種を希望される場合は各医療機関にお問い合わせください。
表2は、2025年4月現在での当院での接種費用になります。

 

画像:表2:帯状疱疹ワクチンの当院での費用と岡山市民助成対象(2025年4月)

市町村単位で費用の助成を行う自治体があります。助成制度の有無についてはお住いの市町村のホームページなどを参照ください。また既存の助成制度は今後変わる可能性があります。

また表2に2025年4月現在の岡山市民の助成対象者を記載しています。詳しくは、岡山市のホームページでご確認ください。

岡山市立市民病院 リウマチセンター長 若林 宏

参考文献

    • 渡辺大輔. ウイルス2018; 68 21-30.
    • Weinberg JM. J Am Acad Dermatol. 2007; 57: S130-5.
    • Oxman MN, et al. N Engl J Med. 2005; 352: 2271-84.
    • Lal H, et al. N Engl J Med. 2015; 372: 2087-96.
    • Dagnew AF, et al. Rheumatology 2020; 0: 1-8.

 

お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 リウマチセンター長 若林 宏

 

市民病院で20年以上にわたり行ってきたリウマチ教室。新型コロナウイルスの影響により、2020年7月よりWeb版・瓦版(院内での資料配布および掲示)と形態を変え、皆様のリウマチ療養にお役立ていただくべく、引き続き情報を発信しております。

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