脳神経外科 医長 髙杉 祐二先生に「水頭症」について教えていただきました。
水頭症とは、どのような病気なのでしょうか?
水頭症は、文字通り頭に水がたまる病気と考えられています。
頭に水がたまると、特徴的な3つの症状が現れます。うまく歩けない「歩行障害」、ぼーっとして口数が少なくなる「認知症」、排尿に失敗する「尿失禁」の3症状です。
水頭症になりやすい人には、どのような特徴があるのでしょうか?
水頭症の中には、「脳出血」や「くも膜下出血」になったことがある方が徐々に症状が現れて気づく場合もありますが、原因不明の特発性正常圧水頭症という病気もあります。
特発性正常圧水頭症は、70歳以上の年配の方に発症しやすいことがわかっています。そのため、老化現象と思い込み、治療の機会を失っている可能性があります。
水頭症の診断と治療はどのように進めていくのでしょうか?
診断には、頭部のCT検査やMRI検査を行い、頭に水がたまっていることを確認します。水頭症が疑わしい場合には、髄液排出試験(タップテスト)と呼ばれる検査を受けていただきます。
この検査で症状の改善が見られた場合には、手術治療を検討します。
タップテストとは、実際にはどのようなことをするのでしょうか?
頭にたまっている脳脊髄液を一時的に抜くことで、症状がどの程度改善するかを確認します。
病室のベッドで横向きに寝ていただき、麻酔注射後、腰骨の奥まで長い針を刺して十分な量の脳脊髄液を排出します。15分程度で終了します。
タップテストの入院期間はどのくらいなのでしょうか?
1週間程度の入院で行います。タップテストの前後で、歩行能力、認知機能のテストを行い、点数がどのように変化するかを検査します。
タップテストで症状が改善しても、効果は一時的なものです。数日間で脳脊髄液が頭にたまってくると、水頭症の症状が現れてきます。
水頭症の手術治療にはどのような方法があるのでしょうか?
タップテストで症状の改善が見られた場合、腰の部分とおなかの腹腔とをチューブでつなぐ方法と、頭と腹腔とをチューブでつなぐ方法があり、患者さんの状態に応じて手術方法を選択します。
手術の目的は、継続して脳脊髄液を頭から抜くことにあります。抜いた脳脊髄液は、ほとんどの場合はおなかの中にある腹腔という空間に排出し続けるようにします。
手術時間はどのくらいなのでしょうか?
手術は全身麻酔で眠っている間に行い、手術時間は2時間程度です。手術で通路をつくることで、継続して症状が改善した良い状態を維持することが可能です。
手術を受けた患者さんはすぐに良くなるのでしょうか?
手術では脳脊髄液の流れる通路をつくる処置を行いますが、直後に完治するものではありません。水頭症は術後も長期的に外来で診察し、症状に応じて脳脊髄液の排出量の調整をすることで、徐々に症状が改善する病気です。もっともよい状態になるには1年程度かかるといわれています。
手術を終えた患者さんが生活の上で不自由になることはあるのでしょうか?
基本的には術前の生活と同じ生活を送ることができます。よく「MRI検査は受けても大丈夫でしょうか?」と質問されることがありますが、MRI撮影の前後で体の外からチェックをすることで、脳脊髄液の流れは維持できますし、撮影も問題なく実施できます。
水頭症は手術で症状が改善できる病気なのですね。
症状の改善には、適切な診断と確実な治療、親身で長期的な診察が重要です。もしも諦めかけている方がおられましたら、一度水頭症外来の受診をお勧めします。
ポイント
「高齢だから仕方ない」「年のせいだから治らない」と諦めている患者さんの中には、“治療できる症状” の方が含まれていると考えられます。適切な治療でご本人らしい生活を取り戻すことができる可能性があります。
市民病院でも「水頭症外来」を設けていますので、気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。
※「水頭症外来」の日時は、外来診療担当表をご確認ください。
市民病院HP 外来診療担当表
※役職は掲載時のものです。変更になっている場合がありますがご了承ください。