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第276回 バイオ医薬品とバイオシミラー

第276回リウマチ教室 バイオ医薬品とバイオシミラー
解説:岡山市立市民病院 薬剤部 竹下 和輝

バイオ医薬品とは?

バイオ医薬品(生物学的製剤)は細胞や微生物の力を利用してつくられるタンパク質を有効成分とする薬です。製薬会社が医薬品を製造する際、通常は薬品を化学反応させてつくりますが、タンパク質は複雑な構造をしているため、薬品を化学反応させてつくることは困難です。

そこで、生物がもつ力を利用して病気の治療に効果的なタンパク質をつくり、薬にしたものがバイオ医薬品です。がんや自己免疫疾患など難治性疾患への治療効果も期待されています。

画像:医師と患者

2022年10月現在、日本で関節リウマチに使用できるバイオ医薬品は8品目あります。

関節リウマチでは、関節を包んでいる滑膜などから炎症性サイトカインと呼ばれる炎症を起こす物質がつくられます。この炎症性サイトカインは、生体内のさまざまな炎症反応を引き起こすだけでなく、骨を壊す細胞や軟骨を壊す酵素などを活性化し、症状を悪化させてしまいます。

関節リウマチに使用されるバイオ医薬品の多くは、この炎症性サイトカインに直接作用することで効果を発揮します。バイオ医薬品には、関節リウマチに使用される医薬品以外にも抗がん剤やインスリン(糖尿病の治療薬)、腎性貧血の治療薬など様々な種類があります。

 

バイオシミラーとは?

新しく開発された医薬品には特許があります。バイオシミラーは、別名「バイオ後続品」や「後発バイオ医薬品」と呼ばれ、国内で先行発売されているバイオ医薬品(先行バイオ医薬品)の特許期間が切れた後、別の製薬会社で開発された同等の医薬品のことをいいます。

バイオシミラーの有効成分の構造は、先行バイオ医薬品とは全く同じではありませんが、臨床試験を含む多くのデータによって有効性・安全性に差異はないとされています。
ただし自己注射を行う場合、デバイスなどの違いにより使用感は異なる可能性があります。

バイオ医薬品は遺伝子組み換え技術を用い 、厳密な品質管理の中で細胞を培養 ・ 精製して製造されています 。 そのため、一般的な医薬品に比べて高額になりますが、先行バイオ医薬品に比べるとバイオシミラーの方が安価になります 。バイオシミラーの値段は、原則として先行バイオ医薬品の約70%になります。

表:日本で関節リウマチに保険適応があるバイオシミラー(2022年10月時点)

 

バイオシミラー=ジェネリック医薬品なの?

医薬品の特許が切れた後に発売される薬として「 ジェネリック医薬品 後発医薬品 )」 が知られています。バイオシミラーも同様の位置づけですが 、 ジェネリック医薬品と区別して扱われています 。

ジェネリック医薬品は、薬品を化学反応させてつくる薬で、特許が切れた薬(先発品)と全く同じ有効成分を同じ量含んでいます 。

一方、バイオシミラーは、複雑なタンパク質を有効成分とするため、特許が切れた薬と全く同じものをつくることが困難です 。そこでバイオシミラーは、構造にわずかな違いがあっても有効性や安全性は同等であることを確かめるようにしています。そのためには、非常に多くの試験を行う必要があることから、このような違いを踏まえた制度で取り扱われています 。

図:バイオシミラー相関図

 

さいごに

日本で使用できるバイオシミラーの品目数は現時点では限られていますが 、 患者さんの経済的な負担軽減と国全体の医療費削減という点で大きな意義があります 。 治療薬について気になることがありましたら 、 医師または薬剤師にご相談ください 。

 

参考文献・Webサイト

1.厚生労働省 バイオ医薬品とバイオシミラーを正しく理解していただくために 厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000132762_00005.html(参照2022-09-16)
2.公益財団法人日本リウマチ財団,”バイオシミラーとジェネリック医薬品”.リウマチ情報センター. 2019-03.
https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm400/rm400_chiryo_bio_10.html(参照2022-09-16)

 

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