市民病院で20年以上にわたり行ってきたリウマチ教室。新型コロナウイルスの影響により、2020年7月よりWeb版・瓦版(院内での資料配布および掲示)と形態を変え、皆様のリウマチ療養にお役立ていただくべく、引き続き情報を発信しております。
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第295回リウマチ教室 糖尿病におけるフットケアは予防ケア
解説:岡山市立市民病院 看護師 高橋 恵
先日、ある元野球選手が糖尿病による「重症下肢虚血(じゅうしょうかしきょけつ)」状態で、右腕の切断手術を公表していました。「重症下肢虚血」とは、細い血管が動脈硬化などにより血行障害を起こし、潰瘍や壊死をおこす状態をいいます。体の一部を失うことは大変つらいことですが、潰瘍や壊死をおこすと皮膚のバリアがなくなるために感染しやすくなり、細菌が体内に入ると生命の危機にもなりえるため、苦渋の決断であったと思います。
一般的にフットケアというと「足を清潔にしてきれいにすること」と想像されるかもしれませんが、看護におけるフットケアの目的は「足に異変を起こさないように予防すること」にあります。足には身体を支えたり、移動したりする大きな役割があります。その足に異常があると痛みを生じるだけでなく、日常生活にも支障をきたすことになります。どのような病気でも早期発見、早期治療が重要なように、傷がない足はもちろんのこと、自覚症状がない足にも注目して予防ケアをすることが大切です。
1.糖尿病の足に何が起きるか知ろう
糖尿病になり、血糖値の高い状態(HbA1c7.0㎎/dl以上)が続くと「神経障害」を起こし、足の感覚が鈍くなります。また動脈硬化により「血流障害」を起こし、足の端まで血液が流れにくくなります。
「神経障害」や「血流障害」がある足に、靴ずれや胼胝(たこ)や鶏眼(うおのめ)、水虫、外傷や熱傷など、傷ができる原因が加わると潰瘍を作ってしまいます。
糖尿病で足を切断する患者の80~85%は、足潰瘍が先行しています。傷ができる原因を予防すること、万が一、傷ができても早期発見し、悪化させないことが重要になります。
2.健康な足を守るためにはじめよう
ポイント① きちんと足を洗って保湿することがケアの基本です
入浴やシャワー浴をする時は足の指の間まで丁寧に洗うようにしましょう。
足を洗いながら、足に異変がないか観察しましょう。洗った後には、保湿剤で保湿をしましょう。
皮膚は乾燥すると弱くなり傷ができやすくなります。毎日の保湿で皮膚を守りましょう。
ポイント② 毎日足を触って、足の状態を観察しましょう
当てはまるところはないか、爪、皮膚、足全体を観察します。
携帯などで写真にとって記録に残すこともおすすめです。
【チェックポイント】
- 巻き爪、濁った分厚い爪などはないか
- 足の指の間の皮がむけたり湿ったりしていないか
- 靴ずれがないか
- やけどやひっかき傷、水ぶくれはないか
- 「たこ」や「うおのめ」ができていないか
- 皮膚がカサカサしていないか
- 皮膚の色はどうか、紫になっていないか
- 足が冷たくないか、左右に温度差がないか
- むくんだり、はれたりしていないか
- 痛みやしびれ、感覚のない部分はないか
ポイント③ 傷ができる原因から足を守りましょう
◆乾燥を防ぎ、ケガから足を守るために靴下を履きましょう
靴下は、通気性がよく、縫い目のないもの、しめつけないもの、出血などの汚れで足の傷に気が付くように薄い色のものを選びましょう。
◆靴ずれ、「たこ」や「うおのめ」の原因を防ぐために足にあった靴を選びましょう
靴は足にフィットし、つま先のとがっていないもの、靴底にクッションのあるもの、ひもやマジックテープのついた運動靴を選びましょう。
スリッポンなどのサンダルはくつの中で足がすれて靴ずれの原因となるのでさけましょう。安全靴や長靴などの作業靴は形状上、足を傷つけやすいので注意しましょう。
◆靴の履き方に気をつけましょう
まず、靴の中に異物が入っていないか確認しましょう。靴ひもやマジックテープをほどいてから足を入れ、かかとを合わせてから靴ひもやマジックテープをしめるようにしましょう。
参考文献
- 水野美華,肥後直子:糖尿病ケア2019秋季増刊糖尿病フットケアまるわかりガイド.メディカ出版.2019
- 持田ヘルスケア株式会社:パンフレット「長く元気に過ごすための毎日のフットケア」
お話をお伺いしたのは・・・
岡山市立市民病院 看護師 高橋 恵
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